2018年最大のイベントとなる世界選手権

9月9日にイタリアとブルガリアで開幕するバレーボール世界選手権に出場する全日本男子代表が27日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで記者会見と公開練習を行った。

中垣内祐一監督は「従前よりこの世界選手権は我々にとって極めて重要な位置づけである。ネーションズリーグなどはすべてこの世界選手権のための強化であると断言してきた」と、大会の意義を語った。今は「もう一度ディフェンスの強化、サイドアウトの強化、サイドのスパイカーのトスの調整を行っている」。

目標はベスト8。それは昨年世界選手権予選を突破したときから変わらない。ただ、日本が入ったAグループは、開催国イタリアのほかも強豪国ばかり。中垣内監督は「非常に厳しいグループに入ったが、粘り強くやるしかない。身長も高くない我々ですから、ある意味、女子バレーのようないろんな技を駆使して辛抱強く点をとっていく」と方針を

この大会から公式戦としては今年度初めて石川祐希が復帰する。腰の故障でネーションズリーグは不参加、7月末の日韓親善試合からの合流となった。石川本人は「コンディションはもう全く大丈夫です。合流して1カ月くらいですが、調子はとても良いです」とコメントしていたが、中垣内監督によると「まだまだ波がある。本調子ならもっとできるはず」と見ているようだ。ただ、石川が復帰し、福澤達哉というベテランのサイドアタッカーが入ってネーションズリーグで存在感を見せたことで、「昨年はレフトの対角は基本的に石川と柳田でしたが、今年は福澤が入って、いろんな組み合わせを試しているところ。その分は間違いなく昨年より上積みになっている」と嬉しい悩みをこぼした。

石川は、大学1年の頃からプレーしており、また今季もプレーするイタリアでの開催ということには非常に思い入れがあるという。昨季ラティーナで、今季シエナでチームメイトのマルオッティもイタリア代表に選抜され、他にも元チームメイトだった選手が何人も出場する。彼らと対戦できることをとても楽しみにしており、イタリアの観客に自分のプレーを見てもらえることも楽しみだとのことだった。

また、新鮮力のスーパールーキー西田有志についても、「西田と自分が基本的に打つことになると思うので、そうなったときにお互いが決めきれるようにしたい。一番はクイックとパイプで真ん中の攻撃を増やすことですが。西田が加わったことで、自分の打数は少し減ったので、その分助かっている。西田は打数も多いし、決定率も効果率も非常に高いですし、彼にトスが上がった時は安心してみていられる。去年よりもサイドアウトを取れるチームになったと思います」と高く評価した。

石川がずっとイタリアのセリエA1でプレーしていることのメリットは、「国際大会で、いろいろな対戦相手のことをすでに対戦して知っているので、それはメリットですね。今はまだ他の選手には伝えてないですけど、調整が進んだら伝えていこうと思います」。

今年度から中垣内ジャパンが取り組んでいる「速いバレー」については、もともとジャンプの高さのある選手で、トスも高めのものをリクエストしていたが、今年はその辺りをセッターと話し合いながら調整しているという。どれくらいトスを浮かせるかとスピードの兼ね合いを図っていく。怪我がちなところで苦しい思いはしたかと聞かれ、「苦しいとは思わないけれど、しっかり休ませていただいたり、体を作る時間をいただけたことに感謝しています」と前を向いた。

開幕戦は屋外でのゲームに

柳田将洋主将は、「石川選手は戻ってきて良い状態でやれていると思います。一緒に戦って、あるいはコートの外から彼のプレーを見る機会もありましたが、非常にモチベーションを高く持っています。
中垣内監督2年目で、昨年よりチームが固まってきました。昨年は、いろんなスタッフに言われて、一つひとつ気づいていくことがありました。今年は一つひとつではなく、それらを踏まえた上でスタッフの方々のやりたいバレーができつつある。それはやはり、時間とコミュニケーションで構築されているものでしょう」。

世界選手権については、「試行錯誤しながら、徐々に進めてきているところです。あとは本当に自信をもってコートに立つことが必要ですね。昨年グラチャンを戦った時に、戦う以前の問題になってしまっていました。キャプテンとしてそこは少し前のめりになってもチームを纏めたい」と意欲を見せた。

柳田の武器であるサーブについては、「特別今年だけやっていることはない。継続してやっている」と自然体であることを強調したが、「あえて言えば、西田選手が入ってきて、いいサーバーなので、僕が安定させて彼には思い切りよく打たせたいと思っています」と主将らしい気遣いが伺えた。

その西田選手は「前(5月の始動会見)ここに立たせていただいた時は緊張ばかりでした」と3カ月前のことを振り返った。ネーションズリーグと、その後の親善試合での活躍で、全日本男子のオポジット(攻撃専門のライト)のスタメンの座をわずか18歳で獲得。世界選手権について、とりわけ開幕戦のイタリアについて、「2015年のワールドカップで、日本戦以外の試合も見ていて、イタリアのオポジットのザイツェフさんに衝撃を受けました。ですから対戦できるのがすごく楽しみです」と目を輝かせた。「サーブも本当に強いサーブをミスなく連続で入れていけるし、スパイクもすごい。ザイツェフさんは右利きなので、左利きの自分がレフトから打つときの参考にさせてもらっています。助走のときにあまりコートから出て開かないで、まっすぐ入って打ちに行っている。それを今レフトからうちに行く時に取り入れています」。

大会の1次ラウンドのスタートは9月12日だが、開幕戦だけは前倒しで9日にローマの屋外競技場で行われる。その対戦相手に日本が選ばれたわけで、全日本男子はみな経験のない屋外競技場での試合に挑むことになる。柳田主将は「不安がないわけじゃない。経験がまったくないことについて、不安がまったくないと言ったら嘘になる。でも相手も同じ状況ですからあまり難しく考えすぎないようにしています」、石川は「屋外競技場で過去にイタリアが試合をしたときの映像を見て感覚を掴むようにしています」、西田は「最初はテンポとかリズムが全く合わないと思うんですけど、最悪な状況をイメージしておけば、しっかりと対応して早くなれればいいかなと思います」とそれぞれ思うところを聞かせてくれた。

実は中垣内監督は現役時代に屋外競技場での試合経験があるという。1990年の日ソ対抗戦で、有明の屋外競技場で試合をした。「でも、あまり違和感はなかったので、大丈夫だと思っています」。ローマには早めに入り、何回か会場練習を重ねて感覚を掴む予定だ。

世界選手権男子大会は、9月9日、ローマとヴァルナでそれぞれ1試合ずつ開幕戦が行われ、30日まで開催される。参加国は24で、バレーボールの国際大会としてはオリンピックを超えて歴史が長く、規模も大きい。目標と掲げるベスト8に食い込むのはかなり厳しい戦いになるが、東京オリンピックへの重要なステップとして一つでも多く勝利を勝ち取って欲しい。

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中西美雁

名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はスポルティーバ、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行っている。著書『眠らずに走れ 52人の名選手・名監督のバレーボール・ストーリーズ』