無観客での開催だったが、日本で放送されたトーナメント中継を見る限り、ギャラリーの存在と声援がないだけで、大会自体は非常に見応えがあり、本来のPGAツアーと遜色がないように感じた。

再開第2戦の「RBCヘリテイジ」(6月18日~6月21日、サウスカロライナ州ハーバータウンゴルフリンクス)ではPGAツアー通算5勝を挙げている松山英樹も戦列に復帰し、元気な姿を見せた。

PGAツアーは今後、「ワークデイ・チャリティ・オープン」(7月9日~7月12日、オハイオ州ミュアフィールドビレッジゴルフクラブ)まで無観客で開催した後、「ザ・メモリアルトーナメント」(7月16日~7月19日、オハイオ州ミュアフィールドビレッジゴルフクラブ)では入場人数を制限しながらも観客を入れて開催を予定しているという。

「ワークデイ・チャリティ・オープン」と「ザ・メモリアルトーナメント」が同一コースで開催されるのは、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう健康と安全の問題を考慮して中止を決断した「ジョンディアクラシック」(7月9日~12日、イリノイ州・TPCディアラン)に代わるトーナメントとして「ワークデイ・チャリティ・オープン」が新設されたから。

5月28日に中止が決まった後釜の大会を6月15日に発表できるのが、事前に水面下で準備を進めていたとはいえ、PGAツアーの対応能力の高さだ。

■日本ツアーの厳しい現状

一方、日本のゴルフツアーは女子トーナメントの「アース・モンダミンカップ」(6月25日~6月28日、千葉県・カメリアヒルズカントリークラブ)が無観客で開催される予定となっており、大きな注目を集めているが、これでツアー再開と手放しで喜べる状況ではない。

7月の4試合はすでに大会中止が決定しており、今季第2戦は早くても「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」(8月14日~8月16日、長野県・軽井沢72ゴルフ北コース)というのが現状だ。

男子トーナメントは「ゴルフパートナーPRO-AMトーナメント」(7月8日~7月12日、茨城県・取手国際ゴルフ倶楽部)がツアー競技としての開催は中止したものの、無観客のエキシビショントーナメントとして「JGTO共催ゴルフパートナーエキシビショントーナメント」を7月9日~7月10日の2日間イベントで開催予定。

本格的なツアー再開は「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ」(8月20日~8月23日、北海道・ザ・ノースカントリーゴルフクラブ)を目指して調整中だ。

米国と日本では新型コロナウイルスの感染拡大時期や感染状況に違いはあるが、どうして日本より被害が甚大な米国でゴルフツアーが再開できて日本では再開できないのか。それにはさまざまな理由があるものの、端的に言えばゴルフツアーの収益構造が異なるからだ。

■収益構造の違い

PGAツアーは1968年に全米プロゴルフ協会から独立したツアー運営のための組織。自らトーナメントを作り、ツアーを整備して魅力を高め、ツアーの放映権を米国内だけでなく世界各国に販売することで莫大な収入を得るビジネスモデルを構築してきた。

日本では2019年から「GOLFTV」という動画配信サービスでPGAツアーのライブ配信が視聴できるようになったが、これは「GOLFTV」を運営するディスカバリー社とPGAツアーが12年間で20億ドル(当時のレートで約2200億円)のパートナーシップ契約を結んだことで実現した。

こういった収入によって、すべての選手にPCR検査を行い、健康と安全を最大化しながら無観客でも試合を開催し、ライブ配信を行うことができるのだ。

日本の男子ツアーを主管するJGTO(日本ゴルフツアー機構)も1999年に日本プロゴルフ協会から分離独立したツアー運営のための組織だが、自ら作ったトーナメントは「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」のみ。それ以外の試合は大会ごとに主催者が異なり、JGTOは放映権を掌握しておらず、収益のほとんどを主催者であるスポンサー企業に依存している。したがって、今回のような緊急事態が発生し、スポンサー企業が開催中止を決定すると、なすすべがなくなってしまう。

女子ツアーはそういった弱点を補強すべく、2017年から各大会の主催者と個別に交渉を開始し、あいまいだった放映権の定義と所在を明確にしようとしてきた。だが、テレビ局サイドから猛反発に遭い、結論を棚上げしている間に今回の事態が起こった。

「アース・モンダミンカップ」主催者のアース製薬は、日本女子プロゴルフ協会が放映権を手にすることに以前から賛成だったので、この機会にインターネット動画配信という新たなチャレンジに踏み切った。だが、既存のテレビ放映に満足していたスポンサー企業は今の状況でトーナメントを開催することに尻込みしている。

スポンサー企業としては、それなりの金額を投じてトーナメントを開催するのであれば、一定の広告宣伝効果を期待したいところだが、万が一にでも選手や関係者から感染者が出たら、企業イメージが下がってしまうからだ。

今後も開催中止に歯止めがかからないようであれば、男子ツアーも女子ツアーもスポンサーありきの収益構造からの抜本的改革に着手せざるを得ないだろう。PGAツアーのように放映権を掌握して収益拡大を目指すか。あるいはスポンサー企業に頼らずチケット収入やクラウドファンディングなどで収益を集める新しいビジネスモデルを模索するか。アフターコロナではゴルフトーナメントの仕組み自体が大きく変わるかもしれない。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。