異なる感情の残った2大会連続の準優勝

©大会公式HP

1つ目の銀メダルには喜びが、2つ目の銀メダルには、悔しさと成長の手応えが詰まっている。中国の南京市で開催されていたバドミントンの世界選手権は、5日に最終日を迎え、女子ダブルスで前回銀メダルの福島由紀、廣田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)は、ファイナルゲームに迎えた20-18のチャンピオンシップポイントを物にできず、20-22で松本麻佑、永原和可那組(北都銀行)に逆転負けを喫して初優勝を逃した。

前回わずかに届かなかったタイトルを目の前にして、勝利を望む気持ちが膨らんだ。前回が準優勝だからこそ優勝を手にしたい福島、廣田に対し、初出場の松本、永原は失う物がない。心理面でプレッシャーを受けたのが前者なのは間違いない。廣田は「(ファイナルゲームは)ずっとリードしていた展開だったので、正直いけると思っていたし、自信もあった。それでも1本、1本、まだまだと思っていたつもりだけど、無意識に勝ち急いだかもしれない。相手がレシーブで待っているのに、力んでスマッシュばかりになってしまった部分があったかなと思う」と勝利目前で逆転を許した展開を振り返った。

日本勢同士の対戦に敗れた。つまり、他の日本のペアが金メダルに輝いたため、昨年のように日本勢の最高成績として報じられることはない。準優勝は2度目で、2人にとっての最高成績でもない。しかし、2年連続という記録に大きな価値が詰まっている。福島は「正直、逆転負けで今は悔しい気持ちだけど、昨年は一生懸命というか、がむしゃらにやった結果の銀メダル。今大会は、昨年から1年間、ツアーを回らせてもらって経験を積んだ中で、優勝を目標に置いて臨んだ大会での銀メダル。昨年とはまた違う意味での銀メダルだったんじゃないかなと思うけど、勝てるチャンスはあったので、すごく悔しい」と悔しさをのぞかせながら、勢い任せではなく、着実に頂点に近付けた実感を明かした。決勝で敗れたとはいえ、スコアに差はない。むしろ、2人だけを見れば、1年間の着実な進歩を証明した大会だった。福島、廣田は第2シードでの出場。優勝候補として臨み、プレッシャーや相手からの警戒をかいくぐって優勝目前まで進める力を示した。

世界ランク1ケタに4ペアがひしめく日本ダブルス

大きな注目を集めた一戦で敗れたインパクトが大きく残ってしまうが、勢いに乗った強打のペアを相手に、押し込まれながらもラリーから崩していくスタイルでチャンスを作った。日本バドミントン協会の銭谷欽治専務理事は「今日の試合を93分やって、今回の世界選手権のベストゲームだね、女子ダブルスの。間違いない。日本勢同士の対決だったけど、お客さんにも喜んでもらえた」と決勝戦の試合内容を称賛した。試合を思い返せば思い返すほど、「敗れてなお強し」のイメージが沸いて来る。

世界選手権の結果を反映した最新の世界ランク(8月9日付)は、1位。最も安定して力を発揮できるペアだ。5月にバンコクで行われた国別対抗戦のユーバー杯では、2016年リオデジャネイロ五輪の金メダリストである高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)に代わって日本のエースペアとしてチームをけん引。37年ぶり6回目の優勝に大きく貢献した。女子ダブルスは、世界ランク1ケタに4ペアがひしめく状況で、2020年の東京五輪に向けてし烈な代表争いが展開されることになる。その中でも、現時点で先頭に立っているのは、彼女たちだ。次戦は、18日に開幕するアジア競技大会。団体戦では、再びエースペアとしての活躍が期待される。

ただし、負けた事実から目をそらすことはできない。2点は、わずかな差だが、金メダルと銀メダルには、大きな差があると2人は痛感している。昨年は、世界選手権だけでなく、スーパーシリーズ(現ワールドツアー)の上位成績者だけが出場するスーパーシリーズ・ファイナルズ(現ワールドツアー・ファイナルズ)も準優勝。今年3月に行われた、ワールドツアーの中でも最も格式高い全英オープンも準優勝だった。手ごたえを感じたとしても、満足するわけにはいかない。

廣田は「2人のレベルアップは、着実にできている。そこは自信にしたい。ただ、決勝まで進んで負ける試合が多い。何が足りないのかを見つければ、五輪につながると思う」とシルバーコレクター返上を誓い、福島は「最大の目標としては五輪があるので、続いていく試合を経験として積み重ねて、つなげたい。もっと強くなって頑張っていきたい」とさらなる成長に意欲を示した。今後、アジア大会やワールドツアーで引き続き、日本のエースペアとしての存在感を示し、世界タイトルを獲得して東京五輪へ。進化を示した2つ目の銀メダルは、その道筋の通過点に過ぎない。

桃田賢斗の1年1ヶ月。あのカジノ事件から積み上げた、45勝1敗の価値。

2016年に開催されたリオデジャネイロ五輪で、メダル獲得も期待されていた桃田賢斗。当時21歳の桃田は世界ランキングで2位となっていた。しかし、大きな期待を背負っていた若者は、違法カジノ店で賭博をしていたことが明らかになり、日本代表の強化指定から外れ、世界ランクは抹消。さらに無期限の出場停止処分も受けた。その後、1年1カ月の謹慎期間を経て今年5月に開催された「バドミントン日本ランキングサーキット大会」で復帰、同大会で優勝を飾った桃田は、東京五輪出場を目指し、世界ランクを上げるために自費で国際大会に参戦している。

VICTORY ALL SPORTS NEWS

なぜスポーツ界に不祥事が続くのか?“内向き目線”が生み出す閉じた社会

日本ボクシング連盟の助成金不正流用、不正判定などの疑惑が世間を騒がせています。今年3月には、日本レスリング協会の強化本部長によるパワハラ・セクハラ問題が発覚、5月には日本大学アメリカンフットボール部の危険タックル指示問題が起き、メディアでアマチュアスポーツ界の不祥事を取り上げられない日がないほどです。こうした問題が立て続けに起きるのはなぜでしょう? その理由の一端に「日本のスポーツ界の構造的な問題」があるのかもしれません。

VICTORY ALL SPORTS NEWS

日本バドミントン界の「進化」とは? 協会専務理事の語る育成強化とインテグリティ(NSBCレポート/銭谷欽治)

「2020年の先を見据えた、スポーツの未来を考える」をコンセプトに、スポーツをビジネスとして考え、実行に移せる人材を輩出していく学びの場『Number Sports Business College』。今回ゲストに迎えられたのは、日本バドミントン協会専務理事、銭谷欽治氏だ。1996年から三洋電機女子チームを全日本実業団バドミントン選手権大会4連覇に導いた名監督としても知られている。銭谷氏が描くバドミントンの未来とは――?(取材・文:出川啓太 写真:小林靖)

VICTORY ALL SPORTS NEWS

リオのリベンジ達成で世界女王に 「世界一しつこい女」を証明した奥原希望

第23回バドミントン世界選手権は8月27日に大会最終日を迎えた。女子シングルスの決勝に臨んだ日本の奥原希望は、リオデジャネイロオリンピックの銀メダリストであるシンドゥ・プサルラ(インド)を破り、大会初優勝を成し遂げた。日本人史上初となる同種目の金メダリストは、いかにして誕生したのか。

VICTORY ALL SPORTS NEWS

日本バドミントン躍進の源流にある「オグシオ」

リオデジャネイロ五輪でかつてない躍進を遂げた日本のバドミントン。その元をたどれば、かつて2000年代に注目を浴びた美人ペアの存在があった。

VICTORY ALL SPORTS NEWS
平野貴也

著者プロフィール 平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト『スポーツナビ』の編集記者を経て2008年からフリーライターへ転身する。主に育成年代のサッカーを取材しながら、バスケットボール、バドミントン、柔道など他競技への取材活動も精力的に行う。