撮影:荒川祐史

御茶ノ水に位置する、明治大学リバティタワー。2限と3限の合間に移動する人数は相当数に登る。実際、このエキシビションマッチを見た人数は、約5,000人(主催者発表)。多くの学生や、試合の情報を聞きつけて集まった父兄などが、足を止めて試合に見入っていた。告知効果は、相当なものがあっただろう。

これまで3大学間の交流は行なわれていたものの、リバティタワーという本来学業のための空間でこうしたエキシビションマッチを行なうことは初めて。このイベントは、VICTORY PROCRIXでもある池田純・明治大学スポーツアドミニストレータの提案によって実現したものだ。

校舎で、それも授業の合間ということもあり、アナウンスも独特。「まだ授業中の教室もあります、私語は慎んでください」「このあと13:30から授業です、速やかに移動してください」など、通常のスポーツ会場ではあり得ないアナウンスも趣き深いものを感じさせた。

試合はシングルス2試合・ダブルス2試合の計4試合が行なわれ、2017年世界選手権ダブルスで48年ぶりとなる銀メダルを獲得した森薗政崇ら4選手が躍動。国技として卓球に取り組む中国勢に対し、一歩も引かないプレーで会場を大いにわかせた。

以下、森薗政崇選手、明治大学学長・土屋恵一郎氏、池田純氏のコメント。

撮影:荒川祐史

森薗政崇選手「めちゃくちゃ楽しかったです。普段こういうところで卓球をやる機会はまずないですし、本当に初めての試みだったと思うんですけど、運営も円滑に進めてくださったので。本当に楽しくイベントをすることができました。たくさんの人達に僕たちの卓球を見てもらえて、幸せです。
 
試合前日は、北京大と北京体育大の選手たちと一緒に午前・午後と1日練習をして、夜に会食をしました。年齢も近いこともあって共通の話題も多くて、話がはずみましたね。今後どうしたいか、とか。勉強の部分ではよくわからないこともあるんですけど(笑)、科学的な観点から卓球を解明していきたいとか、壮大な話だなと。彼らすごく賢いんです。でも、気さくで人懐っこくて。彼ら自身も日本人の友達が初めてできたって喜んでくれたし、すごく良い交流になりました。

撮影:荒川祐史

森薗「今回みたいな取り組みは、大げさでなく卓球界全体にとってもプラスだと思います。やっぱりスポーツは見てくれる人がいて、サポートしてもらってこそだと思います。でないと、野球やサッカーのようなメジャーなスポーツにはなっていかないと思います。卓球に足りないのはまさに世間の認知度だと思うので、こういう機会は本当に大げさでなく卓球界にとっての大きなイベントになったと思います。

僕は普段国際大会や日本代表の合宿、世界選手権などもあって遠征していることが多くて、明治の卓球場や寮などにいることが少なくて。1年の半分も、寮にいられないんです。残りの学生の期間は、4年間一緒に頑張ってきた仲間たち、後輩、監督ともっともっと絆を深めて、楽しいことをしていきたいです。9月に入ってからは最後の関東学生リーグがあります。これまで4年間本当にたくさんの支援を受けてきました。児玉(圭司)総監督、風間(信隆)監督に少しでも恩返しできるように最高の結果で締めくくりたいです」

撮影:荒川祐史

明治大学学長・土屋恵一郎氏「本学卓球部はリオ五輪銅メダリストである水谷隼選手を輩出し、2017世界選手権ダブルス男子で48年ぶりに銀メダルを獲得した森薗政崇選手が在籍しています。いっぽう、中国は卓球が日本における相撲と同じように国技として扱われ、多くの優れた選手を輩出する国です。
 
北京大学と本学は、歴史的に長く交流を行なってきました。ただ、リバティタワーという学生が多く集まる場所で卓球の試合を行なったのは初めてです。本学スポーツアドミニストレータである池田純さんの発案で、多くの学生に大学スポーツへの関心を振り向けることを意図しました。やはり、もう一度カレッジスポーツというものを、学生にとって意味のある、大学生活における花形にしたいと思うのです。今回の企画は、その第一弾という位置づけです。
 
今後は、卓球に限らず多くのスポーツにおいて大学間の国際交流を行ないたいと思っています。明治大もいま毎年2,000人近く留学生が来ているわけですから、スポーツも含め多種多様な交流を行ないたいと思っております」

撮影:荒川祐史

明治大学スポーツアドミニストレータ・池田純氏(写真右端)「大学において、スポーツは絆でありアイコンです。森薗選手も『すごく楽しかった』と仰ってくれましたが、満員の会場でプレーするのは選手にとっても、見る側にとっても醍醐味だと思います。

北京大学の方も、明治大の児玉監督も喜んでくれましたし、5,000人の目に一気に触れました。大学にとって絆であり、アイコンであるスポーツに対して、これだけ触れられる機会を大学が簡単に作り出せるというのは先進的かつわかりやすい事例だと思います。

大学のスポーツ振興の取り組みはいろいろありますが、やはりまずはこうやって実際に見て触れてもらって、スポーツを自分たちのアイコン・絆と感じてもらう。心の距離を縮めることで、いろいろな可能性が見えてくると思います。明治大学なら、自分たちの卓球部が気になる、森薗選手の進路が気になるという人が増えたと思います。NCAAだけでなく、こういう取り組みを続けることで、大学スポーツは振興していくのではないでしょうか」

今後も、明治大学の取り組みに注目したい。

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VictorySportsNews編集部