巨人を自由契約になるも新天地は決まらず

衝撃の一報が走ったのは、10月13日。通算360本塁打を記録しているスラッガー・村田修一が、所属先の読売ジャイアンツから来季の契約を結ばないことを通告されたのだ。

今季の成績は118試合に出場して、打率.262、14本塁打、58打点。往時の活躍ぶりを思えば物足りない数字で、「若返り」を理由に放出されるのもやむを得ないように感じる。だが、開幕当初の起用法は代打中心で、モチベーションとコンディションを維持することが難しかった点も考慮するべきだろう。ある球界関係者は「役割さえ明確に与えてやれば、まだ3割20本を打てる力はある」と語るように、その打棒は錆びついていない。

巨人フロントが功労者の村田に配慮して、他球団と交渉しやすい自由契約にしたこともあり、村田の新天地はすんなり決まるだろうと思われた。だが、自由契約から2週間あまりが過ぎ、ドラフト会議を終えた10月29日現在、村田獲得のために公式に手を挙げている球団はない。

最有力とされた東北楽天ゴールデンイーグルスも、星野仙一球団副会長が出演したテレビ番組で村田獲得を否定するコメントを発している。なぜ、どの球団も村田獲得に名乗りを挙げないのか。そしてどの球団に獲得の可能性があるのかを考えてみたい。

球界の流れを変えつつある日本ハムとカープの成功

村田が本来守る三塁手が手薄のチームを探してみると、真っ先に挙がるのは東京ヤクルトスワローズ、千葉ロッテマリーンズという両リーグの最下位球団だ。今季、両球団で三塁手として最多出場したのは、ヤクルトは藤井亮太(90試合)、ロッテは中村奨吾(69試合)。ともにレギュラー安泰とは言い難く、去就が宙に浮いている村田に飛びついてもおかしくない。だが、ヤクルトは今季故障で1年を棒に振った川端慎吾が来季は戦線復帰する見込みで、ロッテは井口資仁新監督のもと、若手育成に舵を切るため村田獲得へ消極的と見られる。

和製大砲が不在ということで一度は「調査中」と報道された楽天も、実際に獲得したところで村田を生かすことができるか疑問が残る。和製大砲が不在とはいえ、外国人野手はウィーラー、ペゲーロ、アマダーと破壊力のある打者がそろっており、村田は右の代打や故障者が出た際のリザーブ要員になる可能性が高い。また、今季イースタン・リーグで18本塁打、66打点で二冠王に輝いた若手の大型打者・内田靖人のチャンスを奪いかねない。

なぜ、多くの球団は村田獲得に二の足を踏むのか。その背景には、「若手育成」に関する各球団の考え方の変化があるのではないか。影響を与えているのは、北海道日本ハムファイターズと広島東洋カープだろう。

両球団の特色は、ドラフト会議で指名、獲得した選手を手塩にかけて一流選手へと育成し、強化するという「ドラフト至上主義」だ。日本ハムは今季5位に沈んだとはいえ、過去12年間でリーグ優勝5回。広島は2年連続レギュラーシーズンを制している。

とくに日本ハムは小笠原道大(現中日2軍監督)、ダルビッシュ有(現ロサンゼルス・ドジャース)、糸井嘉男(現阪神)ら、看板スターが次々に球団を去りながらも、代わりになるスター選手が続々と現れる新陳代謝の良さで好成績を挙げている。その日本ハムの影響を大いに受けているのは、今季日本シリーズに進出したDeNAだ。

DeNAの高田繁GMは、かつて日本ハムでもGMを務めている。以前、高田GMにインタビューした際、「日本ハムのように次々と下から良い選手が出てくるような体制にしていきたい」という言葉を聞いたことがある。他球団で実績のある選手を呼ぶのではなく、自前で育成した若い選手を中心に据える。そんな日本ハム流の手法が筒香嘉智、梶谷隆幸に代表される生え抜きの成長につながり、今季の日本シリーズ出場につながった。

また、ヤクルトの監督に復帰した小川淳司監督は、今年度は編成部の責任部門であるシニアディレクター(SD)として携わっていた。小川監督もSD時代のインタビューで「ドラフトで指名した選手の育成、強化を最優先に考えている」と語っている。

つまり、DeNA、ヤクルトのように資金力が限られている球団は、日本ハム、広島が結果を残した「ドラフト至上主義」へと着実にシフトしている。この流れにロッテも続いていると見るべきだろう。ロッテは先日のドラフト会議で、未来の4番打者候補である高校生三塁手・安田尚憲を1位指名している。

年俸が安い、未来の主軸候補を育成するチームが増えていることは、村田のようなベテランにとって逆風でしかない。

村田獲得を考慮すべき、三塁手が最も手薄な球団は…

それ以外の球団に目を移しても、福岡ソフトバンクホークスは松田宣浩、埼玉西武ライオンズは中村剛也というリーグを代表する三塁手がおり、一塁手、DHを含めて戦力に厚みがあるため村田を必要とするとは考えにくい。阪神タイガースは連続試合出場記録を続行中の鳥谷敬が三塁に君臨する上、金本知憲監督が就任時に標榜した「超変革」が進んでいるだけに、ベテランの獲得には及び腰になりそうだ。中日ドラゴンズも売り出し中の福田永将に、未完の大器である高橋周平も控えるだけに現実的ではない。

そうなると、可能性があるのはオリックス・バファローズくらいではないか。オリックスの三塁レギュラーは、村田と同学年の小谷野栄一。今季は130試合に出場して打率.277とまずまずの成績を残したが、近年は故障がちで過去3年は規定打席を割っていた。DHとして出場することが多かった中島宏之も故障が多いだけに、フルシーズンを戦うには不安が残る。

もしオリックスが村田を獲得すれば、T-岡田、ロメロ、マレーロ、吉田正尚らとともに超重量打線を形成できるかもしれない。その一方で、今季わずか33盗塁に終わった機動力はますます損なわれることになり、チームとしてのバランスは悪くなりそうだ。このあたりは評価が分かれるところだろう。

そんなオリックスも手を挙げない場合、来季開幕まで村田の去就が決まらない可能性も十分に考えられる。もしそうなれば、2011年5月に横浜と契約を結んだ中村紀洋(現浜松開誠館高コーチ)のように、開幕後に戦力補強するケースを狙うしかない。いずれにしても村田にとって、これから試練の日々が続くことだろう。

一方で、ベテランの村田を獲得することによって、得られる恩恵も考えるべきだ。村田の高い打撃技術と知的財産は、数字以上の価値がある。キャンプから独自の調整法を見せる村田の一挙手一投足に、チーム内の強打者候補が刺激を受けることは容易に想像できる。

通算2000本安打達成まであと135本に迫りながら、野球人生の岐路に立たされた村田修一。このままバットを置くには、あまりにも早すぎる。再び希代のバットマンが存分に腕を振る機会が与えられることを、切に願っている。

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菊地選手

著者プロフィール 菊地選手

1982年、東京都生まれ。雑誌『野球小僧』『野球太郎』編集部勤務を経てフリーランスに。野球部研究家「菊地選手」としても活動し、著書に『野球部あるある』シリーズ(集英社/既刊3巻)がある。