文=Baseball Crix編集部
パを知り尽くす楽天・梨田監督、オリックス・福良監督が手腕発揮
序盤戦最大のサプライズは、楽天の快進撃だ。1番・茂木栄五郎、2番・ペゲーロからはじまる打線は強力で、3番・ウィーラー、4番・アマダーは全開ではないものの、そのうしろを打つ銀次、今江年晶、岡島豪郎、嶋基宏らがいい働きをしており、上位から気の抜けない新打線が機能している。
ペゲーロとアマダーは昨シーズン途中から加わった選手だが、野手陣の顔ぶれは2016年とほぼ変わっていない。ペゲーロを2番に入れるなど変更点は打順の並びくらいで、既存戦力を活かしたリフォームが一定の成功を収めている。
投手陣ではWBC組の合流遅れ、新加入・岸孝之の開幕登板回避など不安要素が多かったなかで、先発陣では美馬学、救援陣では菅原秀、森原康平、高梨雄平の新人トリオが奮投を続けている。セットアッパーを担う新外国人・ハーマンもまずまずの滑り出しを見せるなど、球団初となる開幕からの3カード連続勝ち越しを成し遂げた。
その楽天に開幕3連敗を喫したオリックスも盛り返してきた。巻き返しの立役者は金子千尋、西勇輝、ディクソンの先発三本柱。4月24日の時点で、3投手の合計勝敗は8勝0敗。高給取りの3人が揃って期待通りの働きを見せ、投手陣全体を力強くけん引している。
打線では新外国人のロメロが4試合連続本塁打を放つなど、4番打者としてフィット。和製大砲のT-岡田も今年は上々の滑り出しを見せ、本塁打ランキング上位につけている。さらに小谷野栄一、中島宏之、宮崎祐樹ら、ベテラン・中堅選手が存在感を示すなど。実質2年目となる福良淳一監督の手腕も光っている。
辻西武に黄金期再来の予感? チーム防御率は驚きの12球団トップ!
©共同通信 西武の堅実な戦いぶりもサプライズのひとつだ。昨季リーグ4位だった3.85のチーム防御率は、まだはじまったばかりとはいえ、12球団トップの2.28へ良化。岸の退団後、新エースを襲名した菊池雄星がカード頭で力強く腕を振り、今季は牧田和久、シュリッター、増田達至の勝ちパターンも確立されている。
西武は昨シーズン12球団ワーストの101失策を献上したが、今季は新人遊撃手・源田壮亮の台頭もあり、ここまでは12球団で2番目に少ない7失策にとどめている。その恩恵を如実に受けている先発投手が、ともに打たせて取るタイプのウルフと野上亮磨。特に野上は昨シーズン失策絡みで失点するケースが多く、防御率は3.87ながら3勝9敗と6つも負け越した。それが今季ここまでは、2勝2敗、防御率1.73と安定しており、11勝(7敗)を挙げた2013年以来の2桁勝利へ突き進んでいる。
打線は新主将の浅村栄斗を中心に、秋山翔吾、中村剛也、メヒアら、主力が揃って順調。売りである長打力に加え、辻発彦監督が掲げる「1点にこだわる野球」も浸透しており、開幕から快調に白星を重ねている。
今年も本拠地で打ち負けるソフトB ハムは故障者続出で火の車……
一方でスタートダッシュに躓いたのが、2シーズン連続でAクラス入りを果たしているソフトバンク、日本ハム、ロッテの3球団だ。オフの補強にも余念がなかったソフトバンクは、開幕カードからロッテ相手に6戦全勝をマークしたものの、その他の4チームには最初のカードですべて負け越し、勝率5割前後をウロウロしている。
テラス席設置3年目の本拠地ゲームでは、4月14日のオリックス戦で0対9、同22日の楽天戦では2対11と大敗が目立つ。14日は3被弾、22日は13年ぶりとなる本拠地での5被弾を献上するなど、狭くなった本拠地では今季も相手チームのアーチが目立っている。
開幕から早くも2度の大型連敗を喫した日本ハムは、キャンプから続く故障トラブルに苦しんでいる。シーズン開幕後には二刀流・大谷翔平、守護神・マーティン、そして不動の4番・中田翔まで離脱。加えて開幕投手の有原航平、昨季の本塁打王・レアードが不調で、栗山英樹監督も打つ手がない状況だ。
オープン戦首位だったロッテは、チーム打率が12球団ワーストの.188と深刻な得点力不足に陥っている。新外国人のパラデスは早くも二軍降格の憂き目に遭い、代役の台頭も乏しい。幸い投手陣は持ち直してきたが、いずれにせよこの時期から投手陣頼みでは先が見えている。今後は新戦力の補強も含め、百戦錬磨である伊東勤監督の手腕に期待がかかる。
ハムとソフトBの巻き返しはあるか!? 楽天指揮官には2年目Vのジンクス
出遅れた日本ハム、ソフトバンク、ロッテの3チームだが、このまま低迷し続けるとは思えない。昨季の日本ハムは11.5ゲーム差をひっくり返し逆転優勝を成し遂げ、ソフトバンクも昨季は、4月中に借金が「3」まで落ち込んだ時期があった。ロッテはクライマックス・シリーズ進出がかかる最終盤に猛チャージをかけるシーズンが続いている。
それでも今季序盤戦の西武には、近年は少なかった堅実に勝ち抜く試合が増え、楽天の梨田監督は、近鉄時代の2001年、日本ハム時代の2009年と、過去に指揮したチームでは、いずれも就任2年目にチームを優勝へ導いている。オリックスはソフトバンクと激しい優勝争いを演じた2014年同様、下馬評が低いシーズンほど力を発揮する傾向にあり、これまで期待を裏切ってきた主力選手たちが今季は揃って好スタートを切った。
逆襲を予感させる4月の楽天、オリックス、西武の戦いぶりは揃って力強く、急激に悪化する気配は見えない。逆転現象を保ったままゴールテープを切るのか、それとも昨季の上位球団が巻き返してくるか――。5月以降の戦いからも目が離せない。
※本文中の今季成績は、すべて4月24日時点