フル代表で大会に臨む女子全日本チーム

アジア競技大会に向けて、バレーボール日本代表男女チームがインドネシアに到着した。
アジア競技大会は、JOCが管轄する大会で、オリンピックのアジア版といったところだ。この大会には、女子はフル代表が、男子はアジア競技大会向けのB代表が参加する。それゆえ、男女で意味合いはかなり異なってくる。

女子代表の場合は9月に開幕する世界選手権とメンバーがかぶってくるので、世界選手権のメンバー選考の一端にもなる。そして、中田久美監督は「ここで勝って世界選手権への勢いにしたい」と位置づける。アジア競技大会には、ネーションズリーグで主力として戦ったセッター田代佳奈美、アウトサイドヒッター古賀紗理那、内瀬戸真実は外れ、帯同しない。セッターには昨年、冨永こよみとともに正セッターの座を争った佐藤美弥が、アウトサイドヒッターには2017年3月4日のV・プレミアリーグ、NECレッドロケッツ戦の試合中に左膝の前十字靭帯断裂という大怪我を負い、ワンシーズンコートから離れていた長岡望悠と、野本梨佳が入った。ロンドン五輪銅メダリストのミドルブロッカー、荒木絵里香も加わり、岩坂名奈主将、奥村らミドルブロッカーのポジション争いも激しくなる。
しかし、中田監督によれば、この3人をアジア競技大会に参加させることは、ネーションズリーグの結果や内容にかかわらず、当初から予定していたのだという。長岡についてはワンシーズンまるごと休んでいたことから、すぐに代表戦で復帰するのではなく、5月に行われた黒鷲旗全日本男女バレーボール大会でまずは実戦に慣らし、そこから代表の合宿でブラッシュアップしてアジア競技大会での投入を考えていた。荒木に関しては、まだ幼い娘がいるという事情と、ベテランで計算できる選手であることを鑑みてのタイミングだろう。

アジア競技大会と世界選手権でのメンバーの入れ替えは当然考えているとのことなので、今年度、最もプライオリティの高い大会である世界選手権のメンバー入りのために、各選手がどれだけアピールできるか。

長岡は4月に代表が始動した時には、すでに怪我は癒えていた。だが中田監督は、長岡を見て「このままでは使えない」と判断して、チームに戻らせ、黒鷲旗大会での復帰を言い渡した。当時話を聞いた時、中田監督は「怪我をしたところについては問題はありませんでしたが、怪我明けのときに乗り越えないといけないところができていなかった。彼女はいろいろ考える質なので、チームに帰って黒鷲旗に出れば、自分なりにいろいろ試行錯誤してくれると信じています」と信頼を寄せていた。ただ、黒鷲旗大会での復帰のときには、まだ全然ジャンプ力が戻っておらず、点取り屋としては不安の残る復帰明けとなった。その後の代表合宿でどれだけ回復して、アジアではあるとはいえ、海外のチーム相手に通用するか。女子代表の一番の見所は、やはり長岡望悠の復活の度合いだろう。彼女が万全に活躍できれば、昨年からの女子代表の課題である「バックアタックの少なさ」が克服できるキーマンとなる。

そして司令塔の佐藤美弥。昨年ワールドグランプリでブラジルに金星をあげたときにトスを上げ続けたセッターだが、今年はネーションズリーグで呼ばれることがなかった。毎週のメンバーが発表されるたびに、ファンから「佐藤美弥をなぜ呼ばない」と怨嗟の声が上がったものだ。外から見て、焦りや歯がゆさも感じていただろう。冨永のトスも田代のトス回しも安定しなかったネーションズリーグを見ても、佐藤がこれから挽回する可能性はおおいにある。
本人は「アジア大会は世界選手権へのステップとなる大会。ここで活躍して世界選手権につなぎたい」と意欲を燃やしている。

学生や若手が多数を占める男子全日本チーム

男子代表は、女子代表とは意味合いが違う。世界選手権との日程が隣接しているため、4月の始動後すぐに世界選手権チームとアジア競技大会チームとにはっきり分けて練習をこなしてきた。B代表と位置づけられ、選手は高校生や大学生など若手を多く擁する。ベテランでこのチームに振り分けられたのは、高松卓矢、深津英臣、出耒田敬、本間隆太、千々木俊輔らで、A代表から惜しくも漏れた選手たちとなっている。監督も中垣内監督・ブランコーチとは別で、ゴーダン・メイフォース氏が指揮を執る。主将は昨年のフル代表の主将でもあったセッターの深津。深津は「チームの雰囲気は今すごく良くなっています。けが人(大宅優樹)が直前に出たことは残念ですが、彼の分も頑張ろうということでみんなが一つにまとまっています。僕自身もこちらに回された悔しさを、アジア競技大会で優勝して晴らし、来年またフル代表に選んでもらえるようアピールしたい」と意欲を燃やしている。深津は今季3冠を成し遂げた優勝セッターでもあるが、同じパナソニックの控えである関田誠大にフル代表の控えの座も奪われた。雪辱に燃える深津のトス回しが、いかに中垣内・ブラン体制の今の鍵となる「ミドルブロッカーを使う」ことにフィットできるか。

また、30歳にして今年ほぼ初めて日の丸を付けて戦う「ベテランルーキー」高松にも注目したい。これまで代表に登録は何度もあった高松だが、公式戦でコートに立つのは今年が初めてと言っていい。小学校の文集にも「全日本に入って日の丸を付けて戦いたい」と書いた彼が、アジア競技大会という晴れ舞台でどう戦うか。ネーションズリーグでは鋭いサーブで存在感を見せつけたが、今大会ではスパイクの方も期待したい。

A代表の18歳、西田有志の鮮烈なプレーがバレー界では話題となっているが、アジア競技大会には現役高校生で代表入りした佐藤駿一郎も参戦する。204cmの長身だが、ほかの日本人の長身選手にありがちな動きの鈍さを感じさせない。4月に代表登録された全員で合宿をしたときにも、動きにも態度にも他の選手と比べて引けを取るところがなかった。中垣内監督は「いずれ他のポジションもやらせることも考えている」というが、今大会ではミドルブロッカーとして参加。ここでの経験を生かして世界選手権だけでなく、東京五輪、それ以降につなげてもらいたい人材だ。
ミドルブロッカーには佐藤の他に、昨年オポジット(攻撃専門のセッター対角)へのコンバートで話題になった出耒田敬も、レフトへのコンバートが話題になった小野寺太志も再びミドルとして参加する。また、中型ミドルの傳田亮太(191cm)が意地を見せるか。ミドルブロッカーのポジション争いも注目したい。

そしてオポジット。前述したように昨季オポジットにコンバートされた出耒田敬はミドルに戻り、今大会では所属チームの堺ではサーブレシーブをするレフトの千々木がオポジットを務める。千々木は大学時代はオポジットとしてプレーしていたが、社会人になってからは基本的にレフト。控えはサントリーの小川猛。最高到達点350cmと代表でもトップクラスの身体能力を誇るが、まだ荒削りな選手。小川がオポジットに、千々木がレフトに入る攻撃型布陣も考えているようだ。千々木のオポジットで目覚ましい活躍を見せたら、フル代表につながるのか? また、チームではほとんど出番がなかった小川が代表での合宿を経て、どれだけ成長したか。国内リーグでは、助っ人外国人選手がオポジットに入るチームがほとんどのため、日本人オポジットが育たないことは以前から指摘されてきた。フル代表での現在のオポジットは西田と大竹壱青という、いずれも数少ない日本人オポジットで試合に臨むチームの選手たちだ。彼らにせまる、あるいは凌ぐプレーを見せれば、フル代表のオポジット争いも面白くなるかもしれない。

女子大会は19日に開幕し、男子大会は22日に開幕する。アジア競技大会は、世界選手権と東京五輪に向けて、目が離せない大会となりそうだ。

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中西美雁

著者プロフィール 中西美雁

名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はスポルティーバ、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行っている。著書『眠らずに走れ 52人の名選手・名監督のバレーボール・ストーリーズ』