2006年の高校生ドラフト1巡目で、青森の光星学院高校から入団した坂本。2年目からショートのレギュラーとして活躍し続けるジャイアンツ生え抜きのスーパースターである。

“今見られるレジェンド”ともいえる坂本だが、栄光のV9を達成している伝統球団の長い歴史の中でベストナインに入ることはできるのだろうか?

ふと思ったこの疑問を検証すべく、生え抜き選手オンリーでベストナインを作ってみた。もちろん独断なので、多々異論はあると思うが、ひとまずご覧いただきたい。

まずは、投手。
沢村栄治、堀内恒夫、江川卓(いろいろあったが生え抜きという認識)、上原浩治に現エースの菅野智之など、そうそうたるどころか神々しい名前が並ぶが、藤本英雄と斎藤雅樹の一騎打ちか。個人的にはオンタイムで見ていた11試合連続完投勝利の斎藤だが、プロ野球初の完全試合達成投手、シーズン防御率0.73、1シーズン19完封など数々のプロ野球記録を持ち、監督まで務めた藤本に軍配が上がりそう。

続いて捕手だが、ここは現2軍監督の阿部慎之助で決まりか。V9時代の正捕手、森祇晶という意見もあるだろうが、通算2132安打、406本塁打とバットでも貢献した阿部だろう。

一塁手は、通算868本塁打の“世界のホームラン王”王貞治。打撃の神様、川上哲治は相手が悪かったと諦めるほかない。

二塁手では、首位打者2回の篠塚和典、守備の名手・千葉茂、V9戦士の土井正三の名前が上がる。プロ野球界初の引退試合が行われるなど、ファンにも愛されたという千葉、V9を支えたいぶし銀の土井もいいが、三遊間へ運ぶ職人技の流し打ちと華麗なフィールディングが記憶に残る篠塚を推したい。

三塁手は長嶋茂雄。プロ野球ファンのみならず日本国中に愛されるキャラクターは、現監督の“元祖若大将”原辰徳をもってしても及ばない。

そして、遊撃手は坂本のほか、通算533本の犠牲バント世界記録を持つ川相昌弘がいる。“日本のジーター”と“和製オジー・スミス”の対峙だが、2016年にセ・リーグ初のショートでの首位打者獲得など、やはり打撃面でもチームを牽引する現キャプテンで決まり。

外野手は、シーズンによりポジションが移動するなど流動的なので、まずは選手をピックアップしてから、3つのポジションを振り分けたい。選手は戦前から活躍する中島治康、青田昇に、V9時代の柴田勲、高田繁、さらに近代の松井秀喜、高橋由伸が候補か。

成績でみると、打点王4度にプロ野球初の三冠王である中島、ホームラン王5回の青田(内3度は大洋時代)、在籍10年で332本塁打、MVP3度の松井になりそう。盗塁王6度の柴田、ベストナイン4度の高田、ベストナイン2度の高橋は少し及ばないか。

3人を外野のポジションに振り分けると、右翼手に中島、中堅手が青田。松井はヤンキース時代は左翼手として出場が多かったので左翼手にしたい。


決まった9人を打順にして並べてみると、以下の通り。

1番(ショート)坂本
2番(セカンド)篠塚
3番(ファースト)王
4番(サード)長嶋
5番(レフト)松井
6番(センター)青田
7番(キャッチャー)阿部
8番(ライト)中島
9番(ピッチャー)藤本

当然と言えば当然だが、ものすごいラインナップ。そのオーダーに坂本が入っていても何も違和感がないのは、やはり坂本は既にレジェンドなのだと実感する。

ちなみに個人的には、ケガに泣いた天才打者、吉村禎章をライトに、センターは“青い稲妻”松本匡史、そしてピッチャー・斎藤、サードは原です。

9月に千葉ロッテへと移籍して大活躍の澤村拓一、北海道日本ハムで飛躍した大田泰示ら、他球団へ行ってもやはり気になる“巨人(うち)の子”感覚。そんな生え抜き選手がかわいいファン目線で独自に選んだ、ジャイアンツの生え抜きベストナイン。

もちろん異論反論はあると思うが、このラインアップを選んでいる時間はものすごく楽しい時間だった。秋の夜長、時間があればみなさんもマイベストナインを選んでみてください。


※敬称略。データは10/5現在


越智龍二

1970年、愛媛県生まれ。なぜか編集プロダクションへ就職したことで文字を書き始める。情報誌を中心にあらゆるジャンルの文字を書いて25年を超えた。会ったら緊張で喋れない自分が目に浮かぶが、原監督にインタビューするのが夢。