■初のインターネット配信のみの大会

現地での観戦を楽しみにしていたファンには「安全確保の観点から会場での観戦が叶いませんこと、心よりお詫び申し上げます」と謝罪の言葉を述べながらも、今大会はインターネット配信で4日間合計40時間以上の生放送を予定しているという。

日本女子プロゴルフ協会のホームページに掲載されているテレビ放送スケジュールを見ると、今大会は4日間ともインターネット動画配信で、6月25日(木) 7:00~18:00(予定)、6月26日(金) 7:00~18:00(予定)、6月27日(土) 7:00~17:00(予定)、6月28日(日) 7:00~17:00(予定)と表記されている。

大会ホームページのリンクが貼られているのでそちらも確認すると、すでにYouTubeの公式チャンネルが用意されており、4つの番組で同時にライブ配信を行う準備を進めている。4つの番組とは「トーナメント全体中継」、「注目ホール中継」、「9番・ショートホール中継」、「ホールアウト後の選手インタビュー」で、4日間72ホール競技が消化できなかった場合、6月29日(月)も大会を実施し、ライブ配信も行うという。

一方で、昨年の大会をテレビ放送した地上波のテレビ朝日、BS放送のBS朝日、CS放送のスカイAの表記はなくなっている。インターネット配信を行う大会はこれまでにもあったが、テレビ放送がなくインターネット配信のみの大会はおそらく今回が初めてではないか。

今大会は新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインに則って感染予防対策を講じる必要があるという特殊な事情があったにせよ、従来のテレビ放送とは一線を画す思い切った取り組みに拍手を送りたくなった。

■高まっていた生放送待望論

日本のトーナメント中継は長年にわたって録画放送が主流だった。ゴルフは屋外スポーツのため悪天候による中止や中断の可能性があり、試合展開によっても進行状況が変わり、同スコアで並ぶとプレーオフに突入し、決着がさらに長引く。

そのため、最終日の放送開始時刻は日曜日の15時30分~16時ごろに決められており、14時前後に決着する試合の映像をテレビ局が編集してから流すのが一般的だった。1990年代後半ごろまでは、そのことに対してほとんどのゴルフファンは不満を抱いていなかった。国内や海外のメジャートーナメントは生放送されていたが、それらの試合は特別な存在という位置づけだった。

しかし、1996年にタイガー・ウッズがプロ転向していきなり2勝を挙げ、1997年のマスターズで史上最年少優勝を果たすと、日本でもPGAツアーの注目度が一挙に高まった。2000年には丸山茂樹がPGAツアー参戦を果たし、メジャートーナメント以外の大会もケーブルテレビで視聴できる環境が整備されてくると、トーナメント中継はやっぱり生放送が一番面白いということにゴルフファンが気づき始めた。

その後、ツイッターやフェイスブックといったSNSの普及も生放送待望論に拍車をかけた。地上波放送を楽しみにしていたのに、現地で観戦した人の投稿をSNSで見つけてしまい、テレビを観る前に結果が分かって興味が半減するという経験をしたことがある人は多いはずだ。

■トーナメント中継の転換期となるか

テレビ局側もそんな視聴者ニーズの変化に対応すべく、系列局のCS放送やBS放送で午前中から生中継を開始し、午後の地上波放送の視聴につなげる取り組みが行われるようになったが、肝心の優勝争いは録画放送のままだった。

地上波放送での生中継を試みる大会もあったが、放送時間に限りがあることは変わらない。そんなときに限って決着が長引き、「続きはBS放送でお楽しみください」という展開となり、地上波放送しか観られない視聴者から苦情が殺到するケースもあった。

だったら最初から最後までCS放送やBS放送で生中継すればいいのにと思うが、そのことでテレビ局を責め立てることもできない。トーナメント中継を地上波で放送することにこだわっているのはスポンサーのほうだったりするし、優勝争いの臨場感よりも表彰式の賞品贈呈シーンをしっかり映すことを希望しているのもスポンサーだ(そのスポンサーを連れてきたのはテレビ局なのだが)。

要するに、テレビ局やスポンサーの都合で放送スタイルや放送時間を決めているから、トーナメント中継が視聴者最優先になっていなかったのである。

そういった意味では、今大会のインターネット配信は間違いなく視聴者最優先であり、スポンサー自身がそういう決断を下したことが非常に画期的だ。どのくらいの視聴者が集まり、視聴者がどんな印象を持つかは試合が終わってみないとわからないが、ゴルフファンとしては楽しみでならない。近い将来、この試合が日本のトーナメント中継の転換期だったと振り返る日が来るかもしれない。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。