4年前、本番直前は3連勝を収めたが…

5月31日、W杯ロシア大会に臨む日本代表の23選手が発表された。W杯ブラジル大会から連続選出されたのは11人。1分け2敗で1次リーグ敗退したチームからの上積みがあるのかは不明だが、ブラジル大会と同じ惨敗だけはゴメンだ。それを避ける可能性を高めるには、やはり初戦コロンビア戦(6月19日、サランスク)のデキ。この試合を最高のコンディションで迎えることが大事になってくる。

まず時計の針を4年前に戻したい。アルベルト・ザッケローニ監督に率いられたチームは「W杯優勝」という壮大な目標を掲げていた。MF本田圭佑にMF香川真司、FW岡崎慎司やDF長友佑都らはキャリアの絶頂期を迎えていた。

4年前は5月12日にW杯の最終メンバー23人が発表され、そこから鹿児島県指宿市で国内事前キャンプを実施。気温が高くなる中、連日フィジカルトレーニング中心の2部練習を敢行した。そして同29日に米国フロリダ州マイアミでのキャンプへと移り、親善試合2試合。6月8日にブラジル国内の前線基地であるブラジル・サンパウロ州イトゥー入りし、14日の初戦コートジボワール戦(レシフェ)へと準備を進めた。

5月27日に行われた壮行試合のキプロス戦では1-0の勝利を収めた。気温30度を超えるマイマミで行われたコスタリカ戦とザンビア戦でも競り勝っている。大会直前の試合で3連勝して本大会に向かったチームだが、初戦のコートジボワール戦の後半になると急に足が止まってしまった。最も大事な初戦で逆転負けを喫すると、続くギリシャ戦もスコアレスドロー。そしてグループステージ最終戦はコロンビアに蹂躙されて、ブラジルでの旅をあっけなく終えた。

振り返ると、このチームのコンディションのピークはマイアミにいたときにきていた。ブラジルW杯の1次リーグ3試合はともに高温の中で行われた。指宿合宿では強度の高い走り込みを課し、暑熱対策も行った。香川も「クラブでもこんな走り込みをしたことがない」というほどハードな負荷をかけた。そこで一度目のピークを持ってきて、フロリダで調整し、イトゥー入りしてから2度目のピークを持ってくる算段だったのだろう。だが指宿で急激に上げたコンディションはマイアミで一息つくどころか、絶頂にまで達していた。

また誤算もあった。海外組のシーズンは夏にリーグが開幕して5月中旬に終幕。その激戦の疲労を抜くよりも、暑熱対策を優先させたことは裏目に出た。イトゥー入りしてからは海外組の状態が下がり、国内組のFW大久保嘉人が最も良い状態だった。当時を知る日本代表の早川直樹コンディショニングコーチは「ブラジルの時の反省を生かさないといけない」と口にしたことがあるが、それほど苦い経験として残っている。この教訓は、現在のところ生きているといって良いかもしれない。

4年前の反省を生かしたコンディションづくり

5月21日、日本代表は国内キャンプを千葉県習志野市秋津でスタートさせた。初日から合流した本田やFW宇佐美貴史ら海外組10選手は軽めのトレーニングに終始。時折、笑い声が聞こえ、リラックスしたムードを漂わせていた。ヴァイッド・ハリルホジッチ氏が電撃解任され、西野朗監督が新しく就任。ロシアW杯開幕までに残された時間は1カ月だけだったが、戦術練習に着手したのは国内外の全選手がそろった26日からだった。宿舎でフィジカルトレーニングをこなす選手もいたようだが、すべて午後の1部練習。戦術の落とし込みよりも、上げ過ぎないコンディション調整を優先させていた。W杯壮行試合ガーナ戦(5月30日)の翌日はトレーニングの予定だったが、そこも急きょ取りやめ。移動日も含めて実質2日間のオフを与えた。また26日には選手やスタッフの家族も招いて決起集会を実施。今回の秋津合宿は計10日間の長丁場だっただけに、メンタルケアも施した。

海外キャンプ地、そしてロシア入り後の前線基地選びも4年前の教訓が活かされている。チームは2日にオーストリア・インスブルックへ移動したが、インスブルックとロシア国内での前線基地カザンとの時差は1時間しかない。この時期のカザンは平均気温18度で、インスブルックも17度前後。湿度が低く、日中は過ごしやすいなど気候も似ている。数々のキャンプ地候補がある中で、日本協会はロシアと条件が近い地を選んだ。またカザンも初戦コロンビア戦のサランスクとは気候が似ており、さらに約400キロと近距離。イトゥーとレシフェが約2700キロも離れていたことを考えれば、移動距離が少ないことは心身的負担面の軽減につながるのは間違いない。田嶋幸三日本サッカー協会会長はハリルホジッチ氏を解任した際に「勝つ可能性を1%でも2%でも上げたい」と話していたが、その可能性を高めていく努力をピッチ外ではしている。

残り3週間弱。インスブルック入り後は本格的にスイッチを入れた。4日は西野体制では初の2部練習を敢行した。午前中はサーキットトレーニングやシャトルランなどのフィジカルメニューをこなし、午後には実戦形式練習をした。西野監督は左太もも打撲でガーナ戦を欠場したMF乾貴士や、負傷から復帰したばかりの香川と岡崎も選出。チーム全体の低調なパフォーマンスに、私も含めて懐疑的な目を向ける方も多いが、当の指揮官は「来月19日にベストパフォーマンスを出してくれる選手を、いろんな可能性を考えた中で選ばせてもらった」と平然としていた。乾は3日の練習からフルメニューを消化。やっと23人全員が揃った。つまり5月31日現時点でのコンディションの善し悪しは問題視していなかった。

珠算の得意な西野監督のことだ。頭の中にはコロンビア戦で全選手がトップコンディションになる計算ができているのだろう(また、そうであってほしい)。むろん、コンディションが良いからといって勝てるほど、サッカーは甘くないというのは承知しているが、西野監督の下でじっくりとチームづくりができたわけではないだけに、4年前の反省は生かしてほしい。

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飯間健

著者プロフィール 飯間健

1977年9月24日、香川県高松市生まれ。02年からスポーツニッポン勤務。06年からサッカー担当。名古屋、G大阪、浦和、鹿島、日本代表などを担当する。