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「行政が勝手にやっていること」ではいけない。民意ベースで渋谷に3万人規模スタジアムを(後編)

感動体験へのアクセスを高める

―このスタジアムはどのように利用されるのでしょうか?
「まずは、“365日、感動を体感できる場所”として、サッカーを中心とするスポーツの試合、大会の開催。加えて、音楽・ファッション・アートなど、国内最大級のイベント興行も見据えています。また、敷地内に様々な人が集まることで、“カルチャー・コミュニティが生まれる場所”としての役割も期待しています。子供を含めて誰もが使えるプレイグラウンドやパブリックスペースを設けることで、地域の結びつきや、渋谷を象徴するストリートカルチャーが育まれる場となってほしいですね。そして未来のスタジアムとして一番重要なのは、災害時の防災拠点となること。ただ人を収容できるだけでなく、風雨や厳しい天候から人を守ったり、衛生的な生活が送れる場所である必要があります。」

―非常に多目的な施設になるのですね。
「私たちはここに“SCRAMBLE PASSION”というコンセプトを置いています。多様な価値観をもった人々が集い、交わり、輝く場所。様々な情熱がまざりあい、その感動の輪が広がっていく場所になってほしいという想いです。特に、私自身渋谷で子育てをする親でもありますので、未来を担う子供たちがここに集い、ここで触れたものに刺激を受けて夢を膨らませる、そんな場所であってほしいとも思っています。」

―この構想の発端を教えてください。
「元々は、現渋谷区長の長谷部さんが自身のHPに今後の政策として掲載している、“渋谷区にプロサッカーチームを”という公約の一つがこの構想の大元となっています。世界のサッカー先進国を見ると、都心に必ず強いチームがありますが、日本では23区内にホームスタジアムを持つプロチームはありません。日本のサッカーをより世界に飛躍させるために、サッカーチームを都心につくりたい。そんな思いから、このアイデアはスタートしています。実現すれば、まるで映画やショッピングの延長で気軽にサッカーの試合に足を運ぶ人が増え、日本のサッカー人気の高まり、強化につながります。」

―実現を求める声も多く寄せられているのですか?
「このプロジェクト自体、周囲からの注目と期待に答える形で発足されました。はじめは区長のHPに掲載されていたものが、やがて人の目に留まるようになり問い合わせが増えていった。政策には優先度がありますから、当時はまだ本格的に着手するタイミングではないと区長は考えていたようですが、注目が高まり、やがて都が開く東京未来ビジョン懇談会でもプレゼンテーションをしてほしいと言われるまでになりました。そこで、今まで区長の頭の中にしかなかったものを可視化し、ムービーを作成してイメージを共有しやすくしたんです。当然ですが以後ますます問い合わせが増え、昨年の2017年の年末に渋谷区の外郭団体である渋谷未来デザインとして僕がプロジェクトマネジメントを引き受け、コンセプトの策定などを進めていった次第です。」

観光資源としての役割を担う

―渋谷と言えば、すでに多くの観光客が国内外から集まる日本の観光名所の一つです。なぜあらたにスタジアムが必要なのでしょうか。
「確かに一見、渋谷は人集めには困らない街に見えると思います。しかし、渋谷の観光名所と尋ねて出てくる答えのトップ2は、ハチ公とスクランブル交差点。どれだけ多くの人がそこに集まって写真を撮ってもそれは無料ですから、経済にはつながらない。渋谷は観光資源が少ない街だと私は考えています。一方で、渋谷ではファッションや音楽、アートなど様々な文化が日々発信されている。その文化を受け止めるハコが必要です。スタジアムはその解決策にもなります。」

―“受け止めるハコ”が今は足りていないということですか。
「音楽に関しては特にそう言えると思います。もちろん、国立代々木競技場や東京都体育館、中小規模のライブハウスなど、1万人未満規模の会場はたくさんあります。しかし、ビッグネームのアーティストや、海外ミュージシャンのコンサートの際に使える3~5万人規模のものはなく、東京ドーム(文京区)や、横浜アリーナなどに行かなくてはいけない。渋谷は昔から多くの音楽レーベルの拠点が置かれ、トレンドを生み出してきましたが、その熱を同じ渋谷内で受け止めることができてはじめて、文化的観光資源の域に達すると考えています。」

スポーツがシビックプライドを醸成させる

―スポーツだけではなく、音楽の興業による稼働が多くなるのでしょうか。
「実際、収益の基盤はスポーツよりも、音楽を中心とするエンターテインメント興業によるものが多くなると考えています。ですが、スポーツの本拠地であることは、収益面以上にシビックプライドの醸成において大きな価値があることと考えています。」

―過去2回のトークイベントでも、”シビックプライド”の重要性を話していらっしゃいましたね。
「渋谷に住むこと、渋谷を訪れることを誇りに思える。そんな街を作りたいと考えています。SCRAMBLE STUDIUM SHIBUYAはそのためのシンボルプレイスです。スポーツ観戦に行く人はわかると思いますが、年代、性別、価値観もばらばらな人々が、そのチームに共有価値を感じて集まる。やがてそのチームそのものが街のシンボルとなることで、地域の結束力も高まっていきます。しかし、今全国にあるサッカースタジアムの多くはそのアクセスが課題です。都心の駅に近く、誰もが気軽に足を運べるスタジアムがあれば、スポーツが街づくりに与える力はより大きくなるはずです。」

―特定のチームの“ホーム”として活用される可能性はあるのでしょうか。
「街のシンボルチームというからには、その必要があるでしょう。と言うと、どこのチームになるんだという議論にすぐなってしまうのですが、その話をするのは時期尚早かと思います。FC東京さんですか?東京ヴェルディさんですか?それともその他のチームですか?と(笑) ただ我々はPhase1の段階にようやく立ったばかり。先ほどのコンセプトも、今年の春に完成したばかりです。この話をより具体的なものへと進めるためには、越えるべき壁がまだいくつも残っています。」

後編へ続く。

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小田菜南子

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