ケインは2023年夏にトットナム(イングランド)から移籍した。1シーズン目にいきなり36ゴールを挙げて得点王。トットナム時代に2度、シーズン30点を記録したことはあるが、36点は彼自身のキャリアで最多のゴール数だった。昨季も26ゴールで2季連続得点王となると、今季も開幕7試合で12ゴールと驚異的なペースで得点を積み上げている。18日のライバル、ドルトムント戦でもゴールを挙げて7戦全勝と圧倒的な強さを見せるチームを引っ張っている。

 プレミアリーグとブンデスリーガの競争力の差は明らかだろう。プレミアは長く「ビッグ6」と呼ばれたマンチェスター・シティー、リバプール、チェルシー、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、トットナムがしのぎを削り、欧州チャンピオンズリーグでも上位進出が狙えるだけのチームが同一リーグ内にずらりと顔をそろえている。もちろん、近年は上位を脅かす第2集団のクラブもレベルが上がり、マンチェスター・ユナイテッドでさえ上位争いに加われない光景が珍しくなくなっている。それほどまでに、プレミアリーグのシーズンを戦い抜くことは消耗の激しい戦いなのだ。

 対してドイツは長くバイエルン・ミュンヘン「1強」時代が続いている。確かに、ケインがドイツに上陸した2023/24年シーズンは、シャビアロンソ監督(現レアル・マドリード監督)率いるレーバークーゼンがシーズン無敗の強さを誇ってリーグ制覇をさらったが、それ以前のブンデスリーガはバイエルンがなんと11連覇。レーバークーゼンの優勝をはさんで、昨季もバイエルンが戴冠しており、リーグを取り巻く構造そのものが変わったわけではなさそうだ。ドルトムントやライプツィヒといったライバルがいるものの、中位以下とのリーグ戦での対戦では5点差以上がつくことも珍しくなくなってしまっている。

 バイエルン・ミュンヘンには今季、リバプール(イングランド)から28歳のコロンビア代表FWルイス・ディアスが加入した。すっかりチームになじんでおり、5得点4アシストをマーク。第6節のアイントラハト・フランクフルト戦では開始わずか15秒で先制点を挙げるなど、ゴール前での決定的な仕事でチームに欠かせないピースとなっている。プレミアリーグでは在籍4シーズンで通算103試合出場、29ゴール15アシストという数字を残したが、ブンデスリーガでは1試合あたり、約1・3点に直接絡んでおり、より存在感を高めている。昨季からプレーするミカエル・オリセは23歳とまだ若く、選手としてもこれからだが、クリスタルパレス(イングランド)からバイエルン・ミュンヘンにステップアップした。プレミアリーグでプレーした3シーズンで82試合14ゴール22アシストだったアタッカーは、昨季12ゴール15アシストをマークしてバイエルン・ミュンヘンのタイトル奪還に貢献。今季も中心選手として活躍している。

 リーグで圧倒的な強さを誇るクラブは、当然欧州チャンピオンズリーグ(CL)の制覇も視野に入れる。ドイツがバイエルン1強だとすれば、フランスもパリ・サンジェルマンが独走し、スペインはレアル・マドリードとバルセロナの2強が君臨している。

 過去20シーズン、欧州チャンピオンズリーグを制したのは計10クラブ(レアル・マドリードが6度、バルセロナが4度、バイエルン・ミュンヘンが2度、チェルシーが2度、ACミラン、インテル・ミラノ、リバプール、マンチェスター・シティー、マンチェスター・ユナイテッド、パリ・サンジェルマンが各1度)あるが、バイエルン・ミュンヘンが欧州一に輝いたシーズン(2012/13、2019/20)は、ブンデスリーガでも当然のように優勝を遂げている。バルセロナも4度のシーズン全てでリーグも制しており、昨季のパリ・サンジェルマンも然りだ。

 公平を期すために全て書くと、イタリア勢は2009/10年のインテルは国内リーグなどと合わせて3冠を達成したが、2006/07年のACミランはリーグ4位に甘んじた(優勝はインテル・ミラノだった)。6度もCLを制しているレアル・マドリードは、そのうち3度はリーグでも頂点に立った。ただ、リーグ優勝できなかった3シーズンのうち、2シーズンはバルセロナが優勝している(それ以外の1度はアトレチコ・マドリードがリーグ優勝)ことを考えれば、スペインはやはり「レアル・マドリードか、バルセロナか」という2強のリーグというとらえ方ができるだろう。

 さて、プレミア勢である。2度の欧州制覇を誇るチェルシーは2011/12年も、2020/21年もプレミアリーグのタイトルには届かず、逆にプレミアで5度優勝したシーズンでは欧州CLの決勝にさえ進めていない。リバプールは2018/19年シーズンに欧州CLを制したが、リーグとの2冠はならず。リーグを制した2019/20年と、2024/25年シーズンはともに欧州CLベスト16で敗退している。

 プレミア勢でどちらのタイトルも手中に収めたのは2006/07年のマンチェスター・ユナイテッドと、2022/23年のマンチェスター・シティーの2例のみ。プレミア勢にとっては両大会の両立は至難の業といえるだろう。

プレミアリーグ出身メンバーの躍動が際立つ(FC Bayern München 公式HPより)
VictorySportsNews編集部

著者プロフィール VictorySportsNews編集部