カナダは2022年カタールワールドカップの直前となった11月17日、ドバイで練習試合を行い1-2で敗れた相手。8分に相馬勇紀のゴールで先制したものの、21分に同点に追いつかれ、90+5分にPKで決勝点を奪われました。

 チュニジアは2022年のキリンカップ決勝で対戦し、0-3と敗れた相手です。55分にPKで先制され、76分、90+3分に加点されて敗れました。

 カナダもチュニジアもワールドカップに出場しましたが、ともにグループリーグで敗退しています。それでも去年対戦したときは両チームに負けていますし、そのときの強さを考えると、とてもいい相手との試合が組めたと言えるでしょう。

 今回の2試合で、僕がどういうプレーをするのか注目している選手が3人います。

 まず、カタールワールドカップ以来の招集となった南野拓実。記者会見で森保監督が「4-2-3-1であればトップ下」「4-1-4-1で戦う場合は、インサイドハーフ」をベースに「トップも、ウイングもできる」という起用方法を明らかにしていました。

 今回は鎌田大地と堂安律がコンディション不良ということで選出されていません。この2人の代役という意味合いも出てくるかもしれませんが、南野が入ることには大きな意味があります。

 それは、現在はまだ2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップに向けてメンバー選考を行っている段階で、そこで重要なのは選手とともに最適な組み合わせの見極めです。

 南野は2018年に森保監督が就任した直後は、右に堂安、左に中島翔哉という形のトップ下を務めていました。その後、左サイドにポジションが変わって、トップ下でのプレーは少なくなっていました。

 そのため今の日本のストロングポイント、右の伊東純也と左の三笘薫とのコンビネーションを試す機会はほぼ無かったのではないでしょうか。今回は三笘がケガで代表辞退しましたから、その代わりに左サイドに入る選手や、インサイドハーフを久保建英と組むとどうなるのかというのも興味深いポイントです。

 また、鎌田や堂安に比べると、シャドーストライカーとして飛び出していくのが得意な選手でもあるため、はたしてそれが現在のチームでどう生きるのかというのも見ておきたいところでしょう。

 ただし、今の日本代表で2列目は本当に人材が豊富です。好調な久保ですらレギュラーではないほどです。その中に入るとすると、南野の位置づけは5番手ぐらいになるかもしれません。ですが得意のトップ下で実力を発揮すれば、序列を上げてもおかしくないと思っています。

 そして2人目、3人目は古橋亨梧と旗手怜央です。この2人ほどクラブでの活躍と日本代表でのプレーが一致していない選手はいません。代表での適正ポジションが見つかっていないと言えるでしょう。よさが出せるポジションがあれば、そしてうまい使い方が見つかれば能力を発揮してくれるのは間違いないので、現状は「もったいない」と言えます。

 古橋はサイドで起用されたりトップを任されたりしてきましたが、日本代表で強豪チームと対戦したときには今ひとつ結果を残せていません。スピード豊かですが、同じスピードタイプでもアグレッシブな守備とその継続性では、今回は代表を辞退しましたが前田大然のほうが上。その点を森保監督は評価しているでしょう。古橋が序列を上げるためには、得点を取ることしかありません。

 旗手は様々なポジションで起用されてきました。2列目、ボランチ、五輪まで含めると左サイドは前も後ろも務めたと思います。ですが、ライバルと比べて抜きんでているものはあるのか。そうでなければレギュラーポジションは取れませんし、2番手以下の序列になってしまいます。どこのポジションでどうアピールするかが大切でしょう。

 そして今回の森保監督の采配についても、ぜひお願いしたいことがあります。それは、なるべくたくさんの選手を試したいという気持ちもわかりますが、ドイツ戦、トルコ戦のときのようなターンオーバーを使わないでほしいということです。

 ターンオーバーがあれば、どちらかの試合で限られた選手とだけの組み合わせが試されることになります。まだまだ多くの選手の連携・連動を築いていかなければならない段階ですから、ここは2試合のどちらかでテストするのではなく、両方の試合でのチャンスを与えるほうがいいのではないでしょうか。

 森保監督は会見で「11月からはおそらく召集できる人数がまた変わって、少なくなってしまうところもあります」と予選での登録できる人数が減る可能性についても言及しました。そうなると今回の活動は、そのメンバーに残るサバイバルレースという意味合いも出てくるでしょう。

 今回挙げた3人には期待していますし、他の選手にもぜひがんばってほしいと思います。

日本代表メンバー

GK
前川黛也 (ヴィッセル神戸)
大迫敬介 (サンフレッチェ広島)
鈴木彩艶 (シントトロイデンVV/ベルギー)

DF
谷口彰悟 (アルラヤン/カタール)
板倉 滉 (ボルシアMG/ドイツ)
中山雄太 (ハダースフィールド・タウンFC/イングランド)
町田浩樹 (ユニオン・サンジロワーズ/ベルギー)
毎熊晟矢 (セレッソ大阪)
冨安健洋 (アーセナル/イングランド)
伊藤洋輝 (シュツットガルト/ドイツ)
橋岡大樹 (シントトロイデンVV/ベルギー)
菅原由勢 (AZアルクマール/オランダ)

MF/FW
遠藤 航 (リバプール/イングランド)
伊東純也 (スタッド・ランス/フランス)
浅野拓磨 (ボーフム/ドイツ)
南野拓実 (モナコ/フランス)
古橋亨梧 (セルティック/スコットランド)
守田英正 (スポルティングCP/ポルトガル)
※三笘 薫 (ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン/イングランド)
奥抜侃志 (ニュルンベルク/ドイツ)
※前田大然 (セルティック/スコットランド)
川辺 駿 (スタンダール・リエージュ/ベルギー)
旗手怜央 (セルティック/スコットランド)
伊藤敦樹 (浦和レッズ)
上田綺世 (フェイエノールト/オランダ)
田中 碧 (フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)
中村敬斗 (スタッド・ランス/フランス)
久保建英 (レアル・ソシエダ/スペイン)

※ケガのため辞退

前園真聖

前園真聖

鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。アトランタオリンピック本大会では、チームのキャプテンとしてブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献。その後日本だけでなくブラジル、韓国などの海外クラブでもプレーし、2005年に現役引退。現在は、サッカー解説などメディアに出演しながらも、サッカースクールや講演を中心に全国の子供たちにサッカーの楽しさや経験を伝えるための活動をしている。