まずは安静が基本。痛みの軽減が見られるか丁寧に観察を

オスグッド病は、成長期のスポーツ障害の代表例だ。サッカー少年に多く見られ、膝の下部に痛みが表れる。一般的には休むことで痛みは治まるが、運動を再開すると痛みが再発することもある。
膝の曲げ伸ばしの際、太ももの大腿四頭筋から繋がる腱(膝蓋腱)と、スネの骨の接着部に負荷がかかる。未発達の弱い骨が、その負荷に耐えきれなくなったときに腱と骨が剥離してしまう、代表的なオーバーユースの事例だ。

子どもがオスグッド病かもしれないと思ったら、どのように対処すればいいのだろうか。

齋藤医師「膝蓋腱の付着部の骨が剥離し分離したままになることはまずありません。安静にしていればまたくっつくので、手術に至ることはないでしょう。まれに患部が盛り上がってくることがありますが、その後の運動機能を大きく損なうものではありません。もちろん無理は禁物で、症状が続くようならお近くの整形外科を受診することをお勧めしますが、長い目で見れば大きな心配はありません」

寺尾医師「一般的には活動レベルを落とし、安静にすることで回復に向かいます。手術に至ることはほぼありません。それでも痛みが治まらない場合には、病院を受診しレントゲンを撮ることをおすすめします」

膝の痛みから連想される症状には、VICTORYクリニック第二回で触れた成長痛も考えられるが、これは成長ホルモンが出る就寝時に痛みが出るという特徴がある。痛がりかたが激しいケースもあるため不安になる親も多いが、1時間ほどでケロッとしてしまうことが多いため焦らず様子を見よう。

お茶の水セルクリニックの寺尾院長(左)と齋藤琢先生(右)

レントゲンでは見えない病気がMRIで見つかる

ただし一定期間様子を見ても痛みが改善しない場合、思わぬ病気が潜む可能性もある。

齋藤医師「膝の痛みで初期のうちに見逃されがちな病気の中には、骨肉腫のような腫瘍性疾患や、くる病のような代謝性疾患のケースがごくまれにあります。これらは初期のうちはレントゲンでははっきりしないこともありますが、治療を行うには早急に専門医にかかる必要がある難しい病気です。MRIを撮ったり、採血検査したりすればすぐにわかるので、2-3週間安静を心がけていても痛みの改善が見られない場合にはかかりつけの医師とMRIや採血検査について相談することをおすすめします」

街の整形外科の治療で回復が見られない場合には、腫瘍の専門病院やセカンドオピニオンを利用してほしいと寺尾医師も話す。稀に、関節の痛みから発熱を訴えるようになり、急いで採血をしたところ白血病が発覚したケースもあったという。

寺尾医師「関節の痛みという症状から考えられる病名は無数にあります。重大な病気の可能性は交通事故に遭う確率よりも低いかもしれませんが、スポーツ障害だからと言って放っておくことはしないでほしいですね」

必要以上にナーバスになる必要はないが、万が一の可能性を頭に入れておくだけでも医師とのコミュニケーションに活かせる。

寺尾医師「少し躊躇されるかもしれませんが、骨肉腫の可能性はないですか?といった質問を、患者側から投げかけることも有効です。また、病院を変える場合には今までの診断歴、治療歴を整理して新しい病院の医師に伝えることで、判断の助けになります」

痛み方や部位の認識は人それぞれだ。寺尾医師も過去に、「膝が痛い」という患者の訴えをよくよく聞いていくと、実は太ももの痛みだったということもあったそうだ。痛みの症状の説明の際には、「何をしたら痛いのか」「どのように痛むのか」といったシチュエーションを正しく伝えることで、早期の原因究明に役立つ。

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小田菜南子

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