文=Noriko NAGANO

北澤豪「前回大会以上の成績を獲得できる戦力」

 15年に行われた前回の第8回大会でベスト8の成績を残した日本代表は、ブラジル人のマルセロ・メンデス監督が引き続いて指揮を執り、今大会に臨む。マルセロ・メンデス監督は、ポルトガルなど各国のビーチサッカー代表監督を歴任し、UAEをW杯出場に導いた手腕の持ち主だ。ビーチサッカー全国大会をはじめとする試合の視察のほか、各地でビーチサッカークリニックを行い、普及活動を行うとともに、新しい代表選手の発掘に力を入れてきた。

 今年3月上旬にW杯アジア予選で3位となって出場権を獲得した日本代表はその後、フィジカル面の強化と最終選考を兼ねてトレーニングキャンプを行った。日本代表候補15人のほか、気になる選手をトレーニングマッチの相手メンバーとして招集し、W杯を戦うメンバーを吟味した。

 4月6日、日本サッカー協会(JFA)で行われたメンバー発表会には、選ばれた12人の選手全員が出席し、報道陣にお披露目された。北澤豪JFAフットサル委員長は「充実したメンバーがそろった。前回大会以上の成績を獲得できる戦力になっている」と自信を覗かせ、マルセロ・メンデス監督は「日本のためにがんばれる12人」と選手たちを紹介した。

 マルセロ・メンデス監督が選んだのは、GK(ゴールキーパー)に照喜名辰吾と河合雄介。FP(フィールドプレーヤー)に田畑輝樹、小牧正幸、飯野智之、後藤崇介、山内悠誠、茂怜羅オズ、原口翔太郎、赤熊卓弥、鈴木将人、大場崇晃の12人。アジア予選から3選手が入れ替わり、過去に6度W杯に出場したベテラン選手である田畑と山内、そして、W杯初出場となる鈴木が入った。守備的なポジションの田畑は1対1に強く、ゲームを作れる選手、山内(186センチ)と鈴木(188センチ)は前線に高さをもたらす選手たちだ。

チームを牽引するのはブラジル出身の茂怜羅オズ

©Getty Images

 キャプテンを務めるのは、ビーチサッカー界を代表する選手のひとりである茂怜羅オズ(ブラジル出身)だ。11年W杯で日本代表のコーチを務めたのちに日本国籍を取得し、13年に選手として初めてW杯に出場。そのパフォーマンスが評価され、ベスト8で姿を消したチームから選ばれることは珍しいゴールデンボール(最優秀選手賞)に次ぐシルバーボールを受賞し、世界から認められた。GKの前でバウンドさせるFKは必見だ。

 GKも攻撃に参加する戦術を採用する日本代表において、今年代表100キャップを達成し、チーム最多となる8回目のW杯出場となるGK照喜名辰吾もキーマンのひとり。アジア予選では照喜名のシュートを、ゴール前で大場や赤熊らがコースを変える形で何度も得点を奪っている。技術と経験を生かし、日本が優位な状態で試合が運べるように、最後尾からチームをコントロールする。

 アクロバティックなプレーやゴール後のパフォーマンスで楽しませてくれるのは、後藤崇介だ。海外での試合経験が豊富で、楽しいプレーや感動が伝わる試合をして、ビーチサッカーファンを増やしたいという思いを常に持っている。「個人としては勝ちたいし、得点もいっぱい取りたい。ただ、今までのW杯とは違う。これまでは付いていくほうだったが、チームを引き上げていくほうになった」と自覚するように、今大会で彼が担う役割は大きい。

 日本代表チームのストロングポイントはチームワークだ。チームは良い雰囲気の中で戦術理解を深め、完成度が高まっている。キャプテンの茂怜羅は「僕一人じゃ勝てない。チームじゃなく、家族として一人ひとり助け合って結果を残すことを考える。それが一番強いと思う。みんながしっかり協力してくれているので自信がある」と語り、日本の力を世界に示す準備は整っている。

 ビーチサッカー日本代表へのJFAのサポートも年々厚くなっており、遠征の回数も増え、強化が図られてきた。マイナースポーツにおいては、何よりも結果を出すことこそ、サポートの強化や注目度のアップにつながるということは、選手たちも十分理解している。9大会連続出場こそ果たしたが、今回はアジア3位での出場で、出場権の獲得は決して簡単ではなかった。その苦戦を糧にW杯では結果にこだわって戦う。

 今年はサッカーのU−20W杯、U−17W杯に日本代表が出場するが、サッカーファミリーの先陣を切って、ビーチサッカー日本代表が世界の舞台に立つ。


Noriko NAGANO

テレビ番組の取材でJクラブの練習場に足を運んだことをきっかけに、サッカーの現場に転向。その後、ビーチサッカーと出会い、W杯の取材は今大会で4回目となる。