文=土地将靖

好成績を残したがゆえの主力の流出

 大宮があえいでいる。

 2014年、10年間戦ってきたJ1から去らざるを得ない憂き目に遭ったものの、翌年のJ2では見事に優勝でのJ1復帰を勝ち取った。2年ぶりのJ1で再スタートを切った昨年は、それまでのクラブ記録の数々を塗り替え、最多勝利数、最多勝ち点でクラブ史上最高位となる5位でフィニッシュした。その勢いを駆ってさらなる高みを、と臨んだ今季である。

 しかし、勝てない。第4節までを終えたJ1リーグで唯一の開幕4連敗で最下位に沈んでいる。1得点7失点、得失点差マイナス6と、その他の数字もすべてリーグワースト。新シーズンで厳しい船出を余儀なくされている。

 失点の多さも目立つが、やはりその課題は攻撃。開幕戦となった川崎F戦では、悪くない試合展開ながら、しかし得点を奪えずに徐々にリズムを失い、セットプレーから失点し敗れた。続く第2節F東京戦もほぼ同様の展開。結果が出ないことで選手たちは自信を失い、委縮し、その次の試合でまた結果を出せないという悪循環の中に陥っている。

 大きな要因として、15年のJ2優勝から昨年の躍進への大きな原動力となった家長昭博と泉澤仁の流出が挙げられている。昨オフ、家長は川崎へ、泉澤はG大阪へ移籍。大宮としては、攻撃の大駒2枚を同時に失うこととなった。

 特に家長は、リーグでも屈指のボールキープ力で大宮の攻撃をリードした。収めたボールはほぼ相手に奪われることなく、味方は敵のカウンターを恐れることなく攻め上がれる。そこに、泉澤のドリブルがアクセントとして加わる。絶対的な司令塔が周囲を操りながらパスワークで敵陣を突き崩していく攻撃は、大宮のスタイルとして確立されたかに見えただけに、異能の流失は非常に残念ではあった。

中断期間に施した修正は機能するか

©Getty Images

 一方で、選手の移籍というものはよくあることで、仕方がないものだとも言える。常日頃から選手の動静には目を配るべきであり、その中でクラブ首脳陣は、清水から大前元紀、柏から茨田陽生、湘南から長谷川アーリアジャスール、J2群馬から瀬川祐輔を獲得し、今年へ向けたチーム編成を終えた(その他、新人選手2名も獲得)。このメンバーで戦うと決めた中で、今度はその選手編成に応じたチーム作りに苦心した。

 家長、泉澤という2枚看板を失った分、チーム構築に時間が掛かることは予想された。準備期間中の練習試合ではなかなか勝てなかったが、開幕戦後には大前元紀から「内容は今までで一番良かったと思う」という言葉が聞かれ、チームの着実な歩みを裏付けていた。結果こそ出なかったが、このまま続けていけばうまくいく――そんな思いは、選手たちの中に少なくなかったはずだが、そこへまたアクシデントが襲った。

 攻撃の核となるべき大前が体調不良となり、第2、3節の出場を回避。他にもけが人などがあった影響で、開幕からの4試合で攻撃陣4枚の組み合わせがすべて異なるという状況に見舞われた。これでは攻撃陣のコンビネーション向上など望むべくもない。得点力が上がらない中、前述したような攻守の負のスパイラルから、どうしても抜け出せないでいる。

 3月の最終週、日本代表のFIFAワールドカップ予選の影響で、J1リーグは1週間のブレイク。チームとしても戦術面を見直し、連係を高めていく大切な期間である。「攻撃で圧倒しようと、そういうメンバーを組んでいたが、それでは勝てないことがわかった。それなら違う方法でいかないと」と渋谷監督も若干の軌道修正を口にする。メンバー選考にもテコ入れがなされるだろう。

 次の鹿島戦、5連敗だけは避けなければならない。「我慢。踏ん張るしかない。1勝すれば変わる。チームとして一皮むけるかむけないか、というところに来ている」(松本大樹強化本部長)。チーム編成なのか戦術面なのか、好調だった昨年から急転での不振の分析や原因究明はもちろん必要だが、まずはこの正念場を乗り越えられるかどうか。それが、今後の大宮の命運を大きく左右することは間違いない。


土地将靖

埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。93年、試合速報テレホンサービス「J's Goal」のレポーター兼ライターとして業界入り。01年にフリー転身、05年以降は大宮の全公式戦を直接取材し専門誌やweb媒体へ寄稿。ラジオでのコメンテーターとしても活動中。