ただ、そのブンデスリーガから、活躍していた日本代表選手2人が別の国へと旅立っていきました。最初はフランクフルトからイタリアのラツィオに渡った鎌田大地。もう1人はシュツットガルトからイングランドのリヴァプール行きが決まった遠藤航です。
間違いなくステップアップと言っていい移籍でしょう。2022-23シーズン、フランクフルトは7位に終わり、ヨーロッパカンファレンスリーグの予選から出場することになりました。シュツットガルトは16位になってプレーオフに回り、ハンブルガーとの熱戦を制して1部残留を決めました。
移籍先のラツィオはセリエAで2位になってチャンピオンズリーグに、リヴァプールはプレミアリーグで5位になってヨーロッパリーグのグループステージに参入することになっています。鎌田も遠藤もプレーするステージが上がったと言えるでしょう。
鎌田はフランクフルトでは2021-22シーズンのヨーロッパリーグ優勝に大きく貢献しました。ただ、フランクフルトがチャンピオンズリーグとは縁がなかったため、今後はさらにレベルが上がった中でのプレーを見せることができます。
遠藤は2年連続で残留争いに巻き込まれ、自身のゴールやプレーでチームを救ったという苦しい戦いから、今度は頂点を目ざしたバトルへと大きく質が変わります。
一方で移籍に伴う不安が2人につきまといます。セリエAでこれまで評価された攻撃側の日本人選手は、中田英寿ぐらいではないでしょうか。ディフェンダーとして長友佑都や吉田麻也もレギュラーを取りましたが、アタッカーとしてシーズン通してレギュラーのポジションで結果を出した選手は少ないのです。
中田は、最初が決して大きなクラブとは言えないペルージャからでした。ユベントスとの開幕戦で2ゴールを挙げて一気に注目を集め、その後、ローマ、パルマ、ボローニャ、フィオレンティーナと渡り歩いたのです。ですが鎌田の場合はすでにフランクフルトでの実績から大きな期待を集めています。ハードルが上がったところからのスタートになります。
遠藤はきっとこれまでも移籍のオファーがあったでしょう。ですがキャプテンという立場やチーム状況を考えたときに決断できなかったのではないでしょうか。そしてここで名門からオファーがあったのなら選ばない選択はなかったはずです。
遠藤はブンデスリーガで2年連続「デュエル王」でした。ですがヨーロッパの中で最も激しいプレミアリーグで、これまでどおりのデュエル勝率を保てるかどうかは分かりません。年齢も30歳になって、これから体力が落ちていくことも考えられます。
また好調だった南野拓実がリヴァプールに入ってなかなか出番が与えられず、次第にリズムを失っていったという例もあります。さらに以前には香川真司がマンチェスター・ユナイテッドで出場機会が減り、調子を崩していったという例もあります。
もっともこれはどの選手が移籍してもつきまとう不安でもあります。そして僕はこの2人に関して言えば、今後の活躍や成長も期待できるのではないかと思っています。
鎌田は非常にクレバーな選手です。状況判断に優れていて、フィジカルも強くなりました。フランクフルトではチーム事情から2トップに入ったりトップ下を務めたりすることもありましたが、本人としては「8番(攻撃的なボランチ)でプレーしたい」と常々口にしており、ラツィオで後方から攻撃を組み立てていく役割が与えられれば、本人の思惑どおりの活躍ができるのではないでしょうか。
遠藤については、そもそもブンデスリーガでもデュエル王になると最初は誰も思っていなかったでしょう。ですが球際の強さに加えて読みのよさが際立っていて、守備だけではなくボールを奪ってから攻撃につなげられるプレーの成長も見えました。だからこそリヴァプールは目を付けたのでしょうし、簡単に衰えそうにもありません。
ブンデスリーガの番組でこの2人のことを取り上げられないのは少し残念ですが、攻守において日本代表でもキーマンである鎌田と遠藤の今後の成長は、きっと日本代表のレベルや日本サッカーのレベルを上げてくれるものだと思います。きっと2人ならやってくれるでしょうし、僕はそれを期待しています。
ブンデスリーガで活躍中の選手一覧
・アウクスブルク
奥川雅也
・シャルケ
上月壮一郎
・シュツットガルト
伊藤洋輝
原口元気
・デュッセルドルフ
アペルカンプ真大
内野貴史
田中 碧
・ホルシュタイン・キール
町野修斗
・ニュルンベルク
奥抜侃志
林 大地
・ハノーファー
室屋 成
・フライブルク
堂安 律
・ブラウンシュヴァイク
遠藤渓太
・フランクフルト
長谷部誠
・ボーフム
浅野拓磨
・ボルシアMG
板倉 滉
・マクデブルク
伊藤達哉