J1サンフレッチェ広島の新たなホームとして、広島市の中心部にある中央公園広場にサッカースタジアムが建設されることが発表された。オープンは2024年春。敷地面積は約7・9ヘクタールで、整備費は約190億円。スタジアムの収容人数は3万人規模だという。広島といえば、カープの町。ここ数年チームが連覇中ということもあって、シーズン中は連日満員御礼。サンフレッチェもカープのように地域に根ざし、愛されるチームに育っていけば理想的だろう。
「広島は比較的大きな都市なので、この規模のスタジアムでもマーケットがあります。ただ自治体によっては、もう少し小さい収容人数の多目的アリーナを造ったほうがいい地方も多いと私は考えます。というのも、今は最高潮に近い状態。日本はこれから人口が減少し、2020年が過ぎれば、スポーツ熱が今より冷める可能性があります。アメリカではスーパーボウルの視聴率やメジャーリーグの観客数も減少しています。日本でもエンターテインメントとしてのスポーツが飽和状態にむかっていくことも想定していかなくてはなりません。
さらに今後、放送の技術が進歩すれば、家にいてもライブ感覚でスポーツを楽しめることができる。スタジアムまで足を運ばせることが難しくなっていく可能性が高いのです。もっともっとさまざまなアイデアが必要になってくる環境に時代はむかっています。現状の“ブーム”を前提にしすぎると、大きなハコモノを造ったら数年後に負の遺産になってしまう可能性だってありえる。マーケットをどう計算していくか、現状をどう捉え、地域ごとの未来のスポーツの特色やマーケットやスポーツ文化づくりが大きなキーになっていきます」
池田氏が提案するのは、野球やサッカー、バスケットボールなどのメジャースポーツばかりではなく、それぞれの町ならではのスポーツで地域振興をはかること。
「海辺の町ならサーフィン、雪の多い町ならウィンタースポーツと、地域のオリジナリティを感じられるスポーツ振興に力をもっと注ぐのもいいでしょう。卓球やバドミントンもいいし、陸上や水泳……。そのスポーツをやっている人たちが全国から集まるような振興策を考える。私は、さいたま市のスポーツアドバイザーもしているのですが、さいたま市では2013年から『ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム』という自転車レースを開催して、年々盛り上がりを見せています。“他では見られない”“スポーツをきっかけにその地域に足を運ぶ理由がある”からひとつのスポーツ文化が生まれていくんです」
平昌五輪でカーリングのLS北見が大活躍を見せた北海道の常呂町は、「もぐもぐタイム」で有名になった地元産菓子が爆発的に売れ、町を訪れる観光客が増えるなど、大きな経済効果があった。逆にランニングブームで、全国に一気に増えたマラソン大会では、一部の人気大会をのぞいて申込みが定員に届かないような状態になっているという。やはり重要なのは、その町ならではのスポーツ振興だ。
「大きなハコは、わかりやすいですし、地域も盛り上がりますし、夢もある。しかし大きなハコモノを造るということから考えるのではなく、自分たちの町にはどんなスポーツがあうのか。そういったコンセプトから考えていけばいいのではないでしょうか。アメリカの地方の街に行くと、スポーツからコンサート、地元の集会など幅広く活用される1万人規模のアリーナがあります。体育館ではなくアリーナです。普段は地元の人がスポーツを楽しみ、試合やイベントがあれば多くの人が集まる。そういったハコモノ、スポーツ振興ならブームに関係なく、長く愛され、人も集まるようになるのではないでしょうか」
人口が減っても、放送技術が進化しても、スポーツを愛する人がいなくなるわけではない。
「逆に、地域のオリジナリティ溢れるアイデアで地域に根付いた、その地域ならではのスポーツやスポーツ文化やスポーツ施設は、もっともっと、未来の地方創生や地域振興の“元気玉”になると思います」
ブームにまかせるのではなく、しっかりと自分たちの町とスポーツを見つめれば、スポーツ振興策の“正解”が見つかるのではないだろうか。
[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>
取材協力:文化放送
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毎週木曜日レギュラー出演:池田純
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2020年以降のスポーツ界を考える。スポーツによる地域振興、地域創生には、オリジナリティが不可欠だ
2020年を前にスポーツによる地域振興が盛り上がっている。全国各地で野球やサッカーのスタジアムの建築構想が持ち上がり、そのなかにはすでに着工されたものも少なくない。もちろん2020年を機に日本のスポーツ界が盛り上がり、そういったスタジアムが活況となれば言うことはない。だが、横浜DeNAベイスターズ初代球団社長であり、スポーツビジネス改革実践家の池田純氏は、ポスト2020のスポーツ界を決して楽観視していない。
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