敗戦直後の食料自給率は88%

――食べ物についても、煙草やお酒を『自分の身体の調子で判断する』のと同じように考えればいいのでしょうか。

「うん、それでいいと思うな。人間はもともと雑食性なんだから、何を食べたっていいんだ。そういう意味では、危ないのは『雑食』を拒否する人。最近流行のヴィーガンなんか、はっきり言って、ぜんぜん駄目だよね。長生きできないよ。いろいろ食べるのが一番いいの。9種の必須アミノ酸が足りていれば、あとは好みで食えばいい。ところで、ヴィーガンは、やっぱり昆虫食とかも駄目なのかな?」

――見解が割れているようです。

「ふーん。人間なんて皆、昔は昆虫を食べていたのにねえ」

――先生の最新刊『食糧危機という真っ赤な嘘』(ビジネス社)を読んで、目から鱗が落ちる思いでした。

「どの部分?」

――たとえば、現在の日本の食料自給率は、カロリーベースで38%。ところが、先生が生まれる前の年、つまり敗戦直後でとんでもない食糧難だといわれている1946年の食料自給率は88%もあったとか。

「食料自給率が下がったのは、国民が豊かになって1次産業をやらなくなったからじゃないよ。政府が『政策』として、自給率を下げよう、下げようと誘導してきたのだから」

――世界的な食糧不足が懸念される近い将来、「タンパク源のコスパ」から考えると、日本で牛肉を食べ続けるのは難しいかもしれませんね。

「食用肉は、与えたエサ(飼料)と不等価交換でしか成立しないから仕方ないよね。牛肉(生体1kg)を生み出すには、10kgの飼料が必要。同じ1kgでも、豚肉なら5kgの飼料でいけるし、鶏なら2.5kgの飼料で済む。その上、卵まで産んでくれてね」

――そうしたコスパの究極形態が昆虫食である、と。

「コオロギは1kgの生体になるのに1.7kgの飼料で済む。エビみたいに美味しい上に、栄養だって豊富。タンパク質にオメガ3脂肪酸、必須アミノ酸BCAA、ビタミン、ミネラル、亜鉛、鉄分、カルシウム、マグネシウム」

――お米とイモを主食に、タンパク質は昆虫で摂る。そのベースの上で時折、養殖を中心にした魚と鶏肉を食べる。

「それが、将来における日本人のベーシックな食卓の風景になる可能性は否定できないよね」

カメムシは、パクチー風味

――徳島県の高校で給食にコオロギを出したところ、大騒動になりました。

「その件、僕も知っているけど、いろいろ誤解があるよ。だいたい、提供されたのはコオロギそのものじゃなくてコオロギの粉末だし、『給食で出した』という言い方も違う。徳島県の高校が、徳島大学発のベンチャー企業であるグリラスが開発したコオロギパウダーの提供を受けて、ひき肉の代わりにコオロギパウダーを使ったかぼちゃコロッケを試作したわけ。それについて事前にアレルギーについての説明もおこない、希望した人に試食してもらっただけだよ。強制でも何でもないんだから、どうして問題視するんだろう」

――食べようと思えば食べられるけれども「文化的に食材だと見なされていないから」というイメージ上の問題でしょうか。

「そうかもしれないね。僕とか、僕より上の世代の日本人はイナゴの佃煮を食ったりしていたから、どうってことないと思うけど。でも、イメージで忌避するというのは、たしかに僕もあったな。小さいときに食べたことがないものは、大きくなってから食べづらいよね。
昆虫料理研究家の内山昭一さんから『マダガスカルゴキブリは美味いですよ』と言われたんだけど、僕はそれはそそられなかった。蜂の子とかイナゴはいいけど、ゴキブリはちょっと。だから、文化的な壁だな。そう、日本では食べないけど、ラオスの人はカメムシを食べるんだ」

――あの、とんでもない臭いのカメムシ……。

「昆虫採集で、ナンボカタイというラオスの山奥の村に行ったの。そうしたら、現地の子供たちが面白がって、ついてきてさ。カメムシをいっぱい見せてくれるんだけど、ぜんぶ脚をもがれて、胴体しかない。なんでだろうと思って、身振り手振りで訊いたら、子供らがニッコリ笑って、パクッて食べた」

――生のままですか。

「そっ。脚とか触覚とか、ちゃんともいでおかないと、口の中で引っ掛かるじゃない。せっかくだから、僕も食べた。パクチーの味、強烈だけどね。後で調べたら、ちゃんと科学的な根拠もあったよ。パクチーの独特の味の成分、アルデヒドがカメムシにも含まれていた。そういう視点でいくと、日本のタガメにもアルデヒドが含まれているから、食べたら、パクチーの味がするはずだ」

【身体と私】生物学者・池田清彦が語る〈食の冒険〉Vol.5に続く


【池田清彦/略歴】
 生物学者。理学博士。1947年、東京に生まれる。東京教育大学・理学部生物学科卒。東京都立大学・大学院・理学研究科博士課程・生物学専攻・単位取得満期退学。山梨大学・教育人間科学部教授、早稲田大学・国際教養学部教授を経て、現在、山梨大学名誉教授、早稲田大学名誉教授、TAKAO 599 MUSEUM名誉館長。フジテレビ系「ホンマでっか⁉TV」に出演するなどテレビ、新聞、雑誌で活躍。「まぐまぐ」でメルマガ「池田清彦のやせ我慢日記」、YouTubeとVoicyで「池田清彦の森羅万象」を配信中。単行本の最新刊『食糧危機という真っ赤な嘘』(ビジネス社)が話題を呼んでいる。

『食糧危機の真っ赤な嘘』

「食料は輸入に頼らざるをえない」は日本政府自作自演のインチキ! ●遺伝子組み換え作物は将来、人体に悪い影響が出る ●昆虫食は国連に押し付けられた野蛮でまずい食べ物 ●使っている農薬をみても、国産作物が最も安全 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ 【全部ウソ!!】

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VictorySportsNews編集部