たしかに以前はbjリーグとNBLと2つのトップリーグが国内に併存していた。日本バスケットボール協会のガバナンスも含め、FIBA(国際バスケットボール連盟)から改善要求を受けたが、対処できず国際大会参加を禁じる無期限資格停止処分との重い厳罰を受けたのは14年11月。わずか4年半前だった。

日本サッカー界に多くの財産を残した川淵三郎氏を中心に改革に乗り出し、16年9月に開幕したBリーグ。その後、順調な成長曲線を描き、観客動員数も増加した。国内リーグの環境が整備され、日本代表の強化にもつながった。

そして4月14日。またリーグが新たなステージへの発展を予感させる発表があった。リーグ屈指の観客動員、実績、人気を誇る千葉ジェッツが、IT大手の「ミクシィ」と戦略的業務資本提携を結んだのだ。もともとパートナーシップ契約を締結していたミクシィと資本面での関係を深め、経営、運営力が強化された。

まず掲げたのは「夢のアリーナ計画」。将来的な1万人規模のアリーナ建設を目指すものだ。現在、使用する船橋アリーナの収容人数は約5000人。(立ち見を含めると約6000人)。人気チームだけにホームゲームは満員御礼となることも少なくない。試合を見に行きたくても、行けないブースター(サポーター)が出てきたこともあり、1万人規模の新アリーナの建設を目指したという。

ただ「夢のアリーナ」の意義は収容人数が増えるだけではない。具体案は示されていないが、大きな意義は運営・営業権も持つ「自前型のアリーナ」の建設を目指すことにある。もちろん「自前型アリーナ」を作るには数十億単位の資金が必要になる。いかに人気クラブの千葉ジェッツとはいえ、単独の資金調達は不可能な額だ。それがミクシィと手を組むことで実現可能な計画となったのだ。

現在のBリーグに所属するチームは主に「賃貸型」で施設使用料を支払っている。ただ「自前型」となればロイヤルティーを払う必要もなくなり、チケット収入、グッズ、売店などの収益はチームに入る。観戦するブースターにもメリットは大きい。当然、アリーナの自由な経営活動も可能だ。派手な音楽やダンスなどもBリーグの魅力の一つだが、「賃貸型」と違い、アリーナの使用用途に制限がなくなるから演出の幅も広がるだろう。発表された内観のイメージ画像もアリーナを囲むようにして、多画面の大型ビジョンが並んでいる。もし完成すれば、最新技術や音楽を駆使したエンターテインメント性に富んだ映像展開、迫力の演出が期待できる。ブースターの満足度が向上すれば、クラブの成長に欠かせない地域密着も自然と進んでいく。

ただ「自前型アリーナ」の課題は稼働率にある。野球の場合はホームゲームは年間約70試合ほどだが、バスケットは30試合ほど。空いている年間330日をどのように活用するか。ライブなどの音楽イベント、その他の室内競技の使用などで収益性を高める必要がある。その明確なビジョンを描かなければ、赤字のハコモノと化す。それは忘れてはならない。

大きな民間企業と手を組めば、回せる強化資金も多くなることも意味する。NBAで活躍したスターを日本へ呼ぶこともできるかもしれない。Jリーグを例に挙げると、元スペイン代表のMFアンドレス・イニエスタ、元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキら世界的スターを獲得したヴィッセル神戸には親会社に楽天が付いているし、サガン鳥栖が元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスを獲得した背景も、スマートフォン向けゲーム制作会社大手「Cygames」の資金があった。もちろん国内の選手待遇も向上していくだろう。

かつてのJリーグはジーコ、ビスマルク、ストイコビッチ、ディアスら世界を知る選手がプレーした。彼らが「プロ意識」「世界の基準」を植え付け、Jリーグ、そして日本のサッカーのレベルを引き上げた。Bリーグにも、スター選手がやってくるのも、夢物語ではなくなるかもしれない。実現すれば千葉ジェッツだけでなく、リーグ全体にとっても貴重な財産になる。

千葉ジェッツの島田慎二代表は、こうコメントしている。「本アリーナが実現すれば、より多くのブースターの皆さまに千葉ジェッツの試合を体験頂くことができるようになります。今まで以上に多くの方にお越しいただき、多くの声援を頂ける環境ができれば、船橋から世界・アジアへ挑戦できるチームに成長していけると信じております。皆さまの意見を伺い、ジェッツに関わる人たちにとって、夢のアリーナを一緒に創っていきたいと思っております」。長期戦略として「100年存続するクラブチームとなる」と掲げる千葉ジェッツ。その理念がBリーグ、日本バスケットボール界の成長を支える原動力となりそうだ。

星野泉

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