ブラジル大会以上の躍進を目指す南米の雄

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前回のブラジル大会では準々決勝でブラジルに惜敗したものの同国史上最高となるベスト8に進出したコロンビア。ハメス・ロドリゲスが大会得点王に輝くなど、ブラジル大会で躍進したコロンビアは、大混戦だった南米予選を4位で通過。2大会連続で檜舞台に名乗りを上げてきた。

アルゼンチン人の名将、ホセ・ペケルマン監督のスタイルが浸透し切ったコロンビアだが、2位で予選を通過した4年前の安定感は欠くものの、長丁場の南米予選ではやはりその地力の高さを見せつけた。

前回の南米予選では最少失点で2位通過。アルゼンチン人監督らしく守備の規律を疎かにしないペケルマン監督ではあるが、やはりチームのストロングポイントは前線に数多く揃う世界的な攻撃のタレントたちである。

数多くのタレントを擁する攻撃陣

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基本布陣は4-2-3-1。ワントップを務めるラダメル・ファルカオとトップ下で躍動するハメス・ロドリゲスが南米予選でも攻撃の軸を務めて来た。前回のブラジル大会は怪我で棒に振ったファルカオとバイエルン・ミュンヘンで躍動するハメス・ロドリゲスはペケルマン監督が絶対的な信頼を置くタレントたちだ。

予選ではブラジル代表のネイマールと並ぶ6得点をマークし、アシストも3。シュート数と決定的なパスの本数のいずれもチーム最多となるブラジル大会の得点王は、名実ともにコロンビアのエースと呼べる存在だ。

ウインガーのフアン・ギジェルモ・クアドラードや、ACミランのカルロス・バッカ、ボカ・ジュニアーズで活躍中のエドウィン・カルドナなど脇を固める選手たちもビッグクラブで活躍する一級品が揃っている。

大量失点もあった南米予選

南米予選では一時2位に浮上したこともありながら、やや好不調の波が目立ったのは懸念材料の一つだ。その要因の一つは守備陣の不安定さだった。

前回の南米予選では最少失点を誇った守備陣だったが、今回の南米予選ではウルグアイやアルゼンチン相手にそれぞれ3失点する試合もあり、思わぬ脆さも露呈した。もっとも、波の荒さが指摘された南米予選でも終わってみれば失点数は3番目の少なさで18試合、19失点。GKダビド・オサスナの不安定さなどが気がかりではあるが、本大会までにはペケルマン監督が修正を施して来るはずだ。

最大の強みはペケルマン監督の存在

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世界的なアタッカーたちを擁するコロンビアだが、やはり最大の強みは知将、ペケルマンの存在ではないだろうか。2006年のドイツ大会ではアルゼンチンを率い、自身にとっては3度目のワールドカップに挑むペケルマン。コパアメリカでは4-4-2の布陣も用いたが、フォーメーションにこだわることなく、臨機応変に戦う柔軟性も持ち合わせている。「戦術マニア」としても知られる名将は、9月5日に行なわれた南米予選のブラジル戦でもその巧みな手腕を見せつけた。

1点を先制されたハーフタイムには布陣を4-4-2に変更。チッチ監督が率いるブラジルの弱点でもある空中戦に付け込み、ファルカオがゴール。理論尽くめの選手交代で、1対1のドローに持ち込んだ。チッチ監督の就任以来9連勝中だったブラジルの白星街道をストップしているのだ。

前回のブラジル大会のグループステージ最終節では既に決勝トーナメント進出を決めていたこともあり、主力8人を温存。それでも4-1で圧勝している日本に対して、今回も徹底的な分析を施して来るはずだ。

全力で日本に挑んでくるコロンビア

コロンビア、セネガル、ポーランドと同組の日本にとってグループステージ突破の鍵を握るのはやはり、コロンビア戦の成否である。

日本が過去出場した5大会のうち、南米勢と同居した3大会と初戦で敗れた3大会はいずれもグループステージ敗退の憂き目を見ている。

ワールドカップの大会初戦では往々にして、凡戦を見せる傾向もある南米勢ではあるが組み合わせ抽選会後にペケルマン監督は母国メディアの取材に対して「我々はブラジル大会と同様に日本と戦うが、初戦と第3戦とでは状況は違う。日本を弱い相手だと思ってはいけない」などと話している。

グループHの力関係を考えれば、コロンビアにとって日本戦での勝ち点3はマストのミッション。主力8人を温存したばかりか、後半にはワールドカップでの最年長出場となる43歳のGKモンドラゴンを起用する余裕を見せた当時と異なり、本気のコロンビアが日本の前に立ちはだかることになる。

日本のカギを握る屈辱を味わった男たち

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ハメス・ロドリゲスへの依存度が高いコロンビアだけに、バイエルン・ミュンヘンの背番号11を封じることは不可決のミッションだが、身体能力の高いバッカやテオ・グティエレス、ボルハら日本が苦手とするフィジカル自慢のアタッカーたちへの対応もポイントになりそうだ。

日本の勝機はいかにロースコアに持ち込み、コロンビアの焦りを引き出せるか――。川島永嗣や吉田麻也ら前回大会の屈辱を知る男たちの踏ん張りは不可欠になる。

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下薗昌記

サッカーライター。1971年大阪市生まれ。テレ・サンターナ率いるブラジル代表に憧れ、ブラジルサッカーに傾倒。大阪外国語大学外国語学部でポルトガル語を学ぶ。朝日新聞記者を経て2002年にブラジルに移住し永住権を取得。南米各国で600試合を取材した。愛するチームはサンパウロFC。ガンバ大阪の復活劇をテーマにした『ラストピース』が2016年のサッカー本大賞に。