若い人たちがゴルフを始める動きが活発化したのは、2003年に宮里藍が「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント」でアマチュア優勝を果たし、プロ転向したとき以来かもしれない。彼女の活躍がきっかけでゴルフを始める若い女性が増え、若い女性につられて男性ゴルファーも増えた。その後、2007年に石川遼が「マンシングウェアオープンKSBカップ」でアマチュア優勝したことで、その流れが加速した。

ところが、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災を機に、若者のゴルフ熱は失われていった。宮里藍や石川遼みたいになりたいとプロを目指すジュニアゴルファーは増えたが、社会人になってからゴルフを始める若い人たちは減ってしまった。

堅苦しい“ドレスコード”

2000年代にゴルフを始めた若い人たちがなぜやめてしまったのかというと(全員がやめたわけではなく今でも続けている人は一定数いるが)、ゴルフの上達に時間とお金がかかり過ぎることに加え、ゴルフにはドレスコードをはじめとする特有の堅苦しさがあることも要因の一つだった気がする。

当時は若手選手の台頭によりゴルフ業界が一気に華やかになり、おしゃれなデザインのゴルフウェアも次々と開発されたが、プロゴルファーが試合で着用した際に「ゴルファーとしてふさわしくない」と批判を受け、着用が禁止されるケースもあった。女子選手で言えばミニスカートやヘソ出しルックも当初は物議を醸した。男子選手で言えばTシャツのように見える襟なしの上着や迷彩柄、カーゴパンツやデニムパンツが批判の対象となった。

プロゴルファーはファンに見られるのが商売なので、服装にそれなりのドレスコードが必要なのは分かる。でも、アマチュアゴルファーにとってゴルフはレジャーなのだから、そんなに堅苦しいドレスコードは必要ないのではと思う。実際、ドレスコードを廃止し、Tシャツやジーンズなど気軽な服装でラウンドできるコースもある。静岡県のベルビュー長尾ゴルフ倶楽部は2015年からドレスコードを撤廃。「服装で悩むよりコース戦略で悩んでください」というのがキャッチフレーズになっている。神奈川県の茅ヶ崎ゴルフ倶楽部も2020年から「日本一カジュアルでフレキシブルなコース」を目指し、ドレスコードなしで運営を行っている。海に近い立地条件ということもあり、ビーチサンダルでのプレーもOKなのは画期的だ。しかも、そのコースを運営するのが日本最大級のゴルフポータルサイトGDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)であることも興味深い。

一方で、こういった考えを持つゴルフ場が依然として少数派であることも事実である。日本のほとんどのゴルフ場は襟つきシャツにジャケットを着用してクラブハウスに入り、シャツの裾はタックインして短パン着用時はハイソックスを履くというドレスコードが採用されている。その理由はいくつかあって、まず日本のゴルフは英国から伝わっており、英国式のドレスコードが採用され、右にならえで全国に広まっていったこと。そして、一度決めたことに対して柔軟に対応するのが苦手な国民性も影響しているのかもしれない。

でも、英国で短パン着用時にハイソックスを履くのはコース内にゴース(ハリエニシダ)が生い茂っており、針のようなトゲから身を守るためと言われている。日本のように高温多湿の地域で涼しくプレーしたいから短パンを着用しているのに、ハイソックスを履かなければならないのはナンセンスだろう。

画一的な運営スタイル

ただ、ゴルフ場のドレスコードがナンセンスだとしても、ドレスコードを決める権利はゴルファーにはなく、そのゴルフ場およびゴルフ場のメンバーが決めることであるという点が悩ましいところである。そうであるならば、ゴルファーができることはカジュアルな服装を推奨するゴルフ場にどんどん足を運ぶことかもしれない。

たとえば寿司を食べに行く際、Tシャツ、短パン、サンダルで行きたければ気軽に入れる回転寿司のチェーン店を選ぶ。仕事の取引先と商談を兼ねた会食であれば、ミシュランガイドで星を獲得するような高級寿司店に予約を入れ、そういう店を訪れる際はTシャツ、短パンではなくスーツやジャケットを当然のように着用する。それがゴルフ場の場合、大した格式もないのに高級寿司店のような風格を出そうとする施設が多く、ユーザーの選択肢を狭めている。

日本には2000コース以上のゴルフ場があり、そのうちの8割以上がメンバーシップコースだが、厳格にメンバー優先の運営を行っているゴルフ場はほんの一握りである。ほとんどのメンバーシップコースはビジターの集客で収益を作っている。それであれば、ドレスコードも含めてビジターが来場しやすい運営スタイルをあらためて考える必要があるだろう。

たとえば若い人たちがマイカーを所有するのではなくカーシェアリングを活用する時代になっているのであれば、ゴルフクラブも所有ではなくシェアリングのほうがプレー頻度の少ない若年層にとって便利かもしれない。ゴルフクラブだけでなくゴルフウェアをシェアリングするという発想だってありそうだ。ゴルフ場のロッカーの中に自分の体格に合ったゴルフウェアがクリーニング店から戻ってきたときのような状態で置いてあり、そのウェアに着替えてプレーする。プレー終了後は着用したウェアをロッカーに置きっぱなしにして帰る。そんなサービスがあったら利用してみたいゴルファーは一定数いるはずだし、ゴルファーもゴルフ場もドレスコードのことなど気にする必要もなくなる。

そういった発想でゴルフ場の運営スタイルを見直せば、今まで画一的だった日本のゴルフ場が多様化され、独自の特徴を持ったゴルフ場が次々と誕生すると思う。ゴルフ場の選択肢が増えれば、ゴルフに魅力を感じる人がさらに増えるだろう。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。