大部分のクラブが秋春制移行への賛成を表明する中、アルビレックス新潟の中野幸夫社長は反対の1票を投じたと明らかにしています。

 最初に僕の考えを明らかにしておきますが、日本代表強化のためにはJリーグのシーズンをヨーロッパに合わせたほうがいいと思います。現在世界のサッカーシーンの中心であるヨーロッパと合わせることでスケジュールの感覚も世界基準に近づけるのではないかと思っています。

 ただし、今の移行案の中にも考えなければいけない点は多々あります。

 たとえばパフォーマンスの問題。開幕時に比べると、夏場のパフォーマンスは20パーセント程度落ちるというデータが出ています。暑さがネックになっているのです。

 ところが現在の秋春制の案では、開幕が7月最終週から8月1週を想定していて、これでは暑い日々を回避できていません。今年を考えても9月にも暑い日々が続きました。気象庁のデータでは7月の平均気温が28.7度なのに対し、8月は29.2度、9月もまだ26.7度あったのです。暑さを避けるのなら、8月の開幕はさらにずらしたほうがいいということになります。また、データにも一番パフォーマンスが落ちるのは8月と出ています。

 また、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の問題も出てきています。今年からACLは秋春制で開催されていて、グループリーグが9月から12月まで、決勝トーナメントは翌年の2月から5月にかけて行われます。

 そのため現在の春秋制ではグループリーグと決勝トーナメントの間にシーズンが変わり、極端に言えば違うチームで1つの大会に臨む形になっています。また、ACL出場チームはリーグ戦終盤にACLグループリーグの山場を迎えるという日程です。

 それでも、ACLに出場できるチームは3または4チーム。そのために残りの50チーム以上が合わせなければいけないというのも、ちょっと違う気もします。Jリーグは、Jクラブのことをもっと考えてもいいはずです。

 そしてまだこういう問題点があること以上に、理事会ではぜひ考えてほしいことがあります。それは新潟を孤立させてはいけないということ。今のままだと「新潟は協調性がないクラブ」と見えてしまうのではないでしょうか。それだけは避けてほしいのです。

 これまでJリーグは秋春制に移行したとき生じる問題を検討してきたと思います。それでもなお新潟は秋春制が「できない」と言っているのですから、解決できていない問題点があるとしか思えません。

 そして、新潟が主張していることの詳細と、Jリーグがどんな解決策を考えているのかという詳しい内容がJリーグから発信されていないことも問題だと思います。新潟が指摘している点を置き去りにせず、しっかりと解決策を練ってこそ、日本全国で秋春制を推進できる態勢になるはずです。

【シーズンについての3つの案】

(1)現行のままシーズン移行しない
・2月3週ごろに開幕
・12月1〜2週ごろに閉幕
・J1は8年に3回(ワールドカップ、アジアカップ)ペースで6〜7月に中断
・平日開催 J1は1節程度(ワールドカップのときは4〜7節程度)、J2なし、J3は1節程度
・降雪地帯のアウェイ連続 J1とJ2は最大4連続、J3は最大6連続

(2)秋春制に移行したシーズン案(A)
・8月1週ごろに開幕
・12月3週ごろにウインターブレイク
・2月2週ごろにウインターブレイクから再開
・5月最終週ごろに閉幕
・平日開催 J1は4節程度、J2は3節程度、J3は3節程度
・降雪地帯のアウェイ連続 J1とJ2は最大3連続+最大4連続あるいは最大2連続+最大5連続、J3は最大2連続+最大7連続
※平日開催は(B)に比べて少ないが、降雪地域のクラブのアウェイ連続が増える

(3)秋春制に移行したシーズン案(B)
・8月1週ごろに開幕
・12月1週ごろにウインターブレイク
・2月3週ごろにウインターブレイクから再開
・5月最終週ごろに閉幕
・平日開催 J1は7節程度、J2は6節程度、J3は6節程度
・降雪地帯のアウェイ連続 J1とJ2は最大4連続、J3は最大6連続
※平日開催が増えるが、降雪地域のアウェイ連続は現行と同じ


前園真聖

鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。アトランタオリンピック本大会では、チームのキャプテンとしてブラジルを破る「マイアミの奇跡」に貢献。その後日本だけでなくブラジル、韓国などの海外クラブでもプレーし、2005年に現役引退。現在は、サッカー解説などメディアに出演しながらも、サッカースクールや講演を中心に全国の子供たちにサッカーの楽しさや経験を伝えるための活動をしている。