19分には大迫敬介がアルフォンソ・デービスを引っかけたということでPKを与えてしまいましたが、これを大迫が見事に弾いて失点を許さず事なきを得ます。
前半終了も近くなってきた40分、左サイドの浅野拓磨のクロスがオウンゴールを誘って追加点。さらに42分、浅野が中盤の厳しいチェックでボールを奪って独走し、最後は中村敬斗につなぐと中村が落ち着いて相手をかわし、3-0と試合を決定付けるゴールを決めました。
後半も立ち上がりの49分、南野拓実がペナルティエリア内でテクニカルなトラップとパスを中央に送ると、伊東純也がふわりと浮かす絶妙なパスを出し、これに走り込んだ田中が加点。カナダの勢いを削ぎました。89分に1点を返されたものの、日本は次回ワールドカップ開催国のカナダを相手に危なげない勝利を収めています。
試合の立ち上がりにいい形で先制したものの、その後押し込まれる時間帯もあったと思います。そんな嫌な流れを断ち切ったのが大迫のPKストップでした。大迫はプロになって初めてPKストップをしたということですが、この国際舞台で相手に傾きそうになっていた試合の流れを、再び日本に持ってきたと思います。
また、ドイツ戦、トルコ戦もそうでしたが前線からの守備が素晴らしかったと思います。2022年カタールワールドカップのときのように、後ろに下がって守備をするのではなく、前からボールを奪いに行く形ができていて、それが見事にはまりました。
ドイツ戦が日本にもたらした自信は大きいと感じます。怖れず前からプレスをかけに行き、ボールを奪う姿勢にはベクトルが常に前を向いているという迫力があります。
どんな相手でもリスペクトしすぎず、いい攻撃の形につながっていると思いますし、全体が連動していることで、前線が守備に行くとすぐにスイッチが入り、チーム全体で相手を押し込むことができています。
選手個人で僕が目に付いたのは、まず中村でした。
中村はこれで4戦4発と出るたびに結果を出しています。カナダ戦のゴールも、浅野が中盤でボールを奪うとすぐさまゴール前にダッシュし、パスを受けると落ち着いて相手をかわして冷静にコースに蹴り込みました。
中村はこれまでの日本選手にはなかなか見ることができなかった「決めきる力」を持っていると思います。相手のラフプレーで左足首を負傷し、その程度がとても心配ですが、早くケガを治して復帰してほしいと思います。
2人目は、2022年ワールドカップメンバー発表の翌日にアキレス腱を断裂するという不運から見事代表に復帰した中山雄太です。
やはり中山のプレーには安定感があります。カナダ戦はいろいろな選手と初めて組むことになったと思うのですが、手探りの状態からも落ち着いて状況に対処し、守備、そして攻撃のサポートと活躍しました。
中山は日本代表にいて当然というプレーを見せてくれましたし、伊藤洋輝とともに左サイドバックで競い合ってくれるものだと思います。
3人目は、冨安健洋とともにセンターバックを組んだ町田浩樹です。
町田はベルギーのユニオン・サンジロワーズで急激に成長しているのが分かりました。5大リーグではないベルギーリーグですが、それでもFWには日本で出会えないような強い選手がいます。その相手と対戦することで、激しくボールを奪えるようになっています。
最後の選手は旗手怜央です。
61分、中村のケガで急きょ投入され、30分ほどプレーしたのですがその中でインパクトを残しました。左アウトサイドで出場したかと思うと、中央にもポジションを移してプレーしていました。ボランチもこなせますし、本当にユーティリティ性が高い選手です。鋭いサイドチェンジも見せて、能力の高さを証明したと思います。
旗手についてはすべてがよかった、という訳ではないかもしれません。ただし、急に「あそこを埋めてきなさい」という状況で出場し、ここまでのプレーが出来る選手はなかなかいません。現時点ではマイナス点を探すのではなく、特性をしっかり見極めることが大切で、その点で旗手は素晴らしい働きをしたと思います。
今日17日のチュニジア戦は、去年のキリンカップ決勝で0-3と負けた相手。日本に来る前には韓国に0-4と大敗しているものの、きっとコンディションを整えてやってくるでしょう。簡単ではない相手になりますが、カナダ戦と同じように、しっかりと戦ってほしいと思います。
【前園真聖がサッカーを紐解く連載コラム】見事な戦いぶりを見せたカナダ戦で特に目に付いた選手たち
13日のカナダ戦、日本代表は4-1の快勝を収めました。開始早々からプレスをかけてカナダをたじろがせると、そのままの勢いで2分、右からのクロスに対してクリアが小さくなったところを田中碧が蹴り込んであっという間に先制点を奪いました。
カナダ戦前半、チーム3点目のゴールを決め祝福される中村(左から3人目) (C)共同通信