ボートレースについては発祥を知らない人も多いだろう。実は戦後に生まれた日本発祥の公営競技だ。メディアから「右翼のドン」「政財界のフィクサー」などと呼ばれ、第二次世界大戦後に連合国からA級戦犯容疑をかけられた、最も優れた慈善家笹川良一が巣鴨プリズンに収容中、アメリカの情報誌「ライフ」に掲載されていたモーターボートをヒントに考案したといわれている。ボートレースは国土交通省管轄で「海事関係事業、公益事業の振興」と「地方財政の改善」を目的としているがそもそも戦後荒廃した港湾、河川の整備も兼ねてボートレース場が開場された経緯もある。
この二つの“スポーツ”の売上はコロナ禍の影響をあまり受けず、競馬は1月から6月までで前年比約101%、ボートレースにいたっては各レース場で軒並み前年同月比120%以上と大きく売上を伸ばした。もちろん両競技とも新型コロナ対策として、無観客であることはもちろん関係者も密を避ける形で開催しているので、会場や場外馬券売場、場外舟券売場での投票券購入はできず、すべてインターネット投票や電話投票での売上だ。くしくも若者を取り込み手軽にどこでも投票できる利便性を訴えていたが頭打ちになっていたインターネット投票会員がJRAでは27万人以上増加、ボートレースも公表はしていないがかなり増加したという。
これはあらゆるスポーツイベントを含む娯楽が中止に追い込まれ閉塞感が漂う中、スマートフォン1つでスポーツイベントを観戦できかつ一攫千金も狙える楽しさも理由の1つだが、最も大きい理由がパチンコ店の営業自粛だろう。たばこ対策で換気が良く、正面を向いて座り、他人と話す機会がほとんどないはずのパチンコがコロナ禍で営業自粛になったため、100円から遊ぶことができ、かつ毎日朝から晩まで開催されているボートレースや週末の競馬に人が流れたことは想像に難くない。以前からいわゆる「出玉規制」と呼ばれる、パチンコ玉が大当たりの穴に入って出てくる玉「出玉」に上限がかかり、利用者への還元率が減少したことで、ギャンブル性を求めるパチンコファンがボートレースに流れていたがさらに拍車がかかった形だ。
余談にはなるが、なぜパチンコがやり玉に挙げられたのか。3月の段階で野党議員がパチンコ店に対する休業の働きかけを提案したり、東京都医師会が「パチンコ店でクラスターが発生している」旨の発言をし、メディアが一斉にパチンコ店を非難し始めたことが原因だ(パチンコ店でクラスターが発生したとの発言について、その後事実誤認だったとして発言者が訂正・謝罪している。また、現在でもパチンコ店でクラスターが発生した事例は報告されていない)。
現在、野球もJリーグも人数制限はあるが観客を入れて試合を実施している。それに合わせほかのスポーツもコロナの感染リスクを限りなく減らす形を模索しながら徐々に再開をしている。しかしながらやっと再開できた野球やJリーグでさえも、入場料収入だけではなくグッズ販売収入や球場での飲食収入などの激減により非常に厳しい状況に陥っており、チーム再編が噂になっているほどだ。このような状況では、マイナースポーツなど言わずもがな。競技団体すら消滅する可能性もあり過去最大の危機に瀕しているといっても過言ではない。
あのアメリカでもスタンフォード大学が36ある運動部のうちマイナーな11競技を廃部にするという衝撃的なニュースが入ってきた。スタンフォード大学は花形のアメリカンフットボールだけで60億円以上を稼ぎだし、ヘッドコーチの年俸が約5億円という日本のプロ野球球団以上の規模感で運営し大学経営にも寄与していたが、コロナ禍で財政環境が悪化し稼げないマイナースポーツが切られた形だ。
生き残りのために、スポーツ振興の名のもとマイナー競技を公営競技として発展させ、マイナー競技の振興だけではなく、スポーツ界の資金的底上げをはかりつつ税収を確保するのも1つのやり方ではないだろうか。オリンピック、パラリンピックを大義名分にマイナースポーツの公営競技化への舵を切る。国民からの反対意見は相当出ると思うが、東京オリンピックを実現させた有力政治家がスポーツのことを真剣に思い主導すれば不可能ではなく、国民も受け入れるはずだ。
日本人は持統天皇が賭博禁止令を出したことが日本書紀に書かれているように元来賭け事好きな民族で、現在では公営競技のほかパチンコやパチスロ含めると世界最大のギャンブル国家であることは間違いないのだから。