読売巨人軍ならオレンジ、西武ライオンズならブルー、浦和レッズならその名の通り赤など、プロスポーツチームにはアイデンティティともいえるチームカラーがある。このチームカラーを大胆に変更したのが、新オーナーに池田純氏を迎えたさいたまブロンコス。長年親しまれてきたグリーンのロゴを赤く力強いデザインへと変更した。

「このチームがブロンコスを名乗り始めたのは、1982年からです。チームカラーがグリーンになったのは、ホームタウンである所沢に近い狭山の名産品であるお茶のイメージに合っていたのと、当時NBAの強豪だったボストン・セルティックスにあやかったという2つの理由があったようです。

実は、私はオーナーシップをとったとき、このグリーンは守ろうと思っていたんです。やはりそこには歴史があり、チームを作った方々の思いがこもっていますから。でも私にチームをたくした方々から『とにかくすべてを変えてほしい』というリクエストがありました。企業再生をいくつか手掛けてきましたが、すごく珍しいことです。でも確かに、なかなか勝てず赤字まみれだったチームですから、思い切って変えていかなければならない。そこでチームカラーを埼玉県の色でもある赤、サベージレッドに変更することを決めました」

単に埼玉県の色が赤というだけが理由ではない。そこには池田氏ならではのマーケティング的な視点も隠されている。

「埼玉県はミニバスケット人口が最も多い県なんです。つまり若年層のバスケット熱は高い。彼らをブロンコスに巻き込もうと思ったら、まずはその親をターゲットにしなければならない。今の10代の親の世代にとってのバスケットは、『スラムダンク』やマイケル・ジョーダンがいたNBAのシカゴ・ブルズ。両方ともユニフォームが赤なんです。少しでも多くの人に注目してもらい、ファンになってもらいたいので、この色を選ぶのがいいと考えました」

新ロゴにはもうひとつこだわりがある。ロゴの下部に描かれた「THE SAITAMA」の文字。チーム名の英語表記も、これまでの「SAITAMA BRONCOS」から「THE SAITAMA BRONCOS」へと変更される。

「ブロンコスのホームタウンは、所沢市とさいたま市ですが、実はこれまでも埼玉県内のいろいろな町でお世話になっている。“THE” SAITAMAとしたのは、そんなオール埼玉で応援してほしいという思いがあったからです。埼玉はずっと“ダサイタマ”と言われてきたじゃないですか。それを“ザ・サイタマ”に変えていく。2020年にブロンコスが“ザ・サイタマ”という言葉を使い始めてから埼玉のイメージが変わったよねと、10年後20年後にいわれるくらい、新しい文化を生み出したいと思っています」

プロスポーツに必要なのは、物語だ。単なる勝敗だけでなく、そこで紡がれる物語に人々は惹きつけられ、自分の人生を重ねていく。赤くなった新生ブロンコスは、埼玉の地でどんな物語を紡いでいくのだろうか。




取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部