残念ながらアルゼンチン代表のスーパースターのリオネル・メッシは2022/23シーズン限りでの退団が決まり、MLSのインテル・マイアミに加入することが明らかになった。それでもPSGにはフランス代表のキリアン・エムバペ、ブラジル代表のネイマールらそうそうたる顔触れが並ぶ。7月25日にはポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドが所属するアル・ナスル(サウジアラビア)、同28日には香川真司が所属するC大阪、8月1日には欧州チャンピオンズリーグ(CL)準優勝のインテル・ミラノ(イタリア)と顔を合わせる。

 PSGが欧州屈指のトップクラブであるのは言うまでもないが、一人一人の経歴をあらためて眺めてみたい。

 チームの顔とも言えるキリアン・エムバペは、18歳だった2017年夏にモナコから加入した。1年の期限付きののちに完全移籍する形で、移籍金は1億8000万ユーロ(当時のレートで約236億円)だった。フランス1部リーグでは、加入後の6シーズンで5度優勝。5季連続で得点王となり、元フランス代表ジャンピエール・パパンの記録に並んだ。ただし、欧州五大リーグの中で日常的なレベルがより高いとされるイングランド・プレミアリーグやスペイン1部リーグ(ラ・リーガ)で、どこまで実績を積み重ねられるのかという指摘は常になされている(「怪物」ハーランドは、ドルトムント(ドイツ)からマンチェスター・シティ(イングランド)へ移籍し、1季目にプレミア記録をいきなり塗り替える36得点をマークし、欧州チャンピオンズリーグ(CL)制覇を達成したことで、欧州最高のストライカーとの評価を固めたといっていいだろう)。

 フランス代表では2018年ワールドカップ(W杯)で優勝し、2022年W杯カタール大会はメッシとの頂上対決となったアルゼンチンとの決勝でハットトリックと活躍したが、惜しくもPK負けで連覇を逃した。クラブよりも代表での活躍のインパクトが強い。年俸などの報酬の総額は、仏紙「パリジャン」によると、3年6億3000万ユーロ(約945億円)という。年俸は7200万ユーロで、契約金やボーナス、シーズンごとに移籍せずに残留した場合に加算される金額を合わせたものとなっている。

 10番を背負うネイマールも華麗な経歴を持つ。ブラジルの名門クラブであるサントスから2013年にバルセロナ入り。リズミカルなドリブルと卓越したボールコントロールを武器に、バルセロナ時代にはメッシ、ルイス・スアレスとともに強力3トップ「MSN」を形成。2014/15シーズンに欧州CL制覇を達成した。メッシ、ロナウドに次ぐスターとしてラ・リーガで活躍したが、2017年にPSGへ電撃移籍した。2億2200万ユーロ(当時のレートで291億円)という移籍金は、今なお史上最高額だ。

 ブラジル代表でも10番を背負い、W杯カタール大会の準々決勝クロアチア戦で決めた得点は大会ベストゴールの一つと言っていいだろう。味方2人との2度のパス交換で狭いスペースをすり抜け、最後はGKまでかわして右足で蹴り込んだ一連の流れは、「王国」ブラジルのエースにふさわしかった。そして、このゴールによってブラジル代表通算ゴール数を77として「神様」ペレに並んだ(ペレはネイマールの勇姿をたたえ、大会後の12月29日に天に召された)。

 PSGは国内で圧倒的な強さを誇る分、欧州チャンピオンズリーグ(CL)になると、勝負強さが影を潜めるパターンが続き、欧州制覇には届いていない。最も頂点に近づいたのは2019/20シーズンだったが、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)の牙城を崩せず、試合後に涙したネイマールの姿も印象的だった。

 2023年のフォーブスのスポーツ長者番付によると、ネイマールはサッカーに限らず全スポーツ選手の中で世界12位の8500万ドル(約119億円)。メッシの獲得が実現しなかったアル・ヒラル(サウジアラビア)が巨額オファーを準備しているとの一部報道もあるが‥。

 2人のスターの脇を固める面々も実力者ばかりである。アシュラフ・ハキミはスペイン生まれで、レアル・マドリード(スペイン)の育成組織で才能を磨いた。トップ昇格後、19歳だった2018年夏にドルトムント(ドイツ)へ移って出場機会を一気に増やして頭角を現した。2020/21シーズンはインテル・ミラノ(イタリア)でプレーし、スクデット獲得(リーグ優勝)に貢献。2021/22シーズンからPSGに所属している。馬力のある走力で、右サイドを駆け上がるサイドバックはチームの攻撃に厚みを加える。W杯カタール大会はベスト4と躍進したモロッコ代表の主力。準決勝では同じ1998年生まれでPSGでは同僚であるエムバペとの対決が注目された。

 マルキーニョスは在籍10シーズンを誇るブラジル代表の守備の要。キャプテンシーもあり、豪華な攻撃面ばかりが注目されがちなチームを後方から支えている。ネイマールとは2016年リオデジャネイロ五輪金メダルを獲得したときの戦友でもあり、2018年、2022年のW杯でもともに戦っている。

 24歳のGKジャンルイジ・ドンナルンマはイタリア代表の守護神でもある。身長196センチという大型GKで、ブッフォンを生んだGK大国の系譜を受け継ぐ存在でもある。1年延期された2021年の欧州選手権制覇に貢献するなど代表での実績もある。

 PSGは中東の資金力を背景に強化を進めたクラブとしてマンチェスター・シティと比較されてきたが、ライバルは今季一足先に欧州チャンピオンズリーグ(CL)というビッグタイトルを手にした。PSGとしては、エムバペ、ネイマールに加え、メッシやセルヒオ・ラモス(今季限りで退団)という経験豊富な選手がいる間に、悲願を達成させたいところだっただろうが、ここ2シーズンはいずれもベスト16止まり。欧州CLを制するには資金力は欠かせないが、資金力だけでは欧州CLは手にできないということだろう。

「Paris Saint-Germain JAPAN TOUR 2023」公式ビジュアル

 メッシやセルヒオ・ラモスが抜け、来季は顔ぶれも大きく変わるだろう。攻守においてどんなピースが加わるのか、チームの次なる「形」はまだ見えてこない。ただ、心機一転、再び欧州の頂へと挑む戦いをするPSGの再スタートが日本で始まると考えると、ファンは貴重な時間を共有できることになるかもしれない。


土屋健太郎

共同通信社 2002年入社。’15年から約6年半、ベルリン支局で欧州のスポーツを取材