同伴者2人はいずれも50代の男性で、タレントさんがゴルフをプレーする動画を視聴しているだけでなく、レッスン動画やギア選び動画などゴルフに関するあらゆる情報でYouTubeを参考にしているそうだ。ひと昔前は若い世代が純粋に動画を楽しむメディアと認識されていたYouTubeが幅広い世代に浸透してきたことを実感した。

YouTubeは2005年2月に米国で設立され、2006年10月にGoogleが16億5000万ドル(約2000億円)で買収して大きな話題に。日本でYouTubeが広まってきたのは2010年代に入ってから。YouTuberの代表格であるHIKAKIN(ヒカキン)が本格的な活動を開始したのが2011年で、そこからわずか10年で誰もが知る動画共有プラットフォームになった。

ゴルフに関する動画投稿が増えたのは、HIKAKIN含む著名なYouTuberのマネジメント事業を手がけるUUUM(ウーム)株式会社が2018年にゴルフ専門チャンネルのUUUM GOLFを開設したのがきっかけだった。これに続いてティーチングプロや動画クリエーターたちが次々とチャンネルを立ち上げた。

ちょうどそのころ、筆者は企業経営者の方にゴルフの話を聞く雑誌連載を担当していた。当時はYouTubeの話題よりも地上波の男女ゴルフトーナメントの話題やBS放送の人気番組「ゴルフサバイバル」(BS日テレ)の話題、CS放送のゴルフネットワークの話題が中心を締めていた。

ところが1~2年経つと50~60代の経営者の方から「MITSUHASHI TV」(日本プロゴルフ協会認定ティーチングプロA級の三觜喜一氏のYouTubeチャンネル)や「山本道場ゴルフTV」(ゴルフインストラクターの山本誠二氏のYouTubeチャンネル)の名前を聞くようになり、時代の変わり目を感じた。

プロゴルファー自身による情報発信

その後、2020年に入ってから新型コロナウイルスの流行によるトーナメント中断期間中にツアープロも次々とYouTubeチャンネルを立ち上げる。男子プロゴルファーの片山晋呉選手、谷原秀人選手、女子プロゴルファーの河本結選手、勝みなみ選手などのチャンネルが開設されていった。
そしてトーナメント中断期間明け初戦の女子ツアー「アース・モンダミンカップ」が2020年6月に地上波放送を取りやめてYouTubeでの無料配信に踏み切ったのもゴルファーのYouTube視聴に拍車をかけた。

その少し前、女子プロゴルファーの有志がインスタグラムで公式共有アカウント「ladygo.golf」を開設した。女子プロの素顔や試合以外の活動風景などを投稿し、2021年11月時点で4.5万人のフォロワー数と徐々に人気を集めている。

「インスタ映え」という言葉がユーキャン新語・流行語大賞に選ばれたのが2017年なので、インスタグラムという写真・動画共有SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が一般的に認知されたのがこの時期だった。こちらも最初は若い世代からはじまり、幅広い世代にとってのコミュニケーションツールとなり、企業やスポーツチームなども情報発信ツールの一つとして活用するのが一般的になっている。

女子プロゴルファーはほぼすべての選手がインスタグラムの公式アカウントを持っている印象がある。それを推進したのはJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)だ。公式写真エージェンシーのGetty Imagesの写真をインスタグラムの投稿に使用できるようにしたことで、選手たちの投稿が飛躍的に増えた。試合が終わるごとに優勝した選手や上位でフィニッシュした選手が投稿するため、選手の生の声を聞くためにファンもアカウントをフォローするようになった。

また、近年はSNSの普及によって、女子プロゴルファーだけでなく女子プロゴルファーを目指している選手にも注目が集まる時代になった。前述の「ゴルフサバイバル」の大成功により、BS放送とCS放送で女子プロゴルファー候補生が出演するゴルフ番組が急増した。彼女たちもインスタグラムで自らの情報を積極的に発信し、視聴者やファンと交流を深めている。

彼女たちはこれまでプロテストに合格できなくてもツアーの出場権を懸けたクオリファイングトーナメント(QT)で上位に入ればトーナメントに出場できたが、JLPGAの制度変更によりプロテストに合格しないとQTに出場できなくなった。

その制度変更の是非はさておき、ゴルフが上手なのにプロゴルファーになれない若手女子選手が増えており、その選手たちを応援したい企業やファンも増えている傾向が見られる。もしかしたら今後、彼女たちの中からYouTubeやインスタグラムを駆使し、ツアーで稼ぐ賞金よりも高額な収入を得る選手が出てくるかもしれない。

ツアープロやティーチングプロだけでなく、ゴルフメーカーやゴルフショップなども含めてあらゆるジャンルでYouTubeやInstagramを活用する時代になっており、ゴルファーがこれらのメディアを視聴・閲覧する時間は今後ますます増えそうだ。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。