12年間で巨人6回、ソフトバンク5回のリーグ優勝 対して阪神は…

78勝61敗4分、勝率.569――。2017年、阪神タイガースは優勝した広島東洋カープから10ゲーム差の2位でレギュラーシーズンを終えた。連覇を果たした広島に独走を許したとはいえ、セ・リーグ5球団の中では最後まで広島に食らいつき、優勝争いも演じた。

特に今季は就任2年目の金本知憲監督が昨年に続き若手を積極起用。エース藤浪晋太郎、在籍8年で6度の2ケタ勝利を記録したメッセンジャーらが離脱する中で昨季の4位から順位を上げたことは、来季以降に向けて大きな手ごたえとなったのは間違いない。

クライマックスシリーズでも本拠地・甲子園球場に3位・横浜DeNAベイスターズを迎える。2014年にはシーズン2位から日本シリーズ進出を果たしており、その再現なるかにも注目が集まっている。

若手の成長、チームの好調……。一見して、プラス要素しかないように思える近年の阪神。しかし、忘れてはいけない。この球団は2005年を最後に実に12年間、優勝から遠ざかっているのだ。多くのプロ野球ファンがご存知のように、阪神は80年代後半から00年代頭まで、万年Bクラス、万年最下位という「暗黒期」を経験している。そこに風穴を開けたのが2002年に監督に就任した星野仙一(現・楽天イーグルス副会長)。「闘将」と呼ばれた星野は負け癖が染みついていたチームに勝利への強い意志を植え付け、就任2年目の2003年にチームを18年ぶりのリーグ優勝へと導いた。星野監督の後を継いだ岡田彰布も、就任2年目の2005年にジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之の「JFK」を擁してリーグ制覇。3年間で2度のリーグ優勝を果たした阪神は「ダメ虎」から一気にリーグ屈指の強豪球団へと変貌を遂げた。

確かに2006年以降の阪神はコンスタントに優勝争いを演じ、Aクラスが指定席となっている。この12年間のリーグ順位を見ると、2位6回、3位2回、4位3回、5位1回。最下位は一度もなく、Aクラスは実に8回。「強豪」と呼ぶにふさわしい数字だ。しかし、これが12年間優勝から遠ざかっているという現実から、チーム、そしてファンの目をそらしているという見方もできるのではないだろうか。

阪神というチームは、日本プロ野球の中では巨人に次ぐ歴史を誇り、人気面、資金面でも12球団トップクラスの老舗球団だ。事実、2017年のチーム総年俸はソフトバンク、巨人に次ぐ3位。本拠地観客動員数はその2球団を押さえて堂々の1位に輝いている。人気もあり、資金力もあれば、当然チームは勝利へと近づくはず。しかし、阪神が優勝を逃し続けたこの12年間で、巨人は6度、ソフトバンクは5度、リーグ優勝を果たしている。人気面でも資金面でも大きな差はないはずなのに、なぜ阪神だけ優勝できないのか。

金本監督も苦言を呈したことのある育成システム

阪神と巨人、ソフトバンクの最大の違い。それは、「育成力」に他ならない。資金力があるぶん、FA選手や元メジャーリーガー、助っ人外国人の獲得に積極的なのは3球団の共通点。この部分においては、3球団に大きな差はない。阪神は決して補強の上手な球団というイメージはないが、この12年間を見ると外国人であれば、ウィリアムス、シーツ、マートン、ブラゼル、スタンリッジ、メッセンジャーなど、チームの軸となるような優良外国人を多く獲得している。元メジャーリーガー組でいっても、費用対効果は別として城島健司、福留孝介らの獲得は一定の成果を残し、今季FAで加入した糸井嘉男も満点とはいえないがレギュラーとしてしっかりと結果を残している。

ただし、毎年の優勝チームを見るとわかるように、優勝には「補強」と「育成」のバランスが不可欠だ。ソフトバンクは今季獲得したデスパイネが本塁打、打点の二冠王を獲得したが、その脇を固める柳田悠岐、松田宣浩、今宮健太らは生え抜きの主力。投手陣も東浜巨、千賀滉大といった生え抜き組にサファテ、バンデンハークといった外国人投手が加わり、盤石の布陣を誇っている。

Bクラスに終わった巨人は近年こそ「育成面」で苦しんでいるが、2007~2009年、2012~2014年にリーグ3連覇を果たした背景には、高卒の坂本勇人や育成出身の山口鉄也らの力が大きく、一時は「育成の巨人」とまで呼ばれるほど生え抜き組の活躍が目立っていた。

現在、プロ野球界で「育成力」に定評のある球団はやはり広島、日本ハムの2球団だろう。ただし、このモデルケースは阪神の参考にはならない。両球団は球団創設時から決して資金面に恵まれていたわけではなく、限られた予算の中でいかに自前の選手を育てるかに尽力し続け、それが近年、ようやく実を結んでいる。積み上げてきた年月、ノウハウの重みが違うのだ。

残酷な言い方かもしれないが、現在の阪神に「お金をかけずに選手を育成する」ノウハウは存在しない。広島や日本ハムを手本にしても、結果を出すには相当な時間がかかるだろう。やはり、モデルケースとして最適なのはソフトバンクのような球団だ。ソフトバンクは現在、二軍だけではなく三軍も設置。2016年には巨額を投じ、「HAWKSベースボールパーク筑後」というファーム施設を建設した。育成選手の保有数も今季開幕時点で12球団最多の24人と、その資金力を「補強」だけでなく「育成」にも惜しみなく注いでいる。

プロ野球にはなぜか「補強にはお金がかかる」というイメージが強い。それは間違いないのだが、実は「育成にもお金がかかる」ということはあまり叫ばれていない。確かにお金をかけずに選手を育成する方法もあるかもしれないが、練習設備などの充実やコーチ、スタッフの人件費など、充実した育成制度の実現にはそれなりに予算が必要になる。そこにいち早く気付いたのがソフトバンクであり、巨人だった。

筆者は以前、監督就任前の金本知憲氏にインタビューをしたことがあるが、その時も阪神の育成システムについて強い口調で苦言を呈していた。

「二軍を見ても、同じようなタイプしかいない。投手ならみんな同じようなきれいなフォームでクイックやバント処理がうまい器用なタイプ。野手ならバットコントロールに優れ、足が速くて小技のきくタイプ。要は、すぐに一軍に上がれる可能性の高い『使い勝手の良い』選手ばかり」

確かに金本監督就任前の阪神には、そういった選手が多かった印象が強い。裏を返せば一軍ですぐに使えるような完成された選手でなければ、一軍レベルに育て上げることができない、ともとれる。ある意味、チーム全体が選手の育成を放棄していたのが、この12年間、優勝から遠ざかってしまった原因だったのかもしれない。

12年間で2位6回、3位2回。この結果は阪神が「強豪球団」に変貌した証などではなく、資金力をフル活用した「補強の力」だけでつかみ取れる限界値だったのではないだろうか。

幸いにして、金本監督の就任前後から、球団は「育成」に大きく舵を切った。昨季は北條史也、原口文仁、横田慎太郎、江越大賀、髙山俊らが、今季は中谷将大、大山悠輔が台頭。あとは今季苦しんだ藤浪晋太郎を筆頭に、若手投手陣がしっかりと育ち、野手陣が一本立ちしてくれれば……。

阪神の人気、そして資金力は大きなアドバンテージとなる。その利点をいかに「育成」に落とし込めるか。

「下剋上」で日本一になるために必要なものとは…

今季の阪神は12年ぶりのリーグ優勝を逃した。しかし1985年以来、32年ぶりの日本一への道はまだ残されている。10月14日に開幕するクライマックスシリーズを勝ち上がれば、「下剋上」で日本シリーズに進出することができるのだ。

当然、ファーストステージで対戦するDeNA、勝ち上がった際にファイナルで対戦することになる広島は、簡単な相手ではない。阪神が日本シリーズへコマを進めるためには、シーズンの戦いに+αが求められる。その+αこそが、未知数の生え抜き若手選手なのだ。

金本監督がルーキー・大山悠輔の4番起用を示唆していることからも分かるように、短期決戦では「シリーズ男」と呼ばれる選手が勝敗の行方を大きく左右する。経験豊富、百戦錬磨のベテラン勢はある程度計算できるが、そこに今季頭角を現した若手が「爆発力」を加えることができれば、日本シリーズ進出、その先の日本一はグッと近づく。

光は、間違いなく差し込んでいる。優勝から遠ざかっているこの12年間。届きそうで届かなかった頂点をつかむために、阪神には今、大きな変化が求められている。


<了>

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花田雪

著者プロフィール 花田雪

1983年生まれ。神奈川県出身。編集プロダクション勤務を経て、2015年に独立。ライター、編集者として年間50人以上のアスリート・著名人にインタビューを行うなど、野球を中心に大相撲、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、さまざまなジャンルのスポーツ媒体で編集・執筆を手がける。