東急や伊藤園、ユーグレナといった有名企業がパートナー契約するJ7クラブ
まず紹介するのが、東京都社会人サッカーリーグ1部(J7相当)に所属するSHIBUYA CITY FC。最近では、社会人サッカークラブに元プロ選手が所属していることは珍しい光景ではなくなってきたが、日本代表に召集された選手が所属しているクラブはそこまで多くない。2019年、名古屋グランパスやヴァンフォーレ甲府で活躍し、日本代表にも選出された阿部翔平選手が、当時東京都社会人サッカーリーグ2部(J8相当)に所属していた同クラブに加入するというニュースを見て驚いたサッカーファンも多いのではないだろうか。筆者自身も阿部選手の加入から同クラブを注目しているが、競技面は勿論のこと、事業面での活動が非常に面白い。
昨年8月、バイオテクノロジー企業「ユーグレナ」とパートナー契約を締結。今年の3月、石垣島ユーグレナの継続摂取自律神経バランスの調整に寄与し、運動パフォーマンス向上に繋がる可能性を示唆する研究結果を発表した。また同月、東急株式会社ともパートナー契約を締結。東京都にはJ1やJ2クラブなど、カテゴリーの上のクラブが多くあるにもかかわらず、東急という大企業がJ7相当のクラブをパートナーに選んだ。
締結にあたり、東急株式会社執行役員の東浦亮典氏は、「SHIBUYA CITY FC様と協力して、地域にお住いの方、働かれている方、遊びにきている方など多様な来街者に向け、地域と一体となり、更なる街の賑わいや楽しさを共に提供できればと考えています」と語っているが、このクラブにそれほどのポテンシャルを感じている、ないしは感じさせたクラブ関係者の動きは、サッカーだけでなく日本のスポーツ界が注目すべき動きだ。更に今月、“世界のティーカンパニー”を目指す伊藤園ともパートナー契約を結ぶなど、事業面での動きが非常に目立つ。
このような動きを見ても、クラブのカテゴリーが低いからパートナー契約が厳しいという時代は終わったのではないか。SHIBUYA CITY FCのように地域密着は勿論のこと、その他の部分でソリューションを提供できるクラブが今後増えることで、日本サッカー界が更に盛り上がる可能性があると感じている。
J1やJ2クラブ超え!3,197万円をクラファンで調達したクラブも
次に紹介するのが、神奈川県社会人サッカーリーグ2部(J8)に所属する鎌倉インターナショナルFC。鎌倉発のこのクラブは設立から4年目のクラブだが、クラブコンセプトは「CLUB WITHOUT BORDERS」、徹頭徹尾国際化を意識したクラブという特徴がある。そんな同クラブが昨年12月、自前でサッカースタジアムを、サッカー不毛の地と言われる鎌倉で建設するというプロジェクトを発表した。内容は、鎌倉市役所本庁舎移転などを含めた大規模開発を見込んで、総工費1億円のスタジアムを建設するというものだ。
J8のクラブが3,000万という目標を立てた際は、達成できるか否か半信半疑の声が上がった。しかし、結果的には80日間で目標を上回る3,197万円を達成した。内容を一概に比較することは出来ないが、同じくCAMPFIREでクラウドファンディングを行ったJ1の清水エスパルスが約1,500万、J2の東京ヴェルディが約2700万、レノファ山口が約1,700万の調達と考えると破格と言っても良いだろう。
同クラブ代表の四方健太郎氏は、「鎌倉のサッカー環境は決して良いとは言えない状況なのです。ただ、現状に文句を言うのではなく、『無いものは作ろう』とポジティブに、主体的に課題解決に取り組もうとした結果、地域の方々を中心に支援の輪が拡がっていったのではないかと思います。ありたい姿である“ビジョン”を示し、それを情熱を持って伝えることによって、皆さんの心に火を付けることができたのではないでしょうか。」と本プロジェクトの達成理由を語る。
スタジアムは今後、クラブの練習拠点としてだけでなくスポーツ、イベント会場として一般の人も利用可能になる予定だ。クラブ担当者は、3年間のグラウンド使用人数を15.6万人、平成30年実績数値(鎌倉市一人当たりの日帰り観光消費額6,243円)から試算すると、3年間でおよそ10億円もの消費を新しく生み出せると予想。単なるスタジアムではなく、鎌倉が新型コロナウイルスで受けた影響を少しでも補うことに繋げ、街を再び元気にし、さらなる賑わいを生み出すと語った。
この2クラブ以外にも、元プロ選手が集結し、新国立競技場をホームスタジアムにしようと動いているクリアソン新宿。発起人が本田圭佑氏で、クラブ経営メンバーをオンラインサロンで募っているEDO ALL UNITEDなど、興味深い動きを見せている社会人クラブが増加中だ。競技面だけがフォーカスされていた日本サッカー界だが、事業面でも更に進化していくことが今後の成長には欠かせない。