Jリーグでは、アルビレックス新潟に所属していたファビオとペドロ・マンジーが9月17日に新潟市内で酒気帯び運転の疑いで検挙。道路交通法違反で書類送検され、10月19日に契約解除された。ベガルタ仙台に所属していた道渕諒平は交際女性とのトラブルが発覚し、10月20日に契約解除。ガンバ大阪に所属しているアデミウソンも10月25日に飲酒運転で接触事故を起こし、捜査終了後に処分が決定されることになっている。

 プロ野球でも、埼玉西武ライオンズに所属する佐藤龍世と相内誠が新型コロナウイルス感染拡大防止のため球団が不要不急の外出を禁じていた4月12日に外出し、佐藤の運転する自動車が法定の最高速度を大幅に超過する速度で走行したことで8月に起訴された。この問題を受け、球団は両選手に無期限の対外試合出場禁止、ユニフォーム着用禁止処分を下した。相内はシーズンオフに戦力外通告を受け、佐藤の処分も当面の間、継続するものとしている。

 プロスポーツ選手の不祥事の数を競技ごとに比較するのが適切かどうか分からないが、他の競技と比べるとプロゴルファーは不祥事が少ないように思える。2020年はほとんどの試合が無観客開催となり、試合のたびにPCR検査を受けたり、家族やマネジャーも試合会場に入れなかったり、ストレスの溜まりそうな対応を余儀なくされたが、目立った不祥事はなかった。

 ただ、プロゴルファーの不祥事が過去にもなかったかというと、そんなことはない。2019年10月には女子プロゴルファーの笠りつ子がツアー会場でコース関係者に暴言を吐き、厳重注意と新人セミナーの受講義務措置を受けた。2018年5月には男子プロゴルファーの片山晋呉がプロアマ戦のゲストに不快な思いをさせ、制裁金と厳重注意処分を受けた。

 女子プロゴルファーの黄アルムは2014年1月に自らが運転する自動車で男性をはねて死亡させる交通事故を起こし、自動車運転過失傷害の現行犯で逮捕された。男子プロゴルファーの石川遼は日本国内で無効の国際運転免許証で乗用車を運転し、2011年6月に道路交通法違反の無免許運転容疑で書類送検された。

 世界に目を向ければ、タイガー・ウッズも2009年11月の交通事故を発端に不倫スキャンダルが発覚し、2017年5月には飲酒運転の疑いで逮捕される騒動を起こしている(本人は痛み止めの薬の飲み合わせが原因だったと釈明)。

 それでもプロゴルファーの不祥事が比較的少ないとすれば、その理由は何となく分かる。ゴルフは他のスポーツに比べ、始めるにも続けるにもお金がかかる。特にプロゴルファーを目指すレベルになると、年間数百万円の出費が必要になると言われる。ある程度、恵まれた環境で育っていないと、プロゴルファーを目指すことができないのだ。端的に言えば、育ちがいい選手が多い。

 しかし昨今は、男子と女子で事情がだいぶ変わってきた。男子プロは相変わらず育ちがいい選手が多い印象があるが、女子プロは一般家庭育ちの選手もかなり増えている。その要因として考えられるのは、宮里藍や横峯さくらがゴルフに熱心な父親の指導でトッププロに上り詰めたこと。古閑美保、上田桃子、有村智恵などのジュニア時代を指導した坂田塾の存在など指導者の貢献もあるだろう。

 なぜ女子選手が一般家庭からプロゴルファーを目指すかと言えば、プロスポーツ選手として最も稼げる競技がゴルフだからである。上田は小学生時代、水泳で全国大会に出場したこともあるが、家計を助けるためにプロで稼げるゴルフを選んだという趣旨の発言をしている。古閑はプロ野球選手になることを本気で目指していたが、周囲の勧めでゴルフに転向した。最近で言えば、渋野日向子も小学生時代はソフトボールとゴルフを両立していたが、中学生になってからゴルフに専念している。

 これが男子になると、ゴルフがプロスポーツ選手として最も稼げる競技というわけではない。もちろん、松山英樹や石川遼などのトッププロはプロ野球選手やプロサッカー選手に匹敵するほど稼いでいるが、人数の割合で比べると、野球やサッカーのほうが大金を稼げる可能性が高い。

 したがって、一般家庭育ちの選手が小学生時代に野球とゴルフを両立し、どちらの競技でも頭角を現すと、ほとんどの場合は野球を選択することになる。野球はチームの勝利に貢献することでみんなから喜ばれるし、活躍すると特待生として学費免除で高校や大学に進学できる可能性もあるからだ。

 だが一方で、チームスポーツで1人の選手の力が勝敗を左右するようになると、驕りや慢心が生じやすい。今は野球でもサッカーでも1人の選手が勝敗を決めるほど力を発揮するのは至難の業だが、それでもチームの勝利に対する貢献度が大きい選手であれば、プレー以外の部分は大目に見ようという判断になりがちだ。それが不祥事のきっかけになったりする。ゴルフの場合、団体戦でも1人の力だけでチームを勝利に導くことはできないし、1人の選手に対する周囲の大人の目が多いため驕りや慢心が生じにくい。

 また、プロ野球やプロサッカーと違い、プロゴルフは朝昼型の興行でナイターがない。しかも試合会場が自然に囲まれており、都市部から離れているケースが多い。したがって夜の繁華街に繰り出したりする機会もあまりない。そういった競技特性や選手の育った環境により、もしかしたら他のプロスポーツよりも不祥事が少ないのかもしれない。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。