開催の可能性は

実は「アース・モンダミンカップ」の主催者であるアース製薬は大会を開催したいと考えている。同社の大塚達也会長は緊急事態宣言前に行われたゴルフ雑誌の対談で、「出場選手と関係者の安全対策を最高レベルに整えたうえで、無観客でもやる予定です」とコメントしている。

そして5月14日に39県の緊急事態宣言が解除されたことで、特定警戒が継続になった8都道府県に関しても5月31日までに緊急事態宣言が解除される可能性が出てきた。

公益財団法人日本スポーツ協会は5月14日付で「スポーツイベントの再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」を作成。これによると、スポーツイベントの再開に当たっての基本的考え方として、まず「当該スポーツイベントが開催される都道府県の方針に従うことが大前提」としている。

その上で、スポーツイベントを開催・実施することとした主催者が、その運営に当たり以下の6項目に留意することを求めている。(1)参加募集時の対応(2)当日の参加受付時の留意事項(3)参加者への対応(4)参加前後の留意事項(5)参加者が運動・スポーツを行う際の留意点(6)その他の留意事項。

これらの条件をすべてクリアすれば、6月25日~6月28日に千葉県でゴルフトーナメントを開催することも可能となる。

ただ、日本女子プロゴルフ協会は開催中止を発表した7月の2試合について、「ギャラリー・選手・ボランティアなど大会に携わるすべての皆様の安全確保を最優先に慎重に検討を重ねた」結果、「安全確保が万全でないことや、多数のギャラリー・大会関係者等が移動することで開催地域への感染リスクが高まる恐れも鑑みて中止の判断に至った」としている。

つまり、スポンサーサイドは安全対策を最高レベルに整えようとしているが、協会サイドは安全確保に万全の自信が持てないため、大会開催の可否を決めかねている可能性が高い。

確かに、緊急事態宣言が解除されたとしても新型コロナウイルスの感染拡大が収束するわけではない。ゴルフトーナメントを開催することで開催地域への感染リスクが高まる恐れはある。

でも、そのことを心配してばかりいては、いつまで経ってもゴルフトーナメントを再開させることはできないだろう。プロ野球が6月19日の開幕を模索している中、プロゴルフも主催者が大会開催に意欲的なのであれば、再開の可能性を探ってほしい。

大会開催にこだわる理由

「アース・モンダミンカップ」は2012年に始まった比較的新しい大会だが、今となっては女子ツアーの中で独自の存在感を示している。

6月第4週という開催時期は、日本は梅雨の真っ最中で、海外メジャー大会と日程が重複することも多い。さらに、企業にとっては株主総会の開催時期でもあり、プロアマ大会を開催してもゲストが参加できない。そんな悪条件もあり、ツアースケジュールがなかなか埋まらなかったが、それを承知の上で2012年に新規参入した。

賞金総額1億円、優勝賞金1800万円の3日間競技で第1回大会が開催され、服部真夕が最終18番ホールのイーグルで逆転勝利を飾り、鮮烈な印象を残した。

第2回大会からは「世界に通用する選手を育てるため、4日間競技を増やしたい」という小林浩美会長の声かけに快く応じ、賞金総額1億4000万円、優勝賞金2520万円の4日間競技にリニューアル。

その後も2017年に賞金総額1億8000万円、優勝賞金3240万円に増額。2019年には賞金総額2億円、優勝賞金3600万円まで増やした。そして2020年は賞金総額2億4000万円、優勝賞金4320万円の国内最高賞金額大会となっている。

これだけ高額の賞金を積み上げる理由は、選手たちが現役でいる間は生活が成り立つように保障してあげたいという思いがある。同社が大会開催にこだわるのは、選手たちが生活に苦しんでいる今の時期に、何としても賞金を届けたいと考えているのだろう。

開催地の千葉県を含めた関係各所の話し合いによってこれから開催の可否が決まるのだろうが、まずは前夜祭もプロアマ大会も開催せず、ギャラリーも入れず、選手たちが今できることを全力で表現する舞台を作ってあげてほしい。その時期として6月第4週というタイミングは決して悪くない気がする。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。