ここで、国内組から「海外チームに所属した経験がない」という条件をつけると、前々回、前回大会からさらに減少していた。今回であれば、川崎フロンターレの谷口彰悟と山根視来、名古屋グランパスの相馬勇紀の3人が海外未経験者となっており、Jリーグでのみプレーをし続けている。ブラジル大会ではこれが8人、ロシア大会では6人だったので、Jリーグでしかプレーしたことがない選手の選出が減っている形だ。この状況をどう捉えていいのかどうか、正直わからない。ただ、いずれにせよ、1度も海外を経験していない選手が、W杯本大会で選出される可能性は極めて低くなっているというのが、数字から見えてくる。
今回選出された国内組は6人。上記の谷口、山根、相馬以外では、権田修一(清水エスパルス)、長友佑都(FC東京)、酒井宏樹(浦和レッズ)がいる。後者3人はいずれもヨーロッパのチームでのプレー経験があり、中でも長友と酒井はいずれも海外チームでのプレー年数が約10年にも及ぶ。
やはり海外でプレーすることが、最終的には代表としてW杯メンバーに入ることにとって大きな要素になるのだろうか。ベルギー1部リーグ「シント=トロイデンVV(STVV)」に所属するGKシュミット・ダニエル(30歳)は、選出された直後に現地からオンライン会見を行い、この問いに対して明言した。
「間違いなく、こっちに来なかったら選ばれなかったかなと思います。理由として、毎試合、ヨーロッパ、アフリカ系、南米の選手もいますが、日本では味わえない雰囲気、強度でプレーすることで、成長できた部分は絶対ある。良い経験ができたからこそ、この選出があると思います」
海外、特にヨーロッパのチームでプレーすることで、Jリーグでは味わえない様々な国籍の選手達とピッチ上で日々切磋琢磨でき、リーグ戦だけでなく、UEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグといったハイレベルなリーグも経験できる。こういった経験をしていくことで、日本人選手が国際舞台で活躍できるだけの肉体面、技術面、精神面が成長していくのだろう。
Jリーグを代表する
ただ、Jリーグでのみプレーし続け活躍する選手が、もう少しW杯の日本代表メンバーに選出される方が、Jリーグにとって良いのではないか。海外移籍を経験しなくてもJリーグで好パフォーマンスを発揮していれば、いつかW杯に出場できる機会を得られると、選手達に、またJリーガーを目指す子ども達に示す上でも大切だと感じる。
その点、筑波大学を卒業後、川崎フロンターレで長年活躍している谷口彰悟(31歳)の選出は大きいように思える。
谷口はW杯メンバーに決まった直後に開かれた会見で、Jリーグからの選出ということに対して意識していた。
「(Jリーグを代表するという意識は)あります。自分で勝手に、Jリーグを代表して戦ってくると思っているんですが、逆に(言えば)、それくらい(の覚悟を)背負って戦うべきだなとは思っている。そこは十分、今Jリーグでやっている選手だったりとか、そういった人たちへの思いも背負って戦いたい。僕たちでもできるとなると、今Jリーグで頑張っている選手達も遠い世界ではないんだなと思えるので、しっかり戦ってきます」
また谷口の隣に座った、同じく海外チーム未経験の山根(28歳)は、4年前に勇気づけられたという。
「前回のW杯でもJリーグの同じカテゴリーでやっている選手が出て活躍していて、自分には代表はすごく遠いところでしたけど、すごい勇気になったのは覚えている。そういった意味でも、自分たちが何かを学べたり残したりしないといけないという責任は感じてます」
また、2人の会見終了後に、川崎フロンターレの鬼木達監督は、2人がJリーグを代表してプレーするという意気込んだ発言を聞き、監督自身も刺激を受けていた。
「そこは本当に思うところ。自分自身も国内で指導者としてやっているので、彼らが国内組として呼ばれたことは誇りに思う。特にセンターバックの(谷口)彰悟は、国内のセンターバックで(代表に)呼ばれるのは本当に大変なことだと思う。いろんなプレッシャーの中で勝ち取ったものだと思いますし、またここから成長してほしいな。(山根)視来も最後の最後まであきらめずにやった結果がこういった結果になったと思う。自分たちとしては1人でも多く代表選手を育てていければいいなと思いますし、彼らがそうやって色んな人の目標になってくれればいいなと思う」
日本代表は11月9日に日本を発ち、カタールのドーハでトレーニングする。その後は一旦UAEに出て11月17日にカナダと親善試合を行った後、カタールに戻る。11月20日にW杯が開幕し、日本代表は11月23日にW杯グループリーグ第1戦でドイツ、11月27日に第2戦コスタリカ、12月1日に第3戦スペインと試合する。
谷口、山根、相馬の3人には、本大会で活躍する姿を見せて、存在感を示してくれることを期待したい。