文=岩本勝暁

生活がかかっているから必死になれる

©Getty Images

——先日、およそ4カ月にわたるイタリア・ラティーナでの活動を終えて帰国されました。石川選手は2年前にも、同じイタリアのモデナに短期留学しています。その時との違いは何ですか?
石川 まず、モデナの時は僕自身、何もわからない状態で行きました。セリエAのシステムも知らない。ただ、すごい選手が集まっているところ、というイメージだけだったんです。そうした基本的なことを、2年前のモデナで知ることができました。それがあったからこそ、今回、ラティーナというチームで試合に出ることをイメージしながら行くことができた。それが一番の違いですね。

——リーグの雰囲気にうまく溶け込めたということですね。
石川 はい。生活もそうです。たとえば、イタリアの人たちは食事にかける時間がとても長いとか、そういうことも事前にわかっています。その意味で、今回は生活もスムーズでした。前回は、日本が恋しくなるというか、そういう時期も1、2週間くらいあったんです。だけど、今回はそれがゼロだった。それも、前回の経験があったからだと感じています。もちろん一番の違いは、スタメンで試合に出られるようになったこと。前半はケガもあってコートに立てない時期もあったけど、後半はしっかりとプレーすることができました。最後はケガで出場機会を失いましたが、ケガをすることがプロの選手にとってどれだけ痛いことなのかを学ぶこともできた。本当にいろいろなことが感じられたと思います。

——“プロ”という言葉が出てきましたが、イタリアで他の選手からプロ意識を感じることはありましたか?
石川 まだそこまで上手にイタリア語が話せるわけではないので、“プロ”について誰かから教わったということはありません。ただ、他の選手を見て感じたことなんですか、チームの中にはバレーボール以外に別の仕事をしている人もいます。たとえば、実家でワインを作っていて、それを手伝っている人。他にも、別の仕事と両立しながらバレーボールをしている人がいました。なぜなら、お金を稼いで、家族を養ったりご飯を食べていかなければいけないからです。だけど、意識の中ではバレーボールが一番で、みんながそこに生活をかけている。プロだからどうではなく、僕も生活がかかっているからそこまでバレーボールに必死になれるんだと思っています。

——イタリアでは、コートから離れてもバレーボールの動画を観たりしながら過ごしていたそうですね。それもプロ意識の表れでしょうか。
石川 自分はもともと、外に出るタイプじゃないんです。だから、バレーボールをやっていない時は基本的に暇で(笑)。その時に何をするかといったら、動画を見たりバレーボールのことを考えることくらい。あとは、イタリア語を勉強するかテレビを観る。でも、テレビを観ていても、やっていることが全部わかるわけではありません。そういった家でできることを、その時の気分で選びながらやっていた感覚です。そういう時間は、日本にいる時よりも長かったかもしれません。基本的に一人ですから(笑)。

——どんな動画を観ているんですか?
石川 セリエAなどトップチームの試合を観ています。今だったらチャンピオンズリーグですね。それを観て、いいプレーをする選手やおもしろい選手がいたら、名前を調べてYouTubeで検索する。そうすると、その選手のプレーが他にもたくさん出てくるので、そういうのを繰り返し観ています。

——それが自分のプレーに生かされることもありますか?
石川 映像を観ている時のほうがイメージできるので、自分もいいプレーがしやすいんです。イタリアでも一時、動画を観てから練習に行くようにしたことがあります。そうすると、イメージが頭に残っているので、やりたいプレーがうまくできるようなこともありました。

海外のトップチームでプレーすることが個人的な目標

©新井賢一

——プレーの面で進化したところはどこですか?
石川 イタリアでは常に速いサーブが来るし、ブロックも高い。それに耐えられるサーブレシーブやスパイクは身についたと思います。サーブレシーブでも、以前に比べて大崩れすることがなくなりました。

——監督やチームメイトからのアドバイスはあったのですか?
石川 いえ、それはあまりないです。他の選手のプレーを観ながら自分で学ぶくらいですね。

——ちなみにオフの日など、他のスポーツに触れる機会はなかったですか?
石川 サッカーを観に行きました。セリエAだったと思います。ラツィオと…、相手はどこだったかな(笑)。チームのマネジャーがラツィオのサポーターで、マネジャーの友人と3人で行きました。

——雰囲気はどうでしたか?
石川 バレーボールに比べて、盛り上がり方が違いますよね。バレーボールは1点1点が重なって25点で1セットを取ることができます。だから、ストレート勝ちをしたとしても少なくとも75点は入る。でも、サッカーは得点が入る機会が少ないから、1点がすごく大きいんです。ゴールが決まった瞬間、まったく知らない人とハイタッチをしたり、よくわからない人と肩を抱き合って喜んだり、ものすごい雰囲気でしたよ(笑)。

——2020年の東京オリンピックに向けて、残りの3年でどうステップアップしていきますか?
石川 海外に出たのでその経験を生かしつつ、今年は全日本で頑張りたいと思っています。この先、どの進路に進むかはわかりませんが、やはり海外に出てプレーしたい。海外のトップチームでプレーすることが個人的な目標でもあるので、それが達成できるように頑張りたいですね。全日本としては、東京オリンピックでメダルが取れるように、残りの3年を意識してやっていきたいと思います。

——お話を聞いていると、“プロ”という言葉が何度も出てくるようになりました。石川選手にとって“プロ”とは?
石川 頑張ったら頑張っただけ評価してもらえるし、自分の生活もかかってくるから、より一生懸命になります。バレーボールのことをもっと考えるようになるし、それによって視野も広がって考え方も変わってくる。だけど、プロであってもそうじゃなくても、考えることはできます。自分がどっちの道を選択するかはわからないけど、どちらにしてもプロの意識を持ちながらやっていきたいですね。プロの選手と同じ意識を持って、バレーボールと向き合っていきたいと思います。

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著者プロフィール 岩本勝暁

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、バレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ大会から2016年リオデジャネイロ大会まで、夏季オリンピックを4大会連続で現地取材する。