―新型コロナが流行し始めてから、ゴルフ場としてどのような対応をしましたか

 2月前半のクルーズ船での新型コロナ集団感染後、3月・4月と感染者数が増加するのと比例し、会員様や予約をしているビジター様からプレー状況に関する問い合わせが増加。4月7日に「緊急事態宣言」が7都府県に発出された際には「通常通りの営業なのか」「1か月間ゴルフ場を閉鎖するのか」といった問い合わせが殺到しました。

そんな中、国や神奈川県が出した感染予防の指針や、日本ゴルフ場経営者協会が出した感染拡大防止ガイドラインに基づき、様々な対応をしました。
具体的には4月8日に2か月間クラブ競技をはじめとした各種イベントの中止を発表し、消毒やマスク着用はもちろん、レストランや浴場の閉鎖など数十種類に及ぶ感染拡大防止策を実施。特に鎌倉カントリークラブと鎌倉パブリックゴルフ場は東京から約60分と近く、東京・横浜のベッドタウン大船駅が最寄り駅ということで感染のリスクが高いと指摘される可能性があるので、やるべきことはすべて実施しました。


―経営されているゴルフ場の来場者数や営業的な数字はこのコロナ禍でどのように推移しましたか

 鎌倉カントリークラブは、鎌倉やその近郊にお住いの平均年齢約70歳のメンバーに支えられているゴルフクラブです。比較的年齢が高い方がアクティブに使われていましたので、来場者数がかなり落ち込むと思いましたが、ステイホーム期間中に運動不足による他のリスク回避のためのウォーキング等が推奨されたこともあり、予想より多くのメンバーにご利用いただきました。しかしレストランの閉鎖で飲食収入の激減とメンバー以外のビジター来場者の減少により、4月~6月の3カ月間で売上が前年比約40%減となってしまいました。

鎌倉パブリックゴルフ場は、その名の通りパブリックということでメンバーシップではなく誰にでも気軽に予約ができるゴルフ場です。このゴルフ場では普段、初心者講習会やゴルフ合コンからオープンコンペや競技会などゴルフ初心者からベテランまでお楽しみいただける様々な企画を実施しています。しかし緊急事態宣言後はすべて中止や延期。また需要が多かった企業様などによる平日貸切を含むコンペもすべて中止になってしまいました。通常のスタート時間以外にも期間限定で午後のスループレーの実施やホームページやSNSなどを活用したコロナ対策の見える化や特別プランといった形で集客に努めましたが、売上的に大きかったコンペや様々なイベントの中止、レストランの閉鎖による飲食収入の激減により、4月~6月の3カ月間の売上は前年比約60%減となっています。


―来場者、売上の面からも梅雨前までの春のゴルフシーズンを失ったのはやはり大きかったでしょうか

 朝日観光が経営している3つのゴルフ場は、昨年の秋、関東地方をはじめとする広い地域に災害をもたらした台風15号と19号によって1億円以上の被害を受けました。
その復旧作業を春のシーズンに何とか間に合わせるためかなりの予算を投下。メンバーやビジターに快適なラウンドを楽しんで頂きつつ、ゴルフ場としても4月、5月のコンペが多く入る繁忙期で取り戻そうと思った矢先のこのコロナ禍。
この状況が急に好転することはなく、今後ずっと続いていく最悪の可能性を想定し、何ができるかを常に考え、できることをスピーディーに実行しています。

資金的には厳しい状態が続きますが、当座は国や自治体からの持続化給付金や補助金、金融機関からの特別貸付を最大限活用し、なるべく早く安心できる状態にする予定です。
また経営的には、プレー者数を増やし効率的に運営するため、今まで踏襲してきた朝からハーフを回ってランチ。そしてまたハーフを回るプレースタイルにこだわらず、この状況と個々のプレイヤーにあった形の新たなスタイルを提案し、ゴルフ場の収益システムも変えていきたいと思っています。


―今後もこの状況が劇的に改善することはないと思いますが、どのような施策で生き残りを考えてらっしゃいますか

 具体的には、ハーフプレーやスループレーはもちろん、1ラウンドでは多いハーフだと物足りない方向けの12ホールプレーやショットガンスタートの恒久化の検討。また、フロントの完全無人化やゴルフ利用者以外のレストラン利用などプレー以外の部分でもホスピタリティ的な面と営業面をフォローできる施策の検討も始めています。

集客についても都心から約60分という好立地を最大限活かすため、送迎サービスやリモートワーク/ワーケーションに対応できる環境作り。また、住宅地にも隣接しているということでゴルフに拘らず、地域の皆様に還元できるようなプランも用意していく予定です。
ゴルフ場という枠に捉われず、都心に近く住宅地に隣接している身近な“超開放空間”のリゾートとして個々の楽しみ方で利用して頂けるような”場“を作り上げていきたいです。

■鎌倉カントリークラブにおける来場者数推移

<メンバー>
 4月前年同月比40%減少
 5月前年同月比27%減少
 6月前年同月比6%減少

<ビジター>
 4月前年同月比47%減少
 5月前年同月比36%減少
 6月前年同月比36%減少


VictorySportsNews編集部