3人目のゲストは、さいたま市長清水勇人氏だ。大学卒業後、松下政経塾を経て衆議院議員の公設第一秘書を務め、2003年4月の埼玉県議会議員選挙に初当選し、2007年に再選。2009年5月のさいたま市長選挙で初当選し、現在3期目を迎えている。

さいたま市をスポーツの街に

清水市長は2011年、さいたまへのスポーツイベントの誘致と開催支援を通じた地域活性化を目指す、「さいたまスポーツコミッション」(以下、SSC)を任意団体として設立し、世界最大のサイクリングイベント、ツール・ド・フランスを誘致するなどの実績を積むと、将来的に株式会社化を目標とし、2018年に一般社団法人化を果たした。

スポーツは単なる体育の延長ではなく、経済の活性化、環境改善、観光の魅力向上、文化の醸成につながる力を持っていると話し、「スポーツの力」を活用したさいたま市のコミュニティの再生にも期待を寄せる清水市長。その構想実現の舵を取るのが、SSCの会長を務める池田純氏だ。

清水市長が放送で語った、池田氏への期待は、横浜DeNAベイスターズを黒字化させた経営ノウハウのみならず、横浜という地域性とチームをマッチングさせたプロモーション手腕だ。
池田氏は、さいたま市=スポーツという認知が全国に広がり、実情を伴うまでには5~10年かかるという見解を示し、ソフトとハード両面における順序立てた計画の必要性を説いた。SSCが行政主導で生まれた会社である以上、そこにはさいたま市の「行政の力」が最大限投下されることが、成功の大前提となる。

浦和レッズ、大宮アルディージャ、西武ライオンズなど、埼玉県全域で見ればプロアマを含めスポーツチームを数多く有しているものの、さいたま市と言われてすぐに「スポーツの街」と浮かぶほどのブランディングはできていない。池田氏によれば「スポーツ」という大カテゴリと同時に、すでに実績のあるツール・ド・フランスさいたまクリテリウムという世界大会の開催を通じ、「自転車の街」という実際の街づくりを通して、印象の浸透、文化形成を行うべきだという。

そのために必要なハード施設の建設、例えば「自転車パーク」のような場所を作る上での土地活用、企画、設計やデザイン、運営といった、これまで行政が担っていた部分を、思い切って、デザインやコミュニケーション、企画段階からSSCとともに、実際の運営や経営やソフトづくりを託して、「おもしろくて、楽しくて、市民の評価を得て、世の中の評価を得る」ことができるかどうかが、ブランディング成功のカギとなる。
逆に言えば、民間企業とのコラボレーションの際、巻き込み方や運営の託し方が中途半端になってしまうと、飛躍的な成功は見込めず、ブランディングも進まない。行政にもそれだけの覚悟が必要であり、大胆さが求められると池田氏は強調した。

こうした改革を「サッカー」「バスケ」「卓球」といったカテゴリでも一つずつ進めていった先に、ようやく「スポーツの街」というブランディングが完成する。

アリーナ建設に民間の力を

一方ハード面においては、1万人規模のアリーナが県内に複数個必要だと話し、清水市長も同じ意向を示した。中小規模のスポーツ大会の開催の受け皿をつくることで、「地域の元気玉」を増やすという狙いのようだ。

アリーナ建設も他のハード施設と同様に、前述の街づくりの一部であることに変わりはない。池田氏率いるSSCが旗振り役となり、プランは描くが、さいたま市が民間任せにせずに「行政にできること」を最大限できないと実現はしないだろう。例えば、適切な資金の投入や都市計画の中でいかに今後の経営を健全にするためにサポート役に徹することができるかどうかが肝となる。SSCとさいたま市の関係性からは、適切な資金や行政の力は投入しつつも、アリーナ建設が民間主導の時代にあることをまざまざと感じさせた。

加えて清水市長は、教育面に注力した構想を示した。アスリートの合宿所を意味する“スポーツシューレ”を立ち上げ、スポーツ医学、メンタルヘルス、栄養学など、科学的にスポーツを捉える“学び場”としての活用を目指す。さらに、選手の強化を目的としたビッグデータの研究・活用の拠点ともなるという。

こうしたハード面の充実にあたり、両名が期待するのが、行政だけでは生まれないアイデアと実行力を持つ民間企業の参入だ。池田氏も横浜DeNAベイスターズ時代、野球界に前例のない取り組みを数多く行い、球団のイメージアップに成功した。

<取り組み例>
(1)アツイゼチケット:試合に不満ならチケット代全額返金
(2)100万円チケット:リムジンで出迎え、ハマスタ裏側ツアー、選手と触れ合えるラウンジ観戦、スイートルーム宿泊、監督と中華街で晩餐などの特典がつく。
(3)ハマスタBAYビアガーデン
(4)ホームランが出たら船の汽笛を鳴らす
(5)B級グルメフェア

など、消費者(観戦者)視点に立った施策を実現してきた。

経済効果への期待は

実際、さいたま市におけるスポーツの経済効果はどれほどなのか。清水市長によると、部分的なものを組み合わせれば、SSCは2011年から2017年の間で約360億円の経済効果を生み出し、加えて、ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムが毎年約30億円(広告効果は10億円)という経済効果をもたらしていると話し、さいたま市のスポーツ市場規模をアピールした。

官・民が一体となり、スポーツによる地域活性化を実現することで、「さいたま」を他地域のロールモデルにするという目標を掲げる池田氏。清水市長も「志は同じ」と方向性を確認し、今後への期待を視聴者へ促した。

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