173センチの宇良、168センチの照強が土俵を沸かす!

 土俵に熱気が戻ってきた。2016年は5場所連続で満員札止め。11月場所2日目に満員御礼は86日連続で途切れてしまったが、2010年に発覚した野球賭博問題、八百長問題等の影響で、まさに“土俵際”まで追い込まれていた相撲人気もようやく回復基調に。1990年代、666日連続満員御礼を記録するなど空前のブームを巻き起こした若貴(ともに横綱までのぼり詰めた若乃花、貴乃花兄弟)時代を彷彿させる熱さが戻りつつある。

 稀代の大横綱である白鵬をはじめとするモンゴル出身の3横綱が安定しており、昨年1月場所で日本出身力士として10年ぶりに優勝を果たした琴奨菊、9月場所で賜杯を抱いた豪栄道、そして18年ぶりの日本出身横綱となった稀勢の里といった日本人力士の活躍への期待も高まっている。幕内にはキャラの立つ力士が多数揃い、見応えのある取組が多くなった。協会や力士たちもSNS等を使って積極的に情報発信しており、若い世代のファン、特に「スー女」と呼ばれる女性ファンが急増中だ。さらに人気に拍車を掛けたのが、昨年あたりからじわりじわりと台頭してきた小兵力士の活躍である。

 その先鞭を付けたのが173センチ128キロの宇良(木瀬部屋:24歳)。多彩な決まり手と強靭な足腰を生かした粘りの相撲で館内を沸かせ、十両ながらスポーツ紙の一面を飾るほどの人気力士となった。さらに173センチ114キロの石浦(宮城野部屋:26歳)が鋭い立ち合いと速い相撲で着実に番付を上げ、2016年11月場所で新入幕を果たすと2日目からなんと10連勝。優勝争いに絡んで敢闘賞を受賞し、知名度は一躍全国区となった。

 そして2017年は新十両の照強(伊勢ケ浜部屋:22歳)に注目したい。168センチ116キロは関取の中では最も小柄だが、同部屋の横綱日馬富士、大関照の富士、幕内の宝富士、十両の安美錦らに稽古で揉まれ、初土俵から6年掛けて大銀杏を結うまでに出世を遂げた。武器である俊敏さを生かして素早く相手の懐にもぐり込み、左四つに持ち込んで投げを打つ取り口はなんとも小気味いい。阪神淡路大震災が発生した1995年1月17日に震源地に近い兵庫県洲本市で誕生したという生まれながらのエピソードも併せ持つ。

新弟子減少を受けて緩和された受験資格の影響も

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 若貴時代に土俵を沸かせた曙(203センチ)、小錦(285キロ)といった巨大な力士は姿を消したが、それでも依然大型化が進む角界にあって、照強のような小兵力士が増えた背景には新弟子検査の変更が影響している。

 2012年3月場所までは身長173センチ以上体重75キロ以上と定められていたが、それ以降は167センチ以上67キロ以上に改定(3月場所は中学卒業者に限り165センチ以上65キロ以上となる)。年齢制限に関しても2017年1月場所からは格闘技などの経験者で義務教育終了後の実績が認められれば従来の23歳未満ではなく25歳未満でも受検資格を得られるようになった。

 相撲ブームに沸いた1992年には223人もいた新弟子合格者は、宇良が入門した2015年には74人と激減しており、広く門戸を開いて多方面から人材を求めなければならないのが現状なのだ。それゆえに前出の小兵力士の活躍次第では、体格に恵まれなくても「我こそは!」と角界の門を叩く若者が今後増えてくるかもしれない。

 しかしながら、小兵力士は体格面で圧倒的な不利がつきまとうのも事実。巨漢力士との取組で負傷するケースも多々ある。実際、“平成の牛若丸”の異名を取った舞の海(現役当時は171センチ101キロ)は小錦との取組で勝利したものの、小錦の全体重が左膝にのしかかり、大けがを負った結果、現役を縮めてしまった。

 振り返れば、「ちびっこギャング」と言われた鷲羽山、高校教師から転身し、豊富な技を誇った智ノ花、食らいついたら離れない取り口から「南海のハブ」と呼ばれた旭道山、そして前述の舞の海などなど、いつの時代の土俵を沸かせる業師がいた。奇をてらった立ち合いや珍しい決まり手から、“サーカス相撲”と揶揄されることもあるが、知恵と技を駆使して100キロ近い体重差をものともせず、相手を土俵にごろりと転がす爽快さは、技能力士の醍醐味でもある。文字どおり、裸一貫で八面六臂の活躍を見せる彼らの土俵での立ち居振る舞いに注目したい。

VictorySportsNews編集部

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