プライベートでも親交が深い2人だが、こうしたイベントでともに登壇するのは、かなり久しぶりのことだという。そこで見えたのは、2人の意外なほど(?)近い関係性。“ほうじ茶色”でかぶった衣装に顔を見合わせて笑い、公の場であることから「中田さんは…」と切り出した前園氏に、中田氏が「さん付け、やめてくれる?」と突っ込むなど、軽妙なトーク、やり取りが冒頭から見られた。

 3歳の差がありながら「ヒデ」「ゾノ」と呼び合う2人。その出会いは1996年アトランタ五輪に遡る。「マイアミの奇跡」としてサッカー史に刻まれている、あのブラジル撃破の舞台となった大会に向けた日本代表合宿でのこと。相部屋となったことがきっかけで親しくなり、今や中田氏は「ゾノといると素に戻れる。永遠の兄貴」と言うほど。どこか共鳴するものが19歳だった当時からあった様子だ。以来、26年にわたって交流が続いており、昨年4月には中田氏がナビゲーターを務める「VOICES FROM NIHONMONO」(J-WAVE、毎週日曜12時~)で20年ぶりのラジオ共演を果たし、前園氏が大好きなスイーツの話題で盛り上がったこともあった。

 サッカーで一時代を築き、認め合う両名だが、前園氏は2005年5月に現役を引退。中田氏は06年のワールドカップ(W杯)ドイツ大会を最後にピッチに別れを告げた。その後、指導者に転身する一般的な道を選ばなかったところは共通するところ。中田氏は世界を旅してまわった後、09年からは日本全国の旅を開始。2000カ所以上の“現場”に足を運び、そこで出会った日本酒、伝統工芸など卓越したものづくりを行う生産者、世界に誇れる日本の文化など「にほん」の「ほんもの」を発信する「にほんもの」プロジェクトを推進。一方、前園氏はタレント活動や解説者などでお茶の間の人気者に。時に仕事をともにし、刺激し合う関係は続いており、最近では中田氏厳選の逸品を集めたオンラインストア「にほんものストア」に、前園氏はスイーツを紹介する「スイーツマスター」という形で協力している。

 今回の発表会での共演は、まさにその「にほんもの」の縁で実現したものだった。「加賀棒ほうじ茶」のリニューアルを「にほんもの」が監修。中田氏は「食事がより楽しく、美味しくなる」ことをテーマに、石川県の老舗製茶店「油谷製茶」、「ポッカサッポロ」と商品開発を行った。前園氏は「スイーツマスター」として「加賀棒ほうじ茶」に合うスイーツを紹介するべく、今回のイベントに出席。「すっきりした味わいなので、どら焼きや僕の好きなプリンの中でも濃いビターなカラメルソースが入ったものに合うと思う。『にほんものストア』で販売されている鹿児島の黒糖ナッツと合わせても、すごく美味しかったですね」と、オリジナルなペアリングを提案した。

「加賀棒ほうじ茶」のリニューアル発表会で実現した貴重な2ショット

「妥協しない、ぶれない姿勢は現役の頃のサッカーに対する気持ちと一緒」

 前園氏は「ヒデとは仕事でもプライベートでも、ちょくちょく会っている」と明かし「彼が仕事において見えない部分にも妥協なく、こだわり抜いてやっているのを知っています。今回の企画もずっと話を聞いていたので、大事なイベントにこういう形で呼んでいただいて、うれしく思っています」と語った。その言葉通り「加賀棒ほうじ茶」の開発にあたって、中田氏はかなりの「こだわり」を見せていた様子で、「お茶というのは美味しさを追求するあまり、どうしても“重さ”が出てしまう。美味しいものをつくる一方で“軽さ”を出すのはとても難しいのですが、今回は美味しさを感じる香りを残しつつ、軽い味わいに仕上がっています。そこは妥協できなかった」と説明。リクエストを受けた油谷製茶の油谷祐仙代表取締役も「大変厳しかった。中田さんがこだわればこだわるほど、私も職人根性を燃やしました」と述懐するほどだ。

 さらに、前園氏は「ヒデはストイック。美味しいものを選ばなければというプレッシャーがある」と、ともに“仕事”をする大変さを口にしたが、それだけこだわりのある中田氏が、自身のプロデュースするWEBサイトの重要なコンテンツを任せる辺りに信頼がうかがえる。今年1、2月には四国地域のNHK総合で放送されている前園氏の番組「しこく絶景旅」に中田氏が友情出演。「ゾノヒデ自転車しこく旅」として全国放送され話題を呼ぶなど、お互いの仕事での“共演”も増えてきている。

 また、前園氏は「若くして海外に出て、もともと彼自身は海外のことをよく知っている一方で日本のことはあまり知らなかった。そこで旅が始まっている。すごいのは、とにかく自分の足で実際に体感して伝えていくところ。その姿勢には頭が下がります。四国の旅でも5年以上まわっている僕以上にいろいろなところを知っていましたから。自分の興味があることには一切妥協しない、ぶれないでやっていく姿勢は現役の頃のサッカーに対する気持ちと一緒。それが、今の『良いものを世界に知ってもらう』という活動につながっているのかなというのは改めて感じます」と中田氏への強いリスペクトを強調。「『どこどこのスイーツが美味しかった』と伝えると、ヒデは次の日には行っている。気になると、すぐ動いて、自分で店まで買いに行く。その辺りは見習わないといけない。自分もアンテナを張りながら、より本当に美味しいものをたくさんの方に、にほんものストアで知っていただけるよう商品を選んでいきたいなと思います」と続けた。

 「しこく旅」での共演にしても、前述のラジオで中田氏が「普段は僕の旅をJ-WAVEで流しているけど、今度はゾノの旅に付き合ってみたいね。一緒に行って、ゾノ目線と僕目線のどっちが良いか…とか」と提案したことが発端だった。仕事も遊びもストイックにこだわり抜く中田氏と、中田氏が思わず張り合いたくなるほど、厳しいリクエストにもしっかりと応えてみせる前園氏。キラーパスに反応してゴール前に走りこむ-。そんな司令塔とアタッカーのような良き関係性が、現役を引退した今も続いているといえそうだ。


【加賀棒ほうじ茶とは】
ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社が2015年より販売しているTOCHIとCRAFTシリーズのペットボトルドリンク。「にほんもの」監修のもとリニューアルされ、2022 年 3 月 14 日に発売。「にほんもの」と石川県の老舗製茶店「油谷製茶」、 ブランドの展開を通して地域の魅力を全国に伝えてきた「ポッカサッポロ」の3者が共鳴し、共同開発された。中田氏自身も何度も試飲を重ね、石川県特有の焙煎技法である加賀棒茶の美味しさが伝わる商品となっている。価格は525mlが税別140円、275mlが同115円。

TOCHIとCRAFTシリーズ「加賀棒ほうじ茶」。「にほんもの」監修のもとリニューアルされた「NIHONMONO」サイトポッカサッポロ「TOCHIとCRAFT」サイト

VictorySportsNews編集部