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2002年大会以来の好成績目論む

FIFAランキングではポーランドの7位、コロンビアの13位には劣るものの23位につけているセネガル。アフリカ勢では最も高い位置にいる。ちなみに、日本は55位だ。確かにFIFAランキングは単純に「強さ」を測る指標ではない。しかしながら、日本が間違っても「格下」扱いできる相手ではないことはすぐ理解できるはずだ。
 
2002年日韓W杯、ブルーノ・メツ率いるセネガル代表は世界を驚かせた。当時の世界王者フランスに開幕戦で1-0の勝利、続くデンマーク戦に1-1、ウルグアイ戦は3-3という堂々たる成績でGLを突破。W杯初出場にして、ベスト8に進出したのだ。エルハッジ・ディウフ、パペ・ブバ・ディオップら有力選手を擁し、大会後は21名の選手がヨーロッパでプレーするなど世界に与えた衝撃は大きかった。
 
あれから16年。4大会ぶりにW杯予選を突破したチームを率いるのは、2002年当時のキャプテンであるアリュー・シセ。ディウフと同じ衝撃を与えうる10番サディオ・マネ(リバプール)を筆頭に、多くの選手が若くしてヨーロッパでサッカーを学んでいる。この事実も、2002年のチームと共通している。名実ともに、2002年W杯の再現を予感させるチームである。
 
アフリカンの荒削りなイメージは、捨てるべきだ。思慮深いキャプテン・シェイフ・クヤテ(ウェストハム)は、「シセ監督がすべてを変えた。マネや私が中心なのではない、最も尊重されるべきはチーム。そういうメンタリティを植え付けたのだ」と語っている。クヤテにMFイドリッサ・ゲイェ(エバートン)、DFカリドゥ・クリバリ(ナポリ)らを中心とした組織的なディフェンスと、マネを中心としたスピーディなアタックを持つ、ヨーロッパナイズされた好チームである。

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サッリ・ナポリの錠前・クリバリ

マウリツィオ・サッリが就任した15-16シーズン以降、4-3-3を基本フォーメーションとし、トータル・ゾーンと5レーン理論を活用したポジショナルプレーで驚きの結果を残してきたナポリ。セリエA15-16シーズンは2位、16-17シーズンは3位、今季は15節終了時点でも2位につけている。その強さは、もはや疑いようがない。
 
そのサッリ・ナポリで、DFラインに錠前をかけるのがカリドゥ・クリバリ(26歳)だ。187センチながら非常にスピードがあり、ウラへのカバーリングは抜群。多少抜け出されても、斜め後方からボールだけをさらうスライディングタックルの技術も持つ。さらに、ボールを奪った後も落ち着いて最初のパスをつけられる。身長を活かしてセットプレーでは攻撃時に得点源になり、守備時には頼れる壁になる。ストライドの長さを活かし、相手FWが収めたボールを背後からつついて奪取するプレーも得意だ。

ナポリはここ2シーズンで32失点、39失点。試合数とほぼ同じ、1試合平均ほぼ1失点以下という恐るべき堅牢さを誇る。そのかなりの部分で、クリバリの貢献があるのは疑いない。多くのビッグクラブから巨額のオファーを受けながら、ナポリが頑として手放さないのも頷ける。
 
ポジション的には左CBとなり、マッチアップするのは現行メンバーでは浅野拓磨となる可能性がある。ともにスピードを武器にするが、クリバリはセリエAのアタッカーたちを沈黙させてきた。日本のアタッカーにとっては悪夢となる存在だ。

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変幻自在のアタッカー、サディオ・マネ

攻撃の中心は、10番をつけるアタッカー・マネ(25歳、リバプール)。セネガル出身だが、キャリアを開始したのはアカデミー・ジェネラシオン・フット(セネガルのフットボールアカデミー)。プロデビューは、現在川島が所属するFCメス(フランス)。アフリカンな荒削りさは、良い意味で持っていない。戦術的に洗練されながらも爆発力を持つ、非常に厄介なFWだ。
 
メスでは目立った活躍はなかったものの、2012年8月31日に今をときめくラルフ・ラングニック(現RBライプツィヒ)に見出されレッドブルに移籍。その後、サウサンプトンを経て2016年からリバプールでプレーしている。
 
リバプールでは右サイドのFWを担当する。身体能力はもちろん基本技術も高く、周囲を使うことも独力で仕掛けることもできる。利き足は右だが、右サイドから中央に流れて左足でのフィニッシュを用いることも。サイドで幅を取りつつハーフスペース攻略を常に伺い、スピードを活かして一気にウラを取り、ゴールを陥れる。常に複数の選択肢を持ち、頭脳をフル回転させ最適な選択を取り続ける。DFとしては的を絞りにくい、非常に厄介な選手だ。
 
なお、マネは吉田麻也とサウサンプトンで2シーズンを共に過ごしており、お互いクセを知り尽くしている。吉田が情報を得られる反面、マネもまた吉田のクセを知っている。そういう意味で、幸いと評価すべきか微妙なところ。

日本はどう攻略すべきか?

再度書くが、「いわゆるアフリカン」のイメージは捨てたほうがいい。
 
例えばキャプテンを務めるMFクヤテはベルギーとの二重国籍を持ち、17歳のときにRWDMブリュッセルでプロのキャリアをスタートしている。DFディアロ・MFディオップはレンヌ、DFムベンゲはトゥールーズ、MFディアメはランスBと、若い頃にフランスでキャリアをスタートさせた選手が多い。
 
これは、2002年W杯のチームとの大きな共通点でもある。アフリカでずっと育った選手よりも、ヨーロッパでサッカーを学んだ選手のほうが多い。ブラックアフリカンのパワーを持ち、ヨーロッパで戦術を叩き込まれたハイブリッドな強さは、2002年W杯の再来を予感させる。
 
W杯予選3次リーグでは南アフリカ、ブルキナファソ、カーボベルデと同居し、4勝2分の無敗で出場権を獲得した。それほど爆発力があるわけではないが、主審の不正により再試合になった試合を含め南アフリカにはホーム・アウェーとも勝利。ブルキナファソには2分けしたものの、カーボベルデにもやはり2勝。3次リーグ6試合で喫した失点は、わずか3である。
 
日本は、「間合いはアフリカン」「チームはヨーロッパ」という2面性を持つチームをどう攻略すべきか。第二戦であり、セネガルに比べれば日本のほうがW杯における場数は踏んでいる。ペース配分や移動、1ヶ月に渡る時間の過ごし方など、日本がアドバンテージを握れる部分もあるはずだ。日本は初戦でコロンビアと、セネガルはポーランドと対戦。その結果を踏まえて戦い方も変わってくるだろう。ハリルホジッチ監督の差配に注目したい。

<了>

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VictorySportsNews編集部