中村俊輔といえば、神奈川の英雄だ。横浜市出身で、日産(現横浜F・マリノス)のジュニアユースで実力を磨き、川崎市の桐光学園高等学校で全国準優勝を成し遂げ、マリノスに入団後は新人賞、最年少MVPなど、期待に違わぬ活躍。その後2002年からはヨーロッパに拠点を移したが、2010年にマリノスに復帰。しかし2017年にはジュビロへ磐田に移籍し、今回41歳となった彼が“最後”の所属チームとして選んだのは横浜FCだった。

「地元に戻ってきたのはいいことだと思います。横浜FCのファンは大喜びでしょうが、マリノスのファンは納得できるんでしょうか?」

J1のマリノスとJ2の横浜FCとではチーム事情は異なる。それでも自チームの英雄の最後の花道をマリノスは用意できなかったのだろうか。ブラジルの選手は、ヨーロッパで大活躍をしても、最後は子どものころから馴染みのある地元のチームに帰り、そこで引退を迎えることが多い。プロチームならば、レジェンドに敬意を払い、ファンも喜ぶ、そんな粋な編成があってもいい。

「中村選手にとっては、地元に帰ってきたという思いはあるんでしょうね。でも神奈川県にはJチームが少し多すぎるような気もします。J1にマリノス、川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、J2に横浜FC、さらにJ3にもSC相模原とY.S.C.C.横浜があります。もちろん人口も多く、面積も広い県ですが、少し多いかなと感じています。私がベイスターズの社長になったとき、まず神奈川県の人、特に子どもたちにファンになってもらおうといろいろな企画を行いました。プロ野球は1球団しかないのに、それはそれで大変だったんです。チームが増えて、ファンの数が増えるならいいのですが、ファンの取り合いになってしまうようなら逆効果になってしまうかもしれません。」

日本はこれから人口が減少し、子どもの数も減っていく。愛着が持てる“地元チーム”を作っていくためにも、リーグ全体として考えるべきタイミングなのかもしれない。

「これからJリーグがさらに盛り上がっていくために中村選手のような存在は必要不可欠。彼のような選手が幸せに選手生活をまっとうできるようなリーグこそ、地域密着といえるのではないでしょうか。」

増え続けるJチームだが、「Jリーグ百年構想」の理念のもと改めて本当の意味での“地域密着”を考え直す時期にきている。



取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部