カードは次の通り。

 「Day1」(13日)はWBA(世界ボクシング協会)バンタム級戦、WBC(世界ボクシング評議会)フライ級戦、WBAフライ級戦、WBO(世界ボクシング機構)ライトフライ級戦の4大世界戦。

 「Day2」(14日)はWBCバンタム級戦、WBOスーパーフライ級戦、WBOフライ級戦の3大世界戦+那須川出場のWBOアジアパシフィック・バンタム級戦。

 計7試合の世界タイトルマッチに日本人世界チャンピオンだけで4人が登場する賑々しさだが、「1995年度生まれ」の同学年ボクサーが5人いることも話題になっている。今年29歳となる「95世代」からは、すでに過去5人の世界チャンピオンが誕生。これは井岡一翔(志成)を筆頭にする1988年度生まれと同数で、最多タイ記録である。

 今回の2デイズ興行で世界戦に出場する95世代の5人とは、井上拓真(大橋=WBAバンタム級王者)、田中恒成(畑中=WBOスーパーフライ級王者)、ユーリ阿久井政悟(倉敷守安=WBAフライ級王者)、堤聖也(角海老宝石=WBAバンタム級2位)、岩田翔吉(帝拳=WBOライトフライ級1位)。いずれもアマチュアからボクシングをしており、高校時代は全国大会でしのぎを削った仲である。

 中でも、大きくクローズアップされそうなのが井上と堤である。両者はDay1のメインで井上の持つ王座をかけて直接対決をするからだ。高校で対戦して敗れている堤にとっては雪辱と戴冠が同時にかかるリングとなる。

堤聖也のキャリア

 世界初挑戦となる堤はドラマチックなキャリアを歩んできた。1995年のクリスマスイブに熊本市で生まれ、中学生の時に本田フィットネスジムに通いだし、九州学院高校、平成国際大学でアマチュア101戦(84勝17敗)を経験した。井上とは高校2年のインターハイ・ライトフライ級準決勝で対戦し、判定負けしている。

 プロ入りを決意したのも、ひと足先に転向した同学年の選手たちの活躍に刺激されたことが理由の1つだ。たとえば九州大会で2度勝ったことのある比嘉大吾(現志成)は、堤が大学4年の時に、破竹の連続KO勝利でプロの世界チャンピオンに駆け上がっていた。またとくに、全国大会で負けた井上拓真にプロの世界戦のリングでリベンジするという思いは堤にとって大きなモチベーションだった。

 2018年3月、初回KO勝ちでデビューを果たした堤が最初にプロで名を馳せたのは、2020年10月の比嘉戦である。世界王座から陥落した比嘉の復帰第2戦の相手に選ばれた時、堤は5勝4KO1分の戦績。アマで勝っているとはいえ、15連続KO記録保持者の元世界チャンピオンとの一戦は当然不利の予想だったが、堤は比嘉と堂々わたり合った末10回引き分け。

 その後はプロでの出遅れを取り戻すかのように、一戦一戦勝ち上がった。相手の体調不良やコロナ禍の事情もあって比嘉戦から1年半以上待ったものの、次戦で日本バンタム級王座を獲り、このタイトルは4度防衛した。昨年を通して開催されたバンタム級「モンスタートーナメント」に現役チャンピオンとして出場し、増田陸(帝拳)、穴口一輝(真正)の強敵を連破して優勝を飾った。決勝では対戦相手の穴口さんが試合後に意識不明に陥り、回復することなく他界する悲劇が起こった。23年の年間表彰で堤は「努力・敢闘賞」を受賞し、激闘の穴口戦が「年間最高試合(世界戦以外)」に選出された。表彰式で堤は最高試合受賞について「悔やまれるのは、今日一緒にいられなかったことです」と、あらためて穴口さんの逝去を悼んだ。

 堤はスイッチ(両構え)を武器にする数少ないファイター。決して付け焼刃ではなく、高校時代から練習量を倍にして身につけたものだ。洗練されたボクシングスタイルではないが、豊富なスタミナと頑強な体、そして強い精神力が武器で、苦しい試合でも無類の勝負強さを発揮して勝ちをもぎ取ってきた。

 また堤自身、95世代のこだわりが強い男である。今回の世界タイトルマッチはこれ以上にない舞台。同学年のライバルから世界王座を奪い、「最強世代」をさらに強く印象づけることができるか。


VictorySportsNews編集部