J1クラブは3億5000万円が保証される
©Getty Images2017シーズンのJリーグはいよいよ佳境に突入している。J1の優勝争いは鹿島アントラーズと川崎フロンターレに絞られ、上位争い、そして残留争いも混沌としている。J2では湘南ベルマーレの昇格と優勝が早々に決定し、自動昇格となる2位、そして3位から6位までで争われるJ1昇格プレーオフを巡る争いは激しさを増している。
今年のJリーグは、昨シーズンから様々な点が変化している。J1が2ステージ制から通年制になり、チャンピオンシップが廃止された点も大きいが、最大の変化はイギリスの国際スポーツメディア企業であるパフォーム・グループと放映権契約を結び、スポーツライブストリームングサービス「DAZN」で試合が配信されるようになった点だろう。契約は10年総額2100億円という破格のもので、これによってJクラブに還元される金額は、昨シーズンとは比べ物にならないぐらい高額になった。
少し下世話な話になってしまうが、「愛するクラブがいくらもらえるか、どんなことに使えるか」を皮算用しながら終盤戦を楽しみたい方のために、改めて今シーズンの賞金等の額をおさらいしてみよう。
各クラブが受け取るお金は、「均等分配金」、「賞金」、「理念強化分配金」、「降格救済金」の4種類がある。まずは「均等分配金」だが、これは文字通り各クラブが順位に関係なく受け取るお金で、その額はJ1クラブが3億5000万円(16シーズン1億8000万円)、J2クラブが1億5000万円(同8000万円)、J3クラブが3000万円(同1500万円)。各ディビジョンとも昨年からほぼ倍増しており、J1クラブは下位でフィニッシュしても3億5000万円が支給されることになる。
続いて「賞金」は、上位チームに与えられるもの。J1は優勝3億円、2位が1億2000万円、3位が6000万円。昨シーズンのJ1を制した鹿島アントラーズは1stステージ優勝で5000万円、年間勝ち点3位で2000万円、チャンピオンシップ準決勝勝利で1500万円、チャンピオンシップ制覇で1億円の合計1億8500万円を手にしているが、今シーズンのJ1を制した場合はこちらも大幅アップとなる。ちなみに、J2は優勝が2000万円、2位が1000万円、3位が500万円。J3は優勝500万円、2位250万円となっている。
また、天皇杯優勝チームに支払われる「ACLサポート」の8000万円も、J1の上位4チームと天皇杯優勝チームが重複しなかった場合はJ1上位4チームに2000万円ずつ配分される。
J1優勝クラブが受け取るのは22億円以上
©Getty Imagesそして、最も大きな話題を呼んでいるのが「理念強化分配金」で、これはJ1の1位から4位までのチームに支払われる、選手獲得費用や練習環境、育成組織の充実化に使途を限定した資金だ。来シーズン以降、最長3年間にわたって傾斜配分されるもので、J1で優勝したチームは2018年に10億円、19年に4億円、20年に1.5億円、合計15億5000万円を受け取ることになる。2位のチームは18年4億円、19年2億円、20年1億円の合計7億円、3位チームは18年2億円、19年1億5000万円の合計3億5000万円、4位チームは19年の1億8000万円のみとなっている。
ではここで、J1の優勝チーム、2位から4位のチーム、5位以下のチームが受け取る総額を見てみよう。
優勝:22億円~22億2000万円
2位:11億7000万円~11億9000万円
3位:7億6000万円~7億8000万円
4位:5億3000万円~5億5000万円
5位以下:3億5000万円
優勝して得られる金額は、5位以下の実に6倍以上。4位と5位でも2億円近い差がある。この数字を見れば、J1で優勝すること、4位以内に入ることがいかに重要か、すぐに分かるはずだ。4位に入って5位以下よりも2億円余分に受け取るだけで、補強にかける予算を上積みし、より有能な選手を獲得することができる。優勝しようものなら、一気にビッグクラブ化への道を突き進むことができる。参考までに実例を挙げると、浦和レッズは今年9月に新しいクラブハウスを完成させた。地上3階建て、室内トレーニングルームや食堂を備えたこの新クラブハウスの建設費用は総額5億円と言われている。上位に入れば、これと同規模以上のものが、言い方は悪いが“簡単に”作れてしまうのだ。
また、この金額を元手にクラブが抱える将来有望な選手と複数年契約を結び、適正価格の移籍金を設定することもできる。それによって、これまでのように移籍ゼロで欧州のクラブや国内の資金力のあるクラブに若い才能が引き抜かれる事態を回避し、移籍金が発生する健全な形での移籍が増えることにも繋がるだろう。今シーズン開幕前、積極補強に動いたクラブが多く、シーズン中に多くの監督交代が行われたのは、各チームが「理念強化分配金」の獲得を目指して真剣に上位を目指したからに他ならない。各クラブの競争意識が劇的に高まったという点においても、パフォーム・グループとの放映権契約は大きかったと言えるだろう。
上位チームにばかり手厚いように見えるが、一方で下のディビジョンに降格してしまったチームを救済する仕組みも導入された。それが「降格救済金」である。下のディビジョンに降格してしまったチームは、降格1年目に限り、前年度のディビジョンで受け取っていた「均等分配金」の8割が保証されるというものだ。例えばJ1からJ2に降格した場合、本来なら「均等分配金」は1億5000万円だが、降格1年目に限ってはJ1時代の「均等分配金」3億5000万円の8割となる2億8000万円が保障されるため、さらに1億3000万円が上積みされる。J2からJ3に降格した場合は、「均等分配金」3000万円に加えて9000万円が支給され、合計1億2000万円が保障される。降格は収入の減少を伴うものだが、財政圧迫を少しでも軽減させてクラブの経営を安定化させる狙いがある。1年でのJ1復帰、J2復帰を目指す降格チームにとってはこの上ない“援軍”となるだろう。
今シーズンからJリーグは、ディビジョンが上に行けば行くほど、J1で上位に行けば行くほど、懐が潤うシステムになった。ファン・サポーターの方々は、愛するクラブが何位になるかだけでなく、それによっていくら支給され、それを来シーズン以降、どのように使用するのかにも注目し、想像を膨らませながら終盤戦を見届けていただきたい。
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