前編はコチラ ルイ・ヴィトンはなぜ世界的なヨットレース、アメリカズカップをサポートしているのか?

アメリカズカップのトロフィーケースはルイ・ヴィトン製

ヨットファンは、ルイ・ヴィトン カップと言えば、アメリカズカップの挑戦艇決定戦を真っ先に思い浮かべる。現在はレギュレーションの変更もあり、純粋な挑戦艇決定レースと言えなくなっているが、長らくアメリカズカップを支えてきたルイ・ヴィトンには、もう一つ重要な役割がある。

それが、1851年から継続使用されている世界最古のトロフィーを守るトラベルケースの作成だ。長い時間をかけてその価値を高めてきたトロフィーを安全に運ぶためにルイ・ヴィトンが用意したのは、こちらも長い年月を経て培ってきた技術の粋を集めた特製のトロフィーケース。

ルイ・ヴィトンの創業者は、トランク製造&荷造り職人だったルイ・ヴィトン。旅行鞄専門店からスタートし、平蓋トランク、防水加工された特殊コットン素材を用いた軽量トランクなど、革新的な旅行用トランクを次々に発表し、名声を得ていった。

ルイ・ヴィトンのものづくりの原点はトラベリング・トランクであり、物を運ぶという機能性、安全性こそがブランドの最大の魅力でもある。

急激な工業化に伴い、馬車から機関車、蒸気船、そして飛行機へと輸送機関が様変わりしていく中で、ルイ・ヴィトンのトランクは、常に大切なものを運ぶための最高の道具であり続けた。

テニス、ラグビー、サッカーのビッグイベントのトロフィーを作成

©Getty Images

こうした機能性、堅牢性は当然、現代にも受け継がれている。スポーツにおける“勝利の象徴”であるトロフィー、とりわけ、世界的規模で注目を集める国際大会、伝統と格式を持つビッグイベントのトロフィーを運ぶケースとして、ルイ・ヴィトン製のオーダーメイドのトロフィーケースが採用されている。

アメリカズカップについては後ほど紹介するとして、ルイ・ヴィトンが手がけるその他のイベントのトロフィーケースを見てみよう。

母国フランスの全仏オープンテニス、ローラン・ギャロストーナメントのトロフィーケースもルイ・ヴィトン製だ。女子チャンピオンに贈呈されるスザンヌ・ランランカップ、男子王者に贈られるムスクテールカップを収納するためのケースは、それぞれの大きさ、形に合うように細部まで細かい手作業でつくられている。

© LOUIS VUITTON / Sebastian Zanella

内装は、ローラン・ギャロスを象徴するクレー・コートの赤土をイメージしたテラコッタカラーで彩られている。フロントにはテニスコートのラインを象徴する「V」のラインが入る。

同じように2015年からは、ラグビーワールドカップ、2010年からはFIFAワールドカップのトロフィーケースも製作している。

© LOUIS VUITTON MALLETIER / Kirstin Sinclair

こうしたスポーツ・トロフィーケースの製作は、単に大会側が機能性を求めた結果ではない。旅とともに発展してきたルイ・ヴィトンにとっても、イベントとその歴史共に歩むことに大きな意義を感じている。

© LOUIS VUITTON MALLETIER

「ルイ・ヴィトンは創業当時から偉大な冒険家やパイオニアの旅を支えてきました。その中には、飛行家のローラン・ギャロスや、テニスプレイヤーのスザンヌ・ランランも含まれています。エレガンスと革新の融合を掲げるルイ・ヴィトンは、ローラン・ギャロスにおける『飛行』、スザンヌ・ランランにとっての『テニス』のように、常に『旅』における変革を成し遂げてきました」

これは、ルイ・ヴィトンのマイケル・バーグ会長兼CEOが、2017シーズンのトロフィーケース制作に際して発表したコメントの一節だ。テニスの全仏、ラグビーとサッカーのワールドカップ、そしてセイリングレースのアメリカズカップ。これらの大会はいずれも、スポーツの大会以上の意義と価値、格式と歴史を有している。

世界最古のトロフィーを守る世界最高のクラフツマンシップ

©Getty Images

2017年のアメリカズカップは、ディフェンディングチャンピオンのオラクル・チーム・USAを下したエミレーツ・チーム・ニュージーランドの優勝で幕を閉じた。世界各地を転戦する挑戦艇決定戦も、ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・ワールドシリーズと名を変えて、さらなる活況を見せている。第35回大会には、日本のソフトバンク・チーム・ジャパンが参戦し、2016年11月には福岡でレースが開催されたことも大きな話題を呼んだ。

ルイ・ヴィトンが製作した第35回大会の特製ケースは、アメリカズカップの新しいロゴをイメージしたスカーレットレッドの「V」マークがあしらわれた。このトランクは、3人の熟達した職人たちが400時間をかけてパリ郊外、アニエールにあるアトリエで手作りしている。トランク内部には、トロフィーを傷つけないために完全オーダーメイドでつくられた内装が施され、マイクロファイバーのライニングが内蔵されている。伝統のクラフツマンシップと最新技術を取り入れる先進性はルイ・ヴィトンとアメリカズカップに共通する特徴でもある。

“サヴォアフェール”と呼ばれる匠の技で、伝統的なスタイルと技術的なイノベーションを組み合わせて製品づくりを行う職人たちは、ルイ・ヴィトンにとっての乗組員、クルーであり、技術面で船を支えるスタッフでもある。

世界最古にして最新のハイテクノロジーが集結するアメリカズカップは、ルイ・ヴィトンが持つ世界最高のクラフツマンシップに支えられている。

(取材協力=LOUIS VUITTON)

ルイ・ヴィトンはなぜ世界的なヨットレース、アメリカズカップをサポートしているのか?

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大塚一樹

1977年新潟県長岡市生まれ。作家・スポーツライターの小林信也氏に師事。独立後はスポーツを中心にジャンルにとらわれない執筆活動を展開している。 著書に『一流プロ5人が特別に教えてくれた サッカー鑑識力』(ソルメディア)、『最新 サッカー用語大辞典』(マイナビ)、構成に『松岡修造さんと考えてみた テニスへの本気』『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』(ともに東邦出版)『スポーツメンタルコーチに学ぶ! 子どものやる気を引き出す7つのしつもん』(旬報社)など多数。