【第一回】ダルビッシュ有のプロ野球改革論「いつか、日本球界に戻りたいなって思っています」

日本球界が生んだ最高の投手、ダルビッシュ有。メジャーリーガーとして圧巻のパフォーマンスを披露する傍ら、SNSを活用してしばしば球界に対する問題提起も行ってきた。今回、トークゲストに前DeNA球団社長の池田純氏を迎え、数少ない“主張するアスリート”への独占インタビューが実現。彼があえてメディアを通じて発したかったオピニオンとはーー。日本球界への熱い思いが伝わるプロ野球改革論、必見のインタビューだ。

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【第二回】ダルビッシュ有のプロ野球改革論「日本から2チームくらいMLBに入れて戦ったら面白い」

日本球界が生んだ最高の投手、ダルビッシュ有。メジャーリーガーとして圧巻のパフォーマンスを披露する傍ら、SNSを活用してしばしば球界に対する問題提起も行ってきた。今回、トークゲストに前DeNA球団社長の池田純氏を迎え、数少ない“主張するアスリート”への独占インタビューが実現。3月に開催されたWBCについて、MLBでの位置づけや改善のための持論を語ってくれた。彼があえてメディアを通じて発したかったオピニオンとはーー。

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【第三回】ダルビッシュ有のプロ野球改革論「メジャーの中でもトップのピッチャーになりたい」

日本球界の至宝にして“主張するアスリート”であるダルビッシュ有の独占インタビューもいよいよ後半戦。今回のテーマは“質”。プロ野球の評価の質やTwitterでのファンの質についての思いを語った。さらには、日本球界のためにイチローのすごさを伝えたいという思いもこぼれる。

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インタビュー=岩本義弘、トークゲスト=池田純、写真=早瀬将大

日米のアスリート教育の違いを痛感

©Getty Images

ダルビッシュ アメリカの選手たちって、しっかり教育を受けているじゃないですか。野球ができなくなっても、ビジネスでもやっていけちゃう人が多いと思うんですよ。日本人のプロ野球選手って、野球を取ったら何も残らないっていう人が本当に大多数。そういう教育の面でもちょっと違うのかなって感じています。

岩本 国の問題ですよね。

ダルビッシュ そうですね。

池田 大学生からプロになれる人なんて、ほんの数パーセント。僕は明治大学でスポーツアドミニストレータを務めることになったんですが、ダメだった時にちゃんとビジネスの世界でいけるような教育に変わらなくてはいけないと思っています。

ダルビッシュ それをしないとたぶん変わらないですね。今、どれだけすごい選手が育ってきてくれても、物事を多角的に見てこの問題をどうやって解決するかとか、どうやって成長させていくかとかを考えられる選手がいないと、僕がいくら教育したところでそっちには行ってくれないんですよ。こっちだと、そういう人たちに教えたら、ちゃんと考えてこの業界をもっと変えようと思ってくれる選手が多いと思うんですね。言われたように教育がどんどん変われば、また違ってくるんでしょうかね。

池田 メジャーの人は選手でダメになったら、大学に戻るお金をMLBが全額出してくれるじゃないですか。ああいうのがNPBにはない。NPBはわかっているはずなんですけどね。

岩本 勉強が必要だとすら思ってない人も多いですよね。

池田 高校の時に机を捨てちゃうしね、みんな。

ダルビッシュ アメリカ人って引退したら、もう一度大学に通おうと思ったりしますが、日本人ってやっぱり「大学はいいや」って思うんですかね?

池田 みんな、うどん屋か焼肉屋になっちゃいますよね。

ダルビッシュ ですよね(笑)。うどん屋とか、ラーメン屋とか、焼肉屋とかになっちゃいますよね。それって戻りたいって思わないから、そっちに行っちゃうということですよね。

引退後はGM? それとも球団オーナー?

©早瀬将大

池田 プロアスリートとしての未来が閉ざされたときに、戻りたいって思える本質的な勉強をできる、教えるところがない。大学は4年間を過ごして出ることによって箔がつくだけとしか今は思われていないようなことも多い。こっちの大学はちゃんと教えてくれるし、そこで学んだことで次のステップが用意されているようになっています。そういうカリキュラムがないんですよ。栄養学とか、スポーツビジネス学とかもちゃんとしたものがないですしね。

ダルビッシュ 自分もちょうど1週間くらい前から、引退したら大学に行きたいなって思うようになって、アメリカで行くのか日本で行くのかって、ちょっと考えていたんです。アメリカで行くなら大学に入るための英語を勉強しないといけないんですけど、そういうのも面白い。

池田 何を学びたいかですよね。

ダルビッシュ 自分は経営とか学びたいですね。

岩本 絶対に向いていると思います。

ダルビッシュ それを学んだらGMとかなれますか? 僕にちゃんと能力があると仮定すると、経営学さえ学んでいれば、GMになれる可能性はあるということですか? GMになるには、何が必要なんでしょうか? 何を学べばいいんですか?

池田 GMになるにもまずはマネージメント論ですよ。スーパースターの選手だったからといって、突然コーチや監督になってもマネージメントができるわけじゃない。名選手イコール、名監督、名コーチなわけではない。どうやったら選手のモチベーションが上がるかってわかっていなくて頭ごなしに怒る日本古来の文化も多いじゃないですか、「オマエら元気がない」って。「元気がない」って言われても、元気が出るわけじゃない。今の子たちは昔に比べると圧倒的に弱いから逆を言う。「オマエらいいじゃねえか、まだまだ3位じゃねえか」って言うと、「そうっすよね!」ってなります。そのあたりのコミュニケーション論とマネージメント論って、日本の野球だけでなく、スポーツ全体としてまだまだすごく弱いんと思うんですよ。

岩本 過去にマネージメントがうまかった人がいても、偶然その人のパーソナリティでうまかっただけで、それがロジカルになってないから、それ以外の人に引き継げるものがないんですよね。日本の場合は、本当に人の能力に頼っちゃっている部分がありますよね。

池田 再現可能なメソッドがないですよね。GMって何なのって言うと、全体の戦力のバランスを整える人じゃないですか。孫子の兵法とかもそうですけど、戦い方って戦略と戦術って学問でもちゃんとあります。そういうのをわかっている人がやってほしいなって思います。「やばい、中継ぎが足りない、だから中継ぎを取ろう」みたいな話じゃなくて(笑)。全体的に未来を見据えて、ここの層が弱い、こういうチームを作っていきたい、じゃあこういう能力の人たちが足りないから、こういう人を取っていこうとか。こういったチーム文化が弱い、ではこういった制度や仕組みを取り入れよう。世の中のテクノロジーの最先端でこういったトレーニングや分析がある、試して、適したものを取り入れよう。とか。バランスよく、経営のごとく、中長期と短期両方で組織づくりを全体最適な視点で考えてチーム作りを論じることができる人材がすごく少ないです。

ダルビッシュ それはそうですね。

岩本 でも、話を聞いているとGMになっちゃうのも、もったいない気がするんです。

ダルビッシュ 何が一番でしょう?

岩本 トップでいいじゃないですか。

ダルビッシュ トップっていうのはオーナーですか?

池田 球団を持っちゃうのが一番。

ダルビッシュ 球団を買うということですか?

池田 そう。マイケル・ジョーダンがやっているじゃないですか。ジーターも。

岩本 自分で買わなくてもダルビッシュさんの意向に賛同してくれる人と一緒に買えばいいじゃないですか。

池田 こっちだとマーリンズが1800億円するじゃないですか。僕らがベイスターズを買った時は100億くらいですよ。球場とセットで買って、だいたい200億なんですよ。何人かで持ち合っちゃえば1つくらい持てますから。そういうことをわかっている選手たちだけで持つNPBの球団が1つできたら、私は日本の野球はすごく変わると思いますよ。

第1回:「いつか、日本球界に戻りたいなって思っています」第2回:「日本から2チームくらいMLBに入れて戦ったら面白い」第3回:「メジャーの中でもトップのピッチャーになりたい」

[プロフィール]
ダルビッシュ有
メジャーリーガー/テキサス・レンジャーズ投手
1986年8月16日、大阪府生まれ。右の本格派投手として早くから注目を集め、東北高校時代は春夏4度の甲子園出場。2年の夏には準優勝を経験している。2005年の北海道日本ハムファイターズ入団後は2年目から6季連続二桁勝利を挙げ、最優秀防御率とMVPに各2度、沢村賞に1度輝くなど球界を代表する投手となった。2012年にMLBテキサス・レンジャーズに移籍。いきなり16勝を挙げると3季連続二桁勝利をマーク。2015年は右肘の手術とリハビリに費やしたが、翌年見事に復帰して7勝を挙げると、今季は開幕からフル稼働。6月19日時点ですでに6勝を記録している。体調管理やトレーニング方法の追究、またストイックな取り組みでも知られ、SNSを駆使してその模様をファンに届け、交流している新時代のアスリート。196cmの長身から繰り出される最速150キロを超える直球と多彩な変化球は超一級品だ。


岩本義弘

サッカーキング統括編集長/(株)TSUBASA代表取締役/編集者/インタビュアー/スポーツコンサルタント&ジャーナリスト/サッカー解説者/(株)フロムワンにて『サッカーキング』『ワールドサッカーキング』など、各媒体の編集長を歴任。 国内外のサッカー選手への豊富なインタビュー経験を持つ。