3人のレギュラー級を獲得した打線は、昨シーズンから大きく変更されそう。「1番梶谷、2番坂本、3番丸、4番岡本」と、原監督が梶谷&井納の入団会見で語った理想のオーダー。それがそのまま開幕オーダーとなり、契約金600万ドル超の2年契約を結んだスモークも余程の理由がない限り使うだろうと考えると、1番(右翼)梶谷、2番(遊撃)坂本、3番(中堅)丸、4番(三塁)岡本、5番(一塁)スモーク、9番投手が基本のオーダーとなりそう。つまり、残っているのは6~8番を担う左翼、二塁、捕手の3ポジションのみ。

 昨シーズンはウィーラー、亀井、重信らが守った左翼は、新外国人のテームズが候補筆頭。韓国プロ野球に在籍した3年間で.349、124本、OPS1.172を記録して“神”と崇められた男は、MLBに復帰した17年に31本塁打を放つなど、メジャーでも通算96本と実績は申し分なし。ただ、メジャーでは対左投手の打率が通算で.196のプラトーンプレイヤーで、外野も守れるとはいえメジャーでは一塁がメインだったため、守備面での不安も。テームズが機能しなかった場合は外国人枠の問題があるウィーラーではなく、梶谷に右翼のポジションを追われた松原が浮上。そのほか亀井、重信、石川に加え、昨シーズン後半から打撃が光る若林、楽天時代以来2度目の支配下登録が叶った八百板、電撃トレードで獲得した外野も守れる広岡の台頭があるかも。

 二塁は昨シーズン自身初の規定打席到達を記録した吉川が最有力。2014年の片岡以来となる同ポジションでの到達となったが、原監督からOPSの低さを指摘されるなど、レギュラーの座は確約されていない。スローイングに難がある守備面、そして打撃面でさらなる上積みがないと、監督がパワーを評価する北村、走塁面で上回る増田大、打撃のいい若林らに逆転されるかもしれない。

 そして最も熾烈な争いになりそうなのが、捕手の1枠。打撃に加え守備でも成長して昨シーズンの主役を担った大城に対し、度重なるケガに泣いた小林が正捕手奪回に燃える。日本シリーズでスタメンに抜擢された岸田、安定した成績を残す炭谷も含めた他球団がうらやむ“四つ巴”は、シーズンを通して展開されそう。負担の多いポジションだけに併用もあると思うが、正捕手を求めているとされる監督の希望するレベルに届いた1人がその座を掴むことになるだろう。

 それらを踏まえ、開幕戦の相手先発が右投手になりそうなことも考慮すると、開幕スタメンは以下が有力か。

1(右翼)梶谷
2(遊撃)坂本
3(中堅)丸
4(三塁)岡本
5(一塁)スモーク
6(左翼)テームズ
7(捕手)大城
8(二塁)吉川
9 投手

 ただ、日本球界が初めての外国人はやってみないと分からないのがリアル。オープン戦でスモークが大型扇風機となった場合は、通算2000本安打を目指す中島や亀井、陽のベテラン、育成契約からの復活を期する山下、さらには驚異のスイングスピードで評価急上昇の高卒新人、秋広が控える。また、テームズが一塁に回った場合は、左翼で松原、若林のスタメン昇格もありそうだ。

 一方で長びくコロナ禍の現状を考えると、スモーク&テームズの2人は開幕に間に合わない可能性も大いにある。その場合、既にチームへ合流しているウィーラーが昇格し、左翼はウィーラーか松原、若林、一塁には中島か亀井、ウィーラーが緊急配備されるだろう。

投手陣の先発ローテーション予想

 大エースの菅野が残留したことが最大の“補強”ともいえる投手陣の先発ローテーションはどうだろう。原監督が既に開幕2戦目での登板を通告しているという戸郷、日本球界1年目となった昨シーズンからの上積みが期待されるサンチェスに、もちろん菅野は確定か。さらに、監督が古巣相手の開幕3戦目に投げさせられたら理想と語った井納、昨シーズン終盤にローテに定着した畠、今村が期待度80%の第2グループというところか。左腕の今村はメンバー構成上、他の左腕が入らない限り有利だろう。

 以下は、デラロサやビエイラもいる外国人枠&合流時期との兼ね合いになるメルセデス、高い奪三振率を誇る高橋、2019年シーズンに8勝を挙げた桜井、2020年ドラフト1位の平内、復活を期す野上が控える。加えて、育成契約になったものの昨シーズン3試合に先発した直江、3年目の飛躍が期待される横川、最速147キロ左腕の井上らの若手らの第3グループが腕ぶす。

 第2・第3グループの差は大きくなく、両グループ合わせた11人の中から、6人が予想される開幕ローテーションの残り3枠を構成するはずだ。

(当確)菅野、戸郷、サンチェス
(有力)井納、畠、今村
(期待)高橋、桜井、メルセデス、平内、直江、横川、井上、野上

 現状、上記の序列と予想するが、当確以外はオープン戦の結果次第で簡単に入れ替わりそうなので、開幕までの1か月の競争から目が離せないところ。

 昨シーズンは“動く采配”でベンチ入り選手をフル活用し、リーグ連覇を果たした原監督。今シーズンは打者は規定打席に6~7人が到達、先発は120~130イニング到達を5人くらいが理想だと語っている。

 選手はレギュラー&ローテを掴まないと出番が大幅に制限されるかもしれないという状況のなか、個人事業主として生活をかけた戦いが始まる。その戦いのレベルが上がれば上がるほどチーム力が上がるのはもちろんで、その先にある悲願の日本一へ向け、超大型補強がもたらす過去最高レベルのスタメン&ローテ争いに期待したい。


※敬称略。データは3/1現在


越智龍二

1970年、愛媛県生まれ。なぜか編集プロダクションへ就職したことで文字を書き始める。情報誌を中心にあらゆるジャンルの文字を書いて25年を超えた。会ったら緊張で喋れない自分が目に浮かぶが、原監督にインタビューするのが夢。