のみならず、フライ級でも近い将来に同様の現象が起きるのではないかと目されているのだから、すごい時代である。
バンタム級より2階級軽いフライ級には、現時点ですでに2人の日本人チャンピオンが存在している。WBCの寺地拳四朗(BMB)、そしてWBAのユーリ阿久井政悟(倉敷守安)だ。
まず楽しみなことに、この二人は互いのベルトをかけて統一戦を行うことが決まっている。3月13日、東京・両国国技館の「U−NEXT BOXING2」。
ライトフライ級で一時代を築いた寺地は昨年10月に2階級制覇をかけてクリストファー・ロサレス(ニカラグア)と決定戦で対戦し、11回TKO勝ち。階級アップの利点を発揮し、力強くシャープなボクシングでロサレスを圧倒してみせた。もうベテランの存在だが、減量もいくらか楽になって溌溂と躍動する姿は「寺地やはり強し」を印象づけたものだった。
かたや阿久井は昨年1月の世界初挑戦で無敗王者アルテム・ダラキアン(ウクライナ)を破り、タイトルを見事奪取。岡山のジムから誕生した初の世界チャンピオンは地方ジムの星となった。その後も5月、10月と精力的に防衛戦を行い、ベルトをしっかりとキープしている。
異例のチャンピオン対決
寺地と阿久井のチャンピオン対決は、同じ統一戦でも両王者が日本人ボクサーという点で異例だ。過去に日本人の世界チャンピオンによる王座統一戦が行われたのは、井岡一翔−八重樫東(12年、ミニマム級)と寺地拳四朗−京口紘人(22年、ライトフライ級)のみ。どちらも日本ボクシング史に残る名勝負だった。ただでさえチャンピオンのプライドがぶつかり合って激闘になりがちなうえ、やはり日本人同士のプラスアルファもあるに違いない。
下馬評はやや寺地優勢の印象だが、阿久井勝利を推す意見もある。さて試合はどんな展開を辿り、どんな結末となるのか。
さらに寺地−阿久井のWBC−WBA統一戦と同じリングでは、WBOの同級タイトルマッチも開催される。こちらは王者アンソニー・オラスクアガ(アメリカ)が元ミニマム、ライトフライ級チャンピオンの京口紘人(ワタナベ)を迎える。オラスクアガと京口ともに好戦的とあって、間違っても退屈な試合にはならないともっぱらである。
まだまだ好試合は続く
そしてファンは、この日国技館で行われるフライ級戦2試合の勝者に対し、当然「次の統一戦」を期待することだろう。つまりWBC−WBA−WBOの3団体統一戦である。現に今回の興行の発表会見では、寺地が「WBO戦の勝ったほうと統一戦をやりたい」と、阿久井も「次(寺地に)勝てばもちろん意識します」と意思表示をしている。「3.13」を終えて新たに誕生する統一戦カードは果たして……。
まだある。残るIBFのフライ級タイトルマッチも、3月に日本で決まっているのである。29日、愛知県国際展示場で、同級チャンピオンのアンヘル・アヤラ(メキシコ)に日本の矢吹正道(LUSH緑)が挑む一戦。
この試合の挑戦者である矢吹は現役の世界チャンピオンでもある。IBFライトフライ級王座を保持したまま1階級上げてアヤラにアタックするのである。
アヤラは昨年8月にタイトルを獲得したばかり、やせ型のチャンピオンだが、実力評価は低くはない。またアヤラ自身「日本は(軽量級の)市場が盛り上がっている」と語っており、来日して戦うことにメリットがあると踏んでいる様子。強打者矢吹と真っ向勝負も予想され、戦前から激闘の香りが漂っている。
ここで整理すると、この3月は世界4団体のフライ級タイトルマッチが日本で挙行される。これだけでも異例なことだが、いずれも好ファイトが期待でき、そして結果次第ではバンタム級のように4王座を日本人チャンピオンが占める——というわけだ。この「フライ級月間」は見逃せない。
(※なお、U−NEXTがライブ配信する13日の両国興行は、WBOライトフライ級戦(岩田翔吉−レネ・サンティアゴ)も合わせたトリプル世界タイトルマッチとなる。アンダーカードではアマチュアの世界選手権金メダリスト、坪井智也のプロデビュー戦も予定されている。一方、アヤラ−矢吹戦がメインの「3150×LUSHBOMU4」興行はABEMAがライブ配信を行う。翌30日はWBCミニマム級戦(メルビン・ジェルサレム−重岡優大)をメインにした「3150×LUSHBOMU5」が行われる)