文=松原孝臣
ロンドン五輪で陸上には分配金4700万ドル
©Getty Images オリンピックは、表で見られる選手やチームの争いとは別に、競技団体ごとの競争も行なわれている。競技団体の盛衰に大きくかかわるそれは、国際オリンピック委員会(IOC)による「格付」である。
2013年6月、IOCがオリンピック競技のランキングを公表した。それは2012年のロンドン五輪でのテレビ放送時間、新聞やインターネットなどのメディアでどれだけ露出があったか、観客動員数などから導き出されたものだ。AからEまでの5つに分けられている。
●A 水泳、陸上、体操
●B バスケットボール、自転車、サッカー、テニス、バレーボール
●C アーチェリー、バドミントン、ボクシング、柔道、ボート、射撃、卓球、重量挙げ
●D カヌー、馬術、フェンシング、ハンドボール、ホッケー、セーリング、テコンドー、トライアスロン、レスリング
●E 近代五種、ゴルフ、ラグビー(ゴルフとラグビーはリオデジャネイロ五輪からのため、最低ランク)
このランキングに基づき、分配金が支払われる。ロンドン五輪では、ロイターによれば、当時のランキングで唯一Aランクだった陸上には4700万ドル、最低ランク(当時は4つのランク)のDの競技団体には1400万ドルだったという。どこに位置づけられるかで、受け取ることができる額は大きく異なってくる。世界的な普及活動をどこまで行なえるか、大会の開催など多方面に影響をもたらす。
ルール改正は試行錯誤の現れ
©Getty Images IOCによる格付けは、獲得できる分配金への影響にとどまらない。不人気競技だとみなされれば、いつかオリンピックから除外されるかもしれない危険を抱かせるからだ。実施競技の選定に関してはランキングで決まるわけではないが、普及度、テレビ放送の注目度など選定における査定項目は、ランキングの基準と通じている。ランキングが低ければ、実施競技選定の調査でも低いということはあり得るから危機を抱かずにはいられなくなる。レスリングが一度は2020年の東京五輪実施競技から除外されたが、復帰した要因の1つは日本国内における人気ぶりだろう。
だから注目や人気を集めるために、競技団体は試行錯誤してきた。ルール改正はその最たるものだ。バレーボールがラリーポイント制を導入したのは試合時間に目安をつけられるようにすることで、テレビ中継がしやすいようにという配慮からだ。柔道のルール改正もまた、いかにして観て面白い競技にするかの模索が根底にある。あるいはいかに見栄えがするかという観点を踏まえ、ユニフォームの規定が変わることだってある。
オリンピックが開催されるとき、その背後では参加している競技団体もまた、特に注目度の低さを実感している団体は手に汗握って大会の行方を見守っているのである。