将来を見据えサッカーからラグビーに転向

──2002年に開催されたFIFAワールドカップ日韓大会(サッカー)の当時は中学生でした。

「愛知県の中学に通っていて、みんなで応援していました。将来プロスポーツ選手として飯を食っていくということは最初から頭にありましたが、サッカーとラグビーではどちらが生計を立てられるかと考えた結果、父がラグビーをしていたこともあって、ラグビーを選んだのです。日韓大会のころには高校からラグビーをやると決めていました」

──中学までのサッカー経験は、現在キッカーとして生きていますか?

「癖を直す必要があったので、むしろマイナスかもしれません(笑)。ラグビーのプレースキックはサッカーのフリーキックに近いと思うんですけど、同じキックでも別物です。あえていえばシュートに似ているかもしれないですね」

──日本代表の試合が続いていた昨年6月もロシアでFIFAワールドカップが開催されていました。

「応援していましたよ。認知度は違いますけど、同じ日本代表として本当にがんばってほしいという思いがありました。ラグビーワールドカップではきっと彼らも僕らを応援してくれると思っています。同じ日本のチームですからね」

──今年はラグビーの番です。盛り上がりそうですね。

「そうですね。ただ、僕らが求めているのはそこではなく、結果を出さないといけないということです。盛り上がるのは最終的についてくることで、勝つかもしれないし、負けるかもしれない。勝利を約束することはできませんが、自分個人としてはケガをしない限り前回のワールドカップを越えた状態で臨むということだけは断言できます。今の時点で確定しているのはそれだけです」

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「難しそうだからやめておこう」とは思わない

──9月20日開幕のラグビーワールドカップに向けて、さらにやっていくべきことは何でしょうか?

「まずはフィットネス(試合で動き続けるための身体能力や心肺機能)など体の部分、根本的なところをさらに上げる必要があります。これは僕個人だけでなくチームとしてもです。フィットネスに終わりはないですからね」

──取り組んできて、すでに成果が出始めていることはありますか?

「前回のワールドカップ以降、例えばパスやキックの仕方を変えるなどいろいろなことを試行錯誤してきたのですが、ようやく自分に合うものが出てきました。今は自分のスタイルに立ち返ることができています」

──ワールドカップでは世界屈指の強豪と対戦します。昨年の年間最優秀選手に選ばれたアイルランドのスタンドオフ、ジョナサン・セクストンとも対戦することになりそうです。

「セクストンとは1回も試合をしたことがないので、自分では比べようがないのですが、対戦することになれば楽しみではあります。オールブラックス(ニュージーランド代表)戦でもイングランド戦でも相手のことをぐちゃぐちゃにできているので、僕だけでなくチームとしても『強い相手でも崩せる!』という自信がついたことは間違いありません」

──強敵と対戦しても動じることなく、プレッシャーに強いタイプに見えます。

「見ている方々からは『田村なら何かしてくれる』というビッグプレーを期待していただいていると思うのですが、実はしっかり準備して試合に臨む、どちらかというと堅実なタイプです。ただ、チャンスがちょっとでも見えたらチャレンジしたくなります。『このプレーは難しそうだからやめておこう』とは思わないですね。難しそうなことにこそどんどん積極的にチャレンジしてやろうというタイプだと自己分析しています」

──最後に、あらためてラグビーワールドカップに向けた意気込みをお願いします。

「ワールドカップの前にも国内での試合がいくつかありますので(7月27日(土)フィジー戦@釜石鵜住居、8月3日(土)トンガ戦@花園、9月6日(金)南アフリカ戦@熊谷)、ぜひ会場に来ていただきたいです。何も知らずに観戦しても十分楽しめると思うので、とにかく見に来てもらえることが一番のPRになると思っています。僕個人としては走って、パスして、キックして、攻めているところをぜひ見ていただきたいですね」

<了>

(C)VICTORY


[PROFILE]
田村優(たむら・ゆう)
ポジション:スタンドオフ
1989年1月9日生まれ、愛知県出身。現所属はキヤノンイーグルス(トップリーグ)。中学まではサッカーをしていたが、高校からラグビーを始め、たちまち頭角を現す。日本代表の司令塔で、プレースキッカーを任される。父・田村誠氏はトヨタ自動車、豊田自動織機で監督を務めた。弟・田村熙はサントリーで活躍中。日本代表キャップは54(2018年11月24日時点)。


VictorySportsNews編集部