=創設30周年の弾みへ=

 G大阪の小野忠史社長はクラブを通じて発表したコメントで、「現時点において、条件面を含めG大阪が求める監督がマッチしなかったこと」「松波監督体制において、チャレンジングな試合内容へと変化しつつあること」などと理由を説明した。

 今季は宮本前監督の解任直前まで、リーグ戦は1勝5敗4分け。ゴールはわずかに3点と、開幕直後の3月にトップチームで起きた新型コロナウイルスの集団感染による影響を差し引いても、惨たんたる内容だった。関係者によれば、チームは内部分裂状態にあったといい、小野社長の「松波監督体制におけるチームの団結力が日々向上していること」という説明は、その裏返しとも言える。5月8日の川崎戦で、2点を追う後半ロスタイムにGK東口がコーナーキックで攻撃参加したのもその一例だろう。数々のビッグセーブで孤軍奮闘してきた存在として、チームへの何かしらの思いを行動に移して表現しているように映った。

 松波監督の就任後も2連敗スタートとなったが、5月27日のホーム徳島戦で苦しみながらも2ー1で勝利。勝ち越しゴールを挙げた宇佐美は「今季1点目を取った時も、今までのゴールで一番うれしかったというか、ベスト3に入るゴールと言ったが、きょうのゴールもそういうゴールになった」。リーグ戦8戦ぶりの白星で長いトンネルから脱すると、その後は1勝1分けと負けなしで中断期間へ。順位もJ2降格圏を何とか脱する16位まで浮上した。

 「オリジナル10」でもあるG大阪にとって、今季は特別なシーズンでもある。1991年のクラブ創設から30年の節目。クラブでは、J1リーグやアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)など、これまで獲得してきたタイトル数にちなんだ「9」のプロジェクトを含む30周年事業を立ち上げ、その第一弾として、クラブ初のクラウドファンディングを春に実施すると、多くの反響を呼んだ。

 30周年オリジナルグッズ(非売品)や、選手が試合や練習で使用したサイン入りグッズ(5万円)などを返礼品としたラインアップは好評で、30万円の「パナソニックスタジアム吹田メインピッチ使用権(2時間)」や、10万円の「サイン入り30周年記念マッチ公式球」が完売するなど、目標金額の5000万円をはるかに上回る6517万7000円の支援額が集まった。チームが低迷し、同様に苦しい思いでいたファン・サポーターからのこうした熱い支援は、何よりも心強い支えとなっただろう。こうしたファン・サポーターの思いに、チームは結果で応えていくしかない。

 また今年は、スポーツ界の将来を担う人材の育成を目指して、「G大阪サッカービジネスアカデミー」を4月に開講した。サッカーや他競技などの運営に関わる意思のある社会人や行政関係者を対象としたもので、応募は今年2月に締め切れられたが、受講説明会には多くの参加希望が寄せられた。前期はJリーグ理事を務めた米田恵美氏や、G大阪OB選手の播戸竜二氏ら、各種業界の多彩な講師陣によるオンライン講座を中心とし、後期からは与えられた課題にグループワークで取り組み、秋に予定する最終プレゼンへと向かう流れだ。日本で初めて募金によって造られたパナスタでも、講義を行っていく。自身も講師として参加する小野社長は、クラブの公式ホームページで「G大阪が培ったノウハウと日本を代表するサッカー専用のパナソニックスタジアム吹田を活用し、スポーツで暮らしと街をワクワクさせる次世代サッカービジネスのスター人材を輩出したい」と抱負を述べている。

 話をチームに戻す。松波監督は、今回が2012年以来となるG大阪で2度目の登板だ。当時、セホーン監督の成績不振による解任を受けて、37歳のクラブ史上最年少でコーチから監督に昇格。だが、現実は厳しく、この年を17位で終え無念のJ2降格となった。元旦の天皇杯決勝で柏に敗れて退任が発表され、「僕自身の力不足。サポーターに申し訳ない」とわびた。J1の舞台の厳しさを知った。

 その後は、14~15年にJ3のガイナーレ鳥取の指揮を執り、4、6位と安定した成績を残した。16年にはC大阪U18のコーチも経験。前回よりは、確実に視野も広がり、戦術などの引き出しも増えている。「まだ改善の余地はある。ガンバのために責任を持ってやることに変わりはない」。同じ過ちを2度も繰り返せないことは、本人が一番分かっている。正式に続投が決まった後の湘南戦後の言葉に、その覚悟がにじんだ。

 振り返れば宮本前監督の就任も突然だった。18年7月に当時のクルピ監督の解任を受けての昇格が決まり、予定していた家族旅行を直前でキャンセルして重責を引き受けた。就任後は、怒濤の9連勝を飾るなど立て直しに成功。J2降格の危機からチームを救った。昨季は川崎にかなわなかったもののリーグ戦は勝ち点65の2位、天皇杯も準優勝。就任の経緯を考えれば、上々の成績を残したと言える。まだ44歳と若い。後を託した松波監督のように、武者修行に出て、一回りも二回りも成長してまた「監督」として戻ってくることを、ガンバサポーターも願っているはずだ。


VictorySportsNews編集部