TBS系列で放送中のドラマ『ノーサイド・ゲーム』では、大泉洋扮する主人公がTLチームのGMとして、保守的な協会幹部と対立。ラグビー門外漢のビジネスマンならではの感覚でラグビー界の改革を目指す。そんなストーリーと呼応するように発表された清宮克幸・日本ラグビーフットボール協会副会長のプロリーグ創設宣言。2020年からプレコンペティションを行い、2021年には本格的にリーグを立ち上げるというあまりにも唐突な「構想ではなく宣言」は、W杯を前に盛り上がりを見せるラグビー界に波紋を広げている。
「以前からトップリーグの“プロ化”計画は公表されてましたよね。しかし、本当の“プロ化”とは、企業マネーに偏重したままの現状の延長線上で、企業依存型の企業スポーツとは全く異なる経営体質への改革を成し遂げられるかどうかにかかってくるということは皆さん理解されているのでしょうか。日本のスポーツは、“プロ化”と簡単に言い過ぎる。プロ化とは、そのプロスポーツの会社単体ですべての経営がコントロールできて、まわること。親会社のマネー依存から脱することは相当に難しいことです。
ラグビーにとっては、W杯が行われる今年が最大のチャンスなのは間違いありません。かつてJリーグもW杯の日韓大会があったからこそ盛り上がりました。清宮さんのプロリーグ宣言には大いに期待したいところですが、現状のラグビー界を見ると、“プロ化”の意味をどこまで理解し成し遂げるための具体的ビジョンがあるのかは、楽観はできないのではないでしょうか」
現在、トップリーグのチームを維持するのには、人件費だけで年間14億円くらいと言われている。ここにそれ以外の運営費などを加えていくと年間30億円くらいはかかる計算だ。しかし主な収入源となる試合のチケットは、現在はほとんどと言っていいくらい売れていない。年間20試合くらいしかない上に、観客の多くは親会社の社員で応援のために動員された人たちというのが現状だ。池田氏も「W杯のための12のスタジアムをホームとするチームを作る計画のようですが、地域密着を成し遂げ、チケット、グッズ、放映権、スポンサー(親会社への依存体質ではない純粋なスポンサーマネー)で数十億の売り上げをつくるのは至難の技」とその実現は大変だと語る。だが池田氏は、ラグビーのプロ化計画にポテンシャルはあると続け、「もしやるならば」とひとつのアイデアを提示した。
「日本には高校ラグビー、大学ラグビーのファンも多いですから、プロリーグが成功する可能性も高いと思っています。それでもいきなりホームアンドアウェーで地方のラグビー場に観客を入れるのは難しいでしょう。遠征費などもかさばり、チームの経営を圧迫します。まずはほとんどの試合をラグビーの聖地、秩父宮ラグビー場で行うというのはどうでしょう。東京のド真ん中にある秩父宮ならラグビー好きも集まりやすい。そこでおもしろい試合をやって、お金を払って観に来てくれるファンを着実に増やしていくというのも手だと思います」
W杯で一時的に人気が盛り上がったものの、その後人気が急降下したなでしこリーグの例もある。『ノーサイド・ゲーム』がこの後どんな展開になるかはわからないが、清宮構想の前途にはまだまだ険しい道程が待っていそうだ。
取材協力:文化放送
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文化放送「池田純 スポーツコロシアム!」(毎週月 20:00~20:30)
パーソナリティ:池田純
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日本ラグビー協会・清宮副会長がプロリーグ構想を発表。“プロ化”は企業マネーから離脱することが大前提
7月末、東京都内で行われたスポーツ関連のシンポジウムで、6月に日本ラグビーフットボール協会の副会長に就任したばかりの清宮克幸氏がプロリーグ創設を宣言した。横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、スポーツビジネス改革実践家の池田純氏は、かつて協会の特任理事もつとめていた。まるで現在放送中の人気ドラマ『ノーサイド・ゲーム』と連動したようなこのプロ化宣言をどう考えているのだろうか。
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